第132話 ダンジョンは、臭い汚い……なんぞこれ?
「ゲギャギャ……ギャギャギャ」
ヌ! 通路の奥に魔物の気配を……感じるッ!
――左手パイル、発射!
「――ゲッ!?!?」
悲鳴となんかが弾ける音!
近付いて行くと……うん、死んでる。
一般ゴブリンの胸が吹き飛んでるね。
「ぐうう……ゴブリン共も風呂に入ればいいのナ……」
「……ウン、ソウダネエ」
さっきは気配なんて格好つけたけど、実際の所……激臭が移動しているのでよくわかる。
暗視を使うまでもないのだ。
「ももめめ!」
布の化身と化したロロンがサッと出て、ゴブリンの耳を切り落とす。
そして、それを何重もの布で包んであるものに入れる。
臭くてしんどいなら無理しなくていいのに……と、思ったけど口に出さないボク。
ロロンが泣いちゃうからね!
『3番遺跡』は、事前に貰った地図が示しているように超シンプル。
入口は1つで、しばらくは真っ直ぐな通路がある。
そして、最終的に小部屋があって……すぐに終了。
ずっと昔に崩落があって、その先は土砂に埋まっているらしい。
ボクらの受けた駆除依頼は、ここに巣食うゴブリンをコロコロすること。
放っておくと繁殖して街道に出てきちゃうんだって。
だったら封鎖すればいいじゃん……と思うけど、きっとなんか理由があるんでしょうね。
ボクも森や林を彷徨うよりも、こっちの方が楽だし。
……激臭を無視すればねっ! ちくしょう! ダンジョンの浪漫はどこに行ったんだ!!
『残念、そこにないならないですねー』
ムギィイー!!
異世界って、結構大変!
『おやびん、おやびん』
懐のアカから念話だ。
『お? どしたんアカ』
『ぬのまいて、アカにもまいてぇ、てつだう、てつだう~!』
おおん……なんといい子か。
ちょっと待ってなよ……ハンカチ大の布を取り出して……アカにマスクみたいに、キュッと。
「ダイジョブ?」
『だいじょぶ、がんばゆ!』
そう言って、肩に登ってくるアカ。
その目はキラキラと自信に満ちている。
ずっと懐にいていいのに……ボクの周りはやる気のあるいい子しかおらんのか。
困るけど、困らない!
『アカ、終わったら一緒にお風呂入ろうね』
『あいっ!』
ヴァーティガを持ち直して、皆に目配せ。
そして、ダンジョンの暗がりに足を踏み出す、ボク!
・・☆・・
「ガギャギャギャ!」「ゲギャギャギャ!」「ギギギギッギ!!」
ぬわーっ! 過去最大の悪臭!!
「ムーク! 伏せるのナッ!」
アカと、懐のヴァルを潰さないように伏せる!
「『地を這う雷よ! 我が手に!』」
ばじん、と音。
すぐに頭上を通過していく、稲妻の群れ!!
「「「――ゲッ!?!?!」」」
稲妻が殺到した先――開けた小部屋は、一気に明るくなった。
粗末な焚火はあったけど……それどころじゃない光量!
その中にいた、結構な数のゴブリンが感電して出鱈目に飛び跳ねている。
「みみみ~!」
肩のアカから追いミサイル。
感電している中でも、一際体の大きいゴブリン……その顔面に炸裂! 顔面ないなった!
結局……感電とミサイルで、小部屋にいたゴブリンは全滅した。
黒くもなってないし、閉鎖空間で雷はねえ……こうかはばつぐんだ! ですねえ。
「ももんも! ふもも~!」
ロロンが走り出す。
ああ、耳を切るんだね……働き者だなあ。
「オツカレ、アルデア。ソレニ、アカモ」
「ふん、とっとと外へ出たいのナ。あの程度の相手ならこの程度ナ~」
「みゅみゅ!」
アカは嬉しそうにボクのほっぺに頭をゴンゴンしている。
かわいい!
「もあう、ににに」
ム、マーヤが何か指差して……ああ、ゴブリンの生活空間らしき汚いテントがある。
あれを調べろってことか、よござんす!
「ン、了解。調ベテクルヨ……ア、マーヤハシンドイデショ? ココニイテモギュウウウ!?」
マントがギチギチに引っ張られるゥ!
一緒にってことね! ね!
真面目! 真面目キャット!!
「マジカ」
「みんみみ」「ふもめも」
なんということでしょう……きったないテントを涙目になりながら解体した結果……!
なんか! なんかある! きったない布と腐った肉の中に……明らかに綺麗で頑丈そうな革の鞄が!
しかもこれ、なんか魔力を感じる……!
ロロンとマーヤも驚いている。
「これは……恐らくマジックバッグなのナ? 臭い所を我慢した甲斐があればいいが……」
ともかく、これでダンジョンは終わりだ。
この先は……うん、完全に道が崩落している。
耳も取ったし、ここで撤収かな。
あっと、そうだ。
『アカ! ごめんけどここ燃やしちゃってくんない?』
『あい! あーい!』
十分に距離を取って、アカファイアーを室内にぶち込んでもらう。
着火を確認して、酸欠にならないように素早く撤退した。
臭いの我慢してゴブリンの死体を並べておいてよかった……アチチ!
・・☆・・
「んみゃあ……まだ臭い気がする」
「んだなっすぅ……」
激臭ダンジョンから撤退して、しばらく歩いた。
丁度小川があったので、そこで休憩することにした。
むーん……ササっと済ませたつもりだけど、もう夕方というか夜だ。
今から飛んで帰ったら三の街には間に合いそうだけど、二の街を通過する時間はなさそう。
街中を夜間飛行するのはリスクがあるし……
「ムーク、ここは街道から離れてる。お風呂出して、お風呂」
「ハイヨ~」
ふむ、今日はここをキャンプ地とする! としようかな。
明日の朝早く帰った方がいっか。
孤児院には泊まりになるって伝えてあるし……大丈夫だろう。
「おふろ! おふ~ろ!」
「むぅう……全身が臭い気がする……」
ヴァルは大丈夫じゃない? ホログラムなんだし。
……でも、ボクは何も言わずに準備をする虫となる。
藪蛇ですわよ、藪蛇。
「アフゥ……」
「あふぅ~……」
「甘露、甘露……」
皆に入ってもらって、最後にお風呂にイン。
アカとヴァルには先に入っていいって言ったんだけど、一緒に入るから待ってるって言うんだよね。
あ~、2人ともいい子!
「ダンジョンハ、ナンカワクワクスルケド……臭イノダケハ嫌ダナア」
「あのような小さな迷宮でか? 変わった男よな」
小さい……まあ、ラーガリの時よりは小さいけど。
「ワレが知っている迷宮は、踏破するだけでも何百日もかかるようなものだった……ハズだ」
「ソリャスゴイ……」
ロマンを感じる! ヴァルが生きてた……生きてた? 時代は凄かったんだろうなあ。
でも……ダンジョンってそんな昔からダンジョンだったってこと?
謎は深まるばかりだ……宇宙人が作ったって聞いても信じるよ、ボクは。
「ム、泡ガ残ッテルヨアカ。ゴシゴシ~」
「きゃーはは! あははぁ!」
女の子は綺麗にせんとねえ。
アカの髪は厳密には髪じゃないけど、それでも綺麗にせんとねえ。
「さて、いよいよお楽しみナ」
お風呂を出て、おいしい夕食を済ませて……皆で焚火を囲っている。
みんな、あの激臭から解放されてリラックスタイムだ。
そして……地面に置かれていたのは、例のマジックバッグ。
ボクが持ってるエルフ製のものよりも大きくて、ちょっと地球でサラリーマンが持っている仕事鞄っぽい。
「デモコレ、開ケルニハドウシタライイン?」
「うむ、私にもわからんのナ」
ひっくり返りそうになった。
何故そんなに自信満々なんすか。
「どうにも私が知っているマジックバッグとは違うようなのナ」
「うん、私もそう。古くはないけど……なんていうかな、種類が違う?」
「じゃじゃじゃ、ワダスもそうなのす。パッと見て、魔力を流す所がよぐわからねえのす」
皆そうか~。
ボクも他のバッグをそんなに知ってるわけじゃないけど、だいたい触れて魔力を流す魔石があるハズなんだけど……これにはない。
「ッテイウカソモソモナンダケド、コレ自分タチノ物ニシテイイノ?」
遺失物じゃないのこれ?
「当たり前なのナ。魔物の部位や武器、防具を換金するのと一緒なのナ~?」
アホを見る目のアルデアである。
そ、そうなんだ……ならいいか。
じゃあ、残る問題はどうやって開けるかってことなんよね~?
ボクらは、鞄を前にして首をひねるばかりだった。
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