第131話 冒険者虫、ギルドへ。
「オオ……ナンカ、懐カシイ」
「腕ば鳴るのす! 鳴るのす~!」
感慨深く呟くボクの横で、ロロンがフンスフンスしている。
頼れる子分は今日も元気だ。
「ホホーウ、流石は首都の冒険者ギルドなのナ」
「ん、おっきい」
アルデアとマーヤも感心している。
ここは、三の街にある冒険者ギルド……の前。
朝ご飯の後に孤児院を出発して、今は昼すぎ。
いやー、わかってたけど移動距離が結構あった。
空でも飛べれば違うんだろうけど、今回は道を覚えるって意味で歩いたからね。
これ、依頼を受けて……って考えると長丁場になりそう。
首都が大きいゆえの弊害ってやーつかな?
ギルドは、今までに見てきた何処のものよりも大きい。
二階建ての、広ーい建物だ。
おそらく同業者であろういろんな人たちでごった返ししている。
「ジャ、行コウカ」
ここにいても仕方ないので、中に入ることにした。
『ぼーけん、ぼーけん!』『んふふ、くすぐったい』
懐にいるアカとヴァルの感触がくすぐったいや!
「はぁ~……とんでもねえ数なのす……」
ロロンがポツリとこぼしたように、依頼表を張り付けたボードがずらーり。
『街中』と『外』の依頼、それぞれがひいふう……10枚以上!
これは……依頼を確認するだけでもおおごとだ。
「外ノ依頼デイインヨネ?」
「んだなっす」
人だかりの後ろに並んで……確認。
アルデアとマーヤは別の所にいる。
それぞれで良さそうな依頼を手分けして探すのだ。
あ、今更だけどメンバーはロロン、アルデア、マーヤ。
それにアカとヴァルです。
ピーちゃんはお留守番で、イセコさんは昨日からなんかの任務中。
「サテ……」
ロロンと並んで、とりあえず見る。
むーん……あ、ここは魔物駆除のボードか。
なになに……『ゴブリン』『コボルト』『スライム』『オオドブネズミモドキ』『地竜』『飛竜』
ふわ~……凄い数。
さっすが首都、近隣の依頼がここに集約されてるっぽい。
これは……やっぱり依頼を選ぶだけで大変だぞ~?
腰を据えてやるぞ~!
・・☆・・
「コレ、オネガイシマス」
ずら~っと並んでいる受付嬢さん。
その1人の前に並んで、依頼表を差し出す。
「はい、少々お待ちください」
受け取ったのは……カマキリっぽいむしんちゅの女性。
イセコさんっぽい感じだから、多分この人もあの格好いい腕ブレードが出せるんだろうな。
「確認いたしました。ここに、お名前をお願いできますか」
「ハイ」
遺憾ながらボクはリーダー的存在。
差し出された書類に、つけペンみたいなもので署名……むっくんじゃなくて、ムーク。
「……はい、結構です。それでは、こちらが詳細です。どうぞ、お気をつけて」
「アリガトウゴザイマシタ!」
色々と書かれた紙を受け取り、頭を下げてみんなの所へ。
うーん、仕事が早いねえ、すっごくテキパキしてたな~。
「ンジャ、行コッカ」
『アカたちはもうちょっと我慢しててね~』
『あいっ!』『うむ』
念話を飛ばしつつ、ギルドから離れる。
「返却しないといけないけど、地図も貰えるなんて太っ腹だね」
マーヤが手元を覗き込んでくる。
そこには、受付で貰った依頼の詳細と近隣の地図。
「依頼を吟味するだけでも一苦労なのナ。今度は『出張所』で受注したほうがいいのナ」
「んだなっす、次はそうしやんしょ」
そう、この広い首都に冒険者はここだけ……じゃない!
二の街にも、一の街にも『出張所』っていう簡易ギルド? があるみたい。
だけど今回は本部が見たかったからここまで来たんだよね。
1回見たから満足なので、次からはそっちにしよっかな。
さて……みんなでウンウン唸って受注した依頼。
それは『駆除』だ。
「方向が分かっているから、門から出たら飛ぶのナ。ムークもしっかりついてくるのナ~?」
「ウン、頑張ルヨ」
この首都からそんなに離れてない所に、目的地はある。
「久しぶりでやんすね、ムーク様! もはや懐かしいのす……ダンジョン!」
キラキラしたロロンのお目目がかーわいい!
「ンネェ~? ラーガリ以来ダネエ~?」
かわいいのでナデナデしておこう、そうしよう。
「はわわわ」
ム! マントの内ポッケのアカも撫でとこ!
「えへへぇ、んへへぇ」
さあ、まずは首都から出るぞ!
そして……ダンジョンへゴーだ! ダンジョンへ!
・・☆・・
『アルデアから伝言。目的地を見つけたから降下するぞ、だそうだ』
『了解、降下準備ヨーシ』
びゅうびゅうと響く風の中でも、ヴァルの念話はよく聞こえる。
「降下スルヨ、ダイジョブ?」
胸に抱えたマントに声をかける。
「みゃあ……もう着くんだ。すごいね」
顔だけ出したマーヤが、驚いたように目をパチパチさせている。
「寒クナイ?」
「んーん、大丈夫。ムークあったかい」
問題なさそうだね……では、補助翼を操作して下降っと。
いつものようにロロンを運ぼうとしたら、なんかマーヤが運んでほしいって言ってきた。
この先、緊急でそんなことをしないといけない時があるかもしれないので……練習の意味も込めてそうすることにしたんよね。
マーヤは当たり前だけどロロンよりも重い。
でも、問題なく飛行することができた。
アカの『念動力』と、進化して出力の上がったボクの衝撃波&アフターバーナーのおかげかな?
まあそんなわけで三の街を出てすぐにテイクオフして……アルデアを追って飛ぶこと、たぶん30分くらい。
ボクは、目的地の近郊までたどり着いていた。
やっぱり飛ぶと早くていいや。
飛行能力もチートですねえ、よきよき。
あ、アルデアが見えてきた。
小刻みに衝撃波で減速して――パイルと逆噴射で着陸。
むっくん航空は今日もしっかりと運用されておりますよ。
「大分飛ぶのにも慣れたのナ。こういう場合はこれからもこれでいいのナ」
「ウン、ソレガイイネ……ハイ、マーヤ、到着ダヨ~」
「んみゃ……名残惜しい」
ボクのどこがそんなに居心地いいのか知らないけど、そう言ってマーヤが腕から下りる。
「アカ、オチカレ……ドゾ~」
「おちかれ、おちかれぇ! はもも、ももも」
念動力で頑張ってくれたアカに、魔石をポポイ。
美味しそうに食べるよね……石を。
「それで……アレが目的地ナ」
ここは、草原と森の境目みたいな場所。
そしてアルデアが指差す先には……森の中にぽつんと佇む、レンガっぽいもので作られた入口がある。
――あれこそが今回の目的地、『第3遺跡』だ。
首都周辺に点在しているダンジョンには、ものっそいわかりやすく数字だけが振ってあるんよね。
入口脇のちょっとくたびれた看板には、大きく『3』と書かれている。
詳しくは知らないけど、20か30はこんな遺跡があるみたい。
「ロロン、これからは順番にかわろ。ムークの乗り心地は独り占め厳禁」
「じゃじゃじゃ……わだ、ワダスはそんな……」
アルデアの方がいいと思うけど、マーヤは何が気に入ったんでしょうね。
『(コイツほんま)』『(平常運航虫……)』
バッグからヴァーティガを出して、右肩に乗せる。
さて……ダンジョンだ、ダンジョン!
いったいどんな冒険が待っているのか……!
ボク、こういうのは大好き! お宝とかあればいいな~!
「くちゃい!」
「クシャイ!」
アカが悲鳴を上げてマントに潜り込んできた。
ボクも同じ感想です!
『鼻が曲がる……ダンジョンとはこんなに臭いのか……』
内ポッケのヴァルからもうんざりした念話が届く。
「むめめめ、もも、ふぁもも」
「にゃう、むにゃにゃ、みぎい」
鼻がいいロロンとマーヤは、揃って顔に布をグルグル巻きにしている。
隙間から覗くお目目は揃って死んでいる。
「なるほど……討伐部位買い取り金が3倍のワケなのナ」
けもんちゅほど鼻のよくないアルデアは、それでも嫌そうに顔をしかめている。
「ラーガリヨリモマシダケド……ソレデモ臭イ……」
『3番遺跡』に入ってしばらくして、ボクらは激臭に襲われた。
どうやら奥から入口にかけて風の流れがあるみたい……
生き物とかが腐ったような臭い……控えめに言ってキツイ!
「ロロン、マーヤ。シンドイナラ外デ待ッテル……?」
けもんちゅには辛かろうと振り向いたら、2人とも残像が見えるくらい首を振ってる!
「ももも! ももっふ! ふんもっふ!!」
「ふみぃ! みぎゃぎゃ! まふまふ!!」
わ、わかりました……!
それじゃあ……受けちゃった仕事はこなさいないとねえ……
ウブブ! くちゃい!!




