第133話 うへぁ……面倒! 面倒!!
「なるほど、コレが……」
ミカーモ孤児院、1階にあるお部屋。
時刻は多分お昼前!
そこで、ボク達は椅子に座っている。
目の前のテーブルには……例の鞄。
結局、どうにもできないというか……下手にいじるとイクナイ! ということで……一泊してここまで持ち帰ってきたのだ。
あ、ギルドで依頼の清算は済ませました。
しめて5000ガルとちょっと! ゴブリン退治としてはかなり高額だったけど、またやりたいかと聞かれると……ねえ?
そして……今に至る。
「ふむ、確かに……見慣れた様式ではありませんね」
ボクらに混じって、鞄を検分しているのはイセコさん。
ちょうどお仕事が終わって帰っていたので、見てもらっている。
「少々お待ちを、『影衆』の同輩を呼びます。魔法具に造詣の深い者ですから、何かわかるやもしれません」
「アリガトウゴザイアマス!」
持つべきものは太いパイプをお持ちのお友達よ……
『他力本願虫……』
適材適所虫って言って!
今更だけど、トモさんはわかる~?
『空間圧縮背嚢ということはわかりますが、開け方などは知識にありませんね』
にゃるほろ……
「これで中身がゴブリンが喰い残した腐肉だったら嫌なのナ」
「嫌すぎる……またお風呂入らなきゃ」
「じゃじゃじゃ……」
マージで臭いもんね……ゴブリン。
「アカハ中身、何ダッタラウレシイ?」
「りんご! りんごぉ!」
欲のない我が子分よ……出でよ干しリンゴ!
そしてかわいいお口へポポイ!
「あむむい……まうまうまう……」
「いいものを持っているなムーク、ワレにも」
ヴァルにもポポイ。
「んむむ……干した果実もまた、良し」
……マーヤが口を開けている。
しょうがないなあ~?
「ポポイ」
「にゃむ……うん、美味しい」
さて、それではイセコさんの御同僚を待つとしますかね~?
・・☆・・
「お待たせして申し訳ござらん。サイーゾと申します」
しばらく後、イセコさんに呼ばれてやってきたのは……スラっと細いカマキリ系のむしんちゅ男性だった。
おお……なんか、レンズのいっぱいついてる片眼鏡? をかけてる。
鑑定家さんかな?
「サイーゾさんは名うての鑑定家です。彼ならば大丈夫でしょう」
「イセコ……ほめ過ぎだぞ」
サイーゾさんは恥ずかしそうだ。
「では……ほう、これがお話にあった背嚢ですか。それでは、少々失礼」
鞄の前に座ったサイーゾさんは、片眼鏡のレンズをカチャカチャ切り替えながら作業を開始した。
ラーガリで見た鑑定士さんを思い出すなあ。
『魔力の練りが上手い。こやつ、かなりの魔法使いだな』
マントの内ポッケでぬくぬくしているヴァルからの念話。
あ、起きてたんだ。
ゲニーチロさんの部下は凄い人ばっかりですなあ……
さすが真の意味での英雄さん。
「ぬぅ……! これはッ!?」
うわビックリした!?
な、ななななんですか!?
「イセコ! 本隊へ連絡! サマコとヨミコを呼べ! 私はここで、これを見張る!」
「ハッ!」
えっえっ!?
サイーゾさんは無茶苦茶慌ててるし、イセコさんもキリっとして走って行っちゃった!
「ナ、ナンデスカ……爆弾デスカソレ!?」
ひょっとして、ボクはとんでもないものを持ち帰ってしまったのでは!?
「いえ、中身はまだわかりませぬ……ですが、この背嚢にかけられた魔術式は、この国のものではございません!」
この国とちゃうって?
よくわかるなあ、そんなこと……あれ、なんかイヤーな予感がするぞ……?
サイーゾさんは、真剣な雰囲気で続けて言った。
「――この魔術式は、アーゼリオンとオルクラディでよく使われるものです」
あー、そういうことね……ふぁー!?!?
「ニャンデスト!?」
「ぷふっ! もう、真面目な話してるのにやめてよムーク」
「緊張感のない男ナ」
ふざけてないですってば!
ンモ~……で、でも大変! 嫌な予感しかしない!!
「じゃじゃじゃ……物々しいのす」
ロロンが言うように、あっという間に部屋は論戦体勢になった。
イセコさんが読んだ黒子さんたちは結界術のタツジンのようで……例の鞄とサイーゾさんを囲って……結界が展開されている。
さらに、この部屋全体も同じように。
「これで、何があっても大丈夫です……始めます」
サイーゾさんが作業を開始する中……ボクは、この騒ぎを聞きつけてやってきたイリュシムさんに神聖虫土下座をぶちかましている。
「ゴメンナサイ! 誠ニゴメンサイ! 腹ヲ! 腹ヲ切リマスゥ!!」
「む、ムークさん落ち着いてください。知らなかったので仕方ありませんよ、こうして対処できているのですから……」
イリュシムさんがドン引きしている気配がするけど、これはもう申し訳なさすぎるんじゃよ!
ううう……『宝物かな~? ウェヒヒ!』とか言ってた過去のボクをぶん殴ってハンバーグにしたぁい!!
子供たちの安全をボクが脅かしてどうするんじゃ~!!
どっか途中で鑑定屋さんとかに寄ればよかった! あるかどうかはわかんないけど!!
「いや、これは私も悪いのナ」
「私も、そこまで考えついてなかった」
アルデア達もそう言ってるけど、リーダーのボクが一番悪いんじゃ!
「ムーク様ばかりにそげな真似ばさせられねえのす! ワダスも伏してお詫びをば!」
ウワーッ!? ロロンがアルマジロ土下座で参戦してきた!
駄目です! 子分にこそこんなんさせられないのよ~!!
「フモモモ……ヤメテヤメテ!」
「んぎぎぎ……ムーク様こそおやめくなっせ~!」
「あの……もう結構ですのでお二人とも落ち着いて……ああ、どうしましょう」
お互いにやめさせようと地面でもみ合うボクらを、オロオロ見ているイリュシムさん。
『なんこの絵面、ウケる!』『いいツマミになりますね』
女神様たちが酷いですわよ~!!
「……終わりました」
サイーゾさんが、ほうと息を吐いた。
結界役の黒子さん2人も緊張を解いている。
「ゴ苦労サマデス……!」
最終的にイリュシムさんに半泣きで説得され、土下座を解除したボクです。
ロロンも同じように、恥ずかしそうに椅子に座っている。
親分子分で暴走してしまった……
「何度も調べましたが、特に呪いや魔法も仕込まれていないようです。そして……その過程で用途もわかりました」
おお! 有能! 有能むしんちゅ!
「用途、デスカ?」
サイーゾさんは眼鏡の位置を直して続ける。
「はい、こちらは……個人ではなく、おそらく軍、もしくは何らかの特務部隊が使用する物資入れでしょう」
「なんと!」
アルデアが驚いている。
マーヤも目をパチパチしてて、猫ちゃんみたい。
「サイーゾさん、よくわかりましたね?」
「うむ、外側の堅牢さ、そして内部容量の多さが決め手だ。我々も同じようなものを行軍に使用しているからな……国は違っても、運用用途に違いはあるまいて」
サイーゾさんがイリュシム先生に視線を送った。
「イリュシム先生、倉庫の一角をお借りできませんか?」
ええ、それはちょっと悪いよ……
「まあ、サイーゾったら他人行事。もちろんいいけど……いつもみたいに母さんって呼んでくれないの?」
「し……仕事中、ですので」
マ!? 種族違うのに親子!?
『お馬鹿虫。ここはどんな施設ですか?』
そ う で し た 。
そっか……じゃあサイーゾさんはここ出身なんだ。
そうだね、見た目はとっても綺麗なお姉さんだけど……そういえばイリュシムさんってピーちゃんの時代から生きてる人だった……
「では、倉庫で開封いたしましょう。先生、問題はありませんが子供たちは念のために遠ざけておいてください」
なんか、ちょっと照れているっぽいサイーゾさんが鞄を持って歩いて行く……速足!
「では、開封いたします」
校庭の端っこにある倉庫は、石壁で作られた頑丈そうな場所だった。
いざという時の避難場所も兼ねてるんだろうか?
そんな場所で、サイーゾさんが床に置いた鞄に手をかざして……光った!
「オアーッ!?」「なんと!」
ボクも、いつの間にか肩にいたヴァルも揃って声を上げた。
だって――ドジャー! って感じで……倉庫の床に金貨! 金貨がいっぱい出てきたんだもん!
あ! 他にも剣とか槍とか、それに盾に防具も!
す、すご……これ、一体どのくらいの金額に……
「……やはり」
サイーゾさんが床から金貨を拾い上げて、ボクに見せてきた。
ムン? ……綺麗な女の人の横顔が刻まれている。
ガル硬貨とは違うね……
「ご覧ください、これは『ログノ金貨』といって……アーゼリオンで流通している一般的な金貨です」
おー……ってことはこれはアーゼリオンのマジックバッグ!
これだけの量、一体何をする気だったんだ……どうせろくでもない事だろうけど。
「ムーク、ムーク」
お、なんですかマーヤさん。
「ロロンが気絶しちゃった」
ウワーッ!?
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