第145話 ブチギレ虫、大暴れる。
屋根を突き抜けると、空間に出た。
そこは……広い、本当に広い空間だった。
体育館みたいな感じだ。
その中に、なんかゴチャゴチャした荷物が積まれている場所がある。
あそこにいるのは――
『――むっくん、魔力放射! 狙われていますよ!』
『アカ! 後ろで援護、お願い!』『あいっ!』
そこにいたのは、普通の格好をした人たちだった。
ここじゃない所で見たなら、農家の人にしか見えないだろう。
でも、その人たちは……否、そいつらは――ボクに向かって一斉に魔法を撃ってきた!
『ムーク! あの連中の奥だ! 反応はそこにある!』
『このまま突っ込む! ヴァルはボクの後ろにいて!!』
こっちに飛んでくる様々な魔法。
その渦中に――突っ込む! アフターバーナー全開ッ! ここで爆発してもいい!!
「ウゥウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
炎が、雷が、岩が、それによくわからないエネルギー体が――ヴァーティガアーマーに着弾。
それらを一切合切弾きながら、飛ぶ! 魔力がガンガン減るけど、魔石はお店くらいあるからね!!
「ドケェエエエエエエエエエエエッ!!!!」
一切速度を緩めず、魔力を極限まで込めた状態で――敵の群れに、正面から突撃する!
ヴァーティガアーマーが、より一層蒼い光を放つ!
「ぎゃっ!?」「ごぉあ!?」「ひぃい!?」「あぎょお!?」
そのまま、超低空で敵――人族を、撥ね飛ばしながら突撃!
ヴァーティガアーマーも、ボクの鎧も、布装備のそいつらをボコボコにしながら通過!
『アレだ! あの妙な硝子細工!!』
見えた! 機械に組み込まれたでっかい試験管みたいなのがある!
その中には――何か、いる! いや――妖精がいる!
「あと少しだと言うのギッ!?!?」
隠形刃腕で首を飛ばし!
「おのれ虫ごときにィイ!?」
ヴァーティガで鼻から上を切り飛ばし!
「――ドケッテ言ッテンダァ!! クソヒューマン共ォ!!」
速度を緩めずに衝撃波連打! 連打連打連打!!
行く手を阻む人族を転がして――
『あれをぶっ壊す! ヴァルは妖精を!』『心得たァ!!』
「――ヌゥウウウウアッ!!」
よくわかんないでっかい試験管の――上を! ヴァーティガで切断ッ!
中に詰まっていた薬品みたいなのが、ドバーっと噴出!
すれ違いざまに中身の――妖精をキャッチ!
「ヴァル!」「うむっ!」
見た目は子犬っぽいけど、この気配は妖精! なんとなくわかる!
薬品に濡れてぐったりしたその子を、ヴァルに渡しつつ急ブレーキ!
床にパイルを打ち込んで――急旋回ッ!
「ギリギリだ……まだ動かせん! 頼むぞムーク!」
ヴァルは妖精を抱えて床に降りて……両手をかざし始めた。
「任セトイテヨ……!」
目の前が、チカチカする。
さっきの妖精を持った時にわかったんだ……命が、あと少しで消えちゃうところだったって。
アカが瀕死になった時、みたいに……!!
「おのれ! 貴重な魔法具を!」
「面食らったが敵は一人だ! 囲め! 囲め!」
「見ろ! 妖精もいるぞ! これは僥倖だ!」
ワラワラと、建物の他の所から人族が集まってくる。
『アカ! こっちにおいで!』『あいー!』
ミサイルを四方八方にばら撒きながら、アカが飛んでくる。
見た目は綺麗だけど、威力は本物。
着弾したら首や体が爆発して弾け飛んでる!
『ヴァルを守ってあげて! 動けるようになったらお空に逃げるんだよ!』
そう言いつつ……左手パイルを放つ!
螺旋回転する素敵な棘が、こちらに走ってくる人族を引き千切りながら貫通していく!
「ウゥウ……ウグ、グゥウウウウ……!!」
――体が熱い。
胸の奥で、マグマが燃えてるみたいに。
循環をイメージする時に考えたボクのエンジンが、焼け付くくらいに回転しているのを感じる。
「アンナニ、小サイ子ヲ……! ヨクモ……! ヨクモ!!!!」
さっき、ヴァルに渡したあの子。
手を離れる時に、念話よりももっと小さな、かすかな思念が流れてきた。
『つらい』『くるしい』『たすけて』って。
今にも消えそうな、小さな声が。
「――キ」
もっとだ、もっと回れ、ボクのエンジン。
胸の奥のマグマも、残らず燃料にして――!
「貴様ラァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
こいつらを!
この地上から消し去ってやるんだ!!
「『聖なる哉! 天上の』」
「ガアアアアアアアアアアアアッ!!」
詠唱しかけた人族の顔面に右ストレート!
顔面を貫通して、拳が後方に突き抜ける!
即死したそいつを放り投げながら、新手に向く!
「『全き光輪よ! 敵を切り裂け!!』」
光り輝くチャクラムが、こっちに飛んでくる――突っ込む!
「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」
ヴァーティガを真っ直ぐ振り下ろすと、チャクラムが空中で弾けて消えて――
「っひ、な、なにっごばろぉえ!?!?」
そのままの勢いで、人族の胸に肩からのタックル!!
骨がバキバキ折れる感触!
「撃て! 撃て撃て撃て!」「囲め! 囲んで押し包め!」「なんて硬い虫だ! 死ね! 死ね!!」
飛んでくる数々の魔法――にィ! 今しがたくたばった人族シールドォ!!
炸裂する魔法の数々が、ソイツの体積をあっという間に減らしていく!
若干軽くなったそれを――投げ、る!!
「おぁ――!?!?」
首と胴体だけの死体が、人族の一人に直撃。
顔面を陥没させて、吹き飛ばす!
「オオオオオオッ!!」
衝撃波ダッシュ! あっけにとられた顔の人族に飛び込んで――薙ぎ払うキック!!
「――げびおッ!?!?!?」
腰を砕き、脇腹を抉って足が食い込む! そのままパイル発射!!
抉られたソイツは、内臓を撒き散らしながら吹き飛んで後ろの奴に激突!!
さあ、次はどいつ――
『むっくん! 前方右30度! 魔力反応――強いのが来ます!』
仲間の人族を巻き込んで、白いビームがこっちに! 後ろにはヴァルとアカがいる――ならッ!
「ヌゥウウウウウウウウウウウウウッ!!」
ヴァーティガを構えて――受け止める!
蒼く輝く頼もしい刀身が、白いビームを散らしていく! 余波が鎧の隙間から体に突き刺さるけど――大丈夫! 貫通してない!!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
魔力を注ぎ込む、ヴァーティガに!
蒼い光が一層強くなって――白いビームを完全に消し飛ばした! 今だァッ!!
アフターバーナー点火ッ!!
ビームを放った魔術師っぽい奴に――突撃!
「ばけも――」「――死ネェエエエッ!!」
何事かを呟くソイツに、右膝を叩き込む!
インパクトの瞬間に回転して鋭利な棘になったヴァーティガアーマーの膝パーツが、腹を破って背中から突き出た!
「サア! 次ハドイツダ! カカッテコイ!!」
即死した魔術師の肩を掴んで上半身を引き千切り、敵を見る。
「死ニタイ奴カラ! カカッテコイ!!」
たぶん、ボクの目は赤く輝いているだろう。
周辺の敵が、息を飲んで後ずさった。
攻めあぐねているみたい――好都合ォ!
「抵抗シナケレバ――楽ニ殺シテヤル! ソウジャナイナラ――滅茶苦茶ニ殺シテヤルゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
こっちから突っ込んで大暴れしてやる!
魔力が、後から後から生成されて――胸のエンジンが、大回転してるんだ!
「っひ、ひぃひ――」
「――ダラァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
剣を捨てて膝を突いた人族。
降伏するみたいに下げた頭を――蹴り抜く!
根元から千切れた首が、超高速で別の人族に激突! 胸を陥没させる!
「こ、降伏すげば――」
何かを言おうとした口に、ヴァーティガを捻じ込む!
喉を貫通した瞬間に、蒼い輝きが走って首が吹き飛んだ!
「だ、ダメだ! 逃げ、逃げろォ!!」
武器を放り出し、出口へ走り出す数人。
左手パイルは再生していないから、衝撃波で足をへし折って――
逃げていくその出口に、人影。
ボクよりも背の高いその人影は――手に武器を持っていた。
「なあっ!? 黒エルフがなんで――」
――ばちゅん、と音。
出口に立つ人影……ナラカさんが、持っている分厚くって長い鉈みたいなものでそいつを頭頂部からぶん殴ったんだ。
人族は、縦に圧縮された肉塊になった。
「――おどれら、覚悟はできとるんじゃろうの……!」
ばちゅん、とまた音。
横薙ぎの一撃が、人族の腰から上を千切って吹き飛ばした。
柱に、頭だけが原形をとどめて張り付いている。
「ぶちまわしたるわ! ど腐れ人族共がァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
黒い嵐だ。
残像も見えないくらいの高速で突っ込んだナラカさんが、進行方向の人族を挽肉に変えている。
中には金属鎧を着ている奴もいるけど、紙みたいにグシャグシャになってる!
「――余所見トハ余裕ダナァ!!」
衝撃波、散弾乱れ撃ち!!
ナラカさんに釘付けになってる連中を、片っ端から撃ちまくる!
ヴァーティガアーマーの効果なのか、それとも別の理由か。
威力が跳ね上がった衝撃波が、人族共の体をバキバキに破壊していく!
「――そこまでだ! コイツを見ろ!!」
壁際から、声。
「お前ら動くな! この黒エルフがどうなっても――」
大柄な男が、誰かを羽交い絞めにして立っている。
ソイツに抱えられているのは――スキアエルフ。
ぐったりとした彼女の体には、全身に傷があって……両手両足に、金属製の杭が、何本も突き刺さって――
――ぶつん、と。
ボクのどこかから音がした。
「――ソレデ? ヤッテミロヨ……屑」
「どうなってもいい……は、あ?」
背中のアフターバーナーを弾けさせながら、もうボクはソイツの目と鼻の先にいる。
ソイツは慌てて、片手に持った剣をエルフさんに突き刺そうとして――
「がぉあ、ああ、ああああ!?」
変な声を出した。
一瞬で接近したボクの肩に、剣が突き刺さる。
ほぼ同時に、エルフさんの横を掠めて――チェーンソーがソイツの腹に埋まった。
「ヤッテ、ミロヨォオオオオオオオオオッ!!!!」
電磁、赤熱化!!
「あばぎゃがががががっが!?!?!?」
腹から顔面までをグズグズに切り裂かれて発火する男から、エルフさんを救出した。
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