第76話 そういう呪いにでもかかってるのか、ボクは。
「ヌ、グゥウウウウ!!」
危ない! 地面に激突しちゃウギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?
地面と平行に吹き飛んでるゥ!?
もう! このヴァーティガアーマーってば! 0か100しかないんですか! パワーが!!
あまりにもボクの意志に対して即座に反応しすぎる!
見た目は100点満点中の2兆点くらいだけどさ!
『むっくん! ディナ・ロータスが落下してきます! 逃げないとぺちゃんこ虫ですよ!』
ヒィーッ!?
頭上に大亀!! あ、アフターバーナー点火! 全速ゥウウウウウウアアアアアアアア?!!?!?!
まあ素敵! さっきまで頭上にあった甲羅があんなに遠くに!
離脱成こ――大岩が! 大岩がある~! 進行方向に大岩が!
避けないとぶつか――
「グベベベベベベベベベベッ!?!?!?」
――りました! あんまり痛くないけど痛い!
岩の尖った所が鎧に入り込んでチクチクする! ンギャアアアアアア!!
『は~締まらん、むっくんってばこれだからね~? んま、それがいい所でもあるんだけど』
『粗忽虫、面目躍如ですね……大丈夫ですかお隣り様、呼吸が苦しいほど笑って……』
『なんと雄々しく、素晴らしき虫か! 今夜は宴ですよ! カラアゲ祭です!!』
ふぎぎぎぎ! ンモ~ッ!!
あとママが滅茶苦茶喜んでる! それは嬉しい!
カラアゲ祭って最高だよねイダダダダダダ?!?! 大岩が! 大岩が~!!
「グゥウウ……」
特にかわいそうでもない大岩くんを何個かぶち抜き、ぬかるみに斜めの角度で突っ込み、顔面でブレーキをかけながら滑り続けること、たぶん100メートルくらい。
ボクは、ボロボロでドロドロの姿でやっとこさ停止した。
それと同時くらいに、ヴァーティガアーマーは光の粒子になって消えて……気付けば、棍棒に戻っていた。
「――ゴゴオオオオオオギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?!? ガガガアアアアアアア!?!?」
んで、ディナ・ロータス。
口から喉までビックリするくらいの大穴が開いたアイツは、地面を転げ回っている。
完全に殺したと思ったのに……でっかいだけあってしぶとい!
とりあえず魔石をモグモグして、戦線に復帰しないと……それに、そもそも移動しないと。
ここでグネグネしてるところにブレスなんて吐かれたら、さっきまでの格好よさを帳消しにするくらいの愉快な死にざまを晒してしまう。
ロロンの怪我も気になるしね! 大怪我だったらすぐに治療してあげんと……ん、んん?
なんでボクの両腕に……蒼い紋様が?
あ、これってまさか――
「――アバーッ!?!?」
ばぎゃぎゃぎゃ! って感じで一斉にボクの体が弾けた!?
正確に言えば、装甲板が! 手足と胴体の装甲板が吹き飛んだ! 吹き飛んだァ!?
『反動ですね、これは。命に別状はありませんが痛そうですね? 大丈夫ですか?』
だいじょばない……とってもだいじょばない……
涙腺はないけど、もしあったら涙で池ができそうなくらい痛いぃ……!
『あらむっくん、亀さんの方を見てください』
今それどころじゃな――紋様!?
亀の顔中に、ヴァーティガ由来の紋様が!!
やった! 今度こそやったぞ~!
「ガアアアギャアアアア!?!?!? ――ッガ」
ウワーッ!? 顔中が爆発したァ!?
でもこれは大打撃! これでお亡くなりになって~!!
「――ハイヤーッ!!」
あ! ルツコさん!
って、走竜くんが多い!? いつのまに騎士団と合流したん!?
「この機を逃すなァ! 第7巡回騎士団! 総員吶喊せよォオオオオオオ!!」
「「「フー!! ラーッ!!!!」」」
ルツコさんを先頭に、騎士団が一塊になって突っ込んでいく。
ヴァーティガのアレで顔が爆発したディナ・ロータスは、なんともしぶとく首を持ち上げて――まだブレスを撃つつもりなのか、魔力を溜めている。
下あごが完全に吹き飛んだ口に、魔力が集まら――ない!?
なんか、ウンサンムショー? しちゃった!
『さっきのヴァーティガさんの一撃には、敵の体内魔力の流れを著しく阻害する効果もあるようですね。必死でブレス用の魔力をかき集めようとしていますが、集める端から消えていきます』
ヴァーティガってすっご~い! あ、いだだだだだ!?
ボクがのたうち回っていると、ルツコさんたちが一本の槍みたいな陣形でディナ・ロータスの前に到着した。
「――放てェエエエエ!!」
「「「雄ぉおおおおおおおおおお!!!!」」」
そのまま衝突する……と思ってたら、ルツコさんたちは顔の前で右に曲がる。
すご! 走竜くんがドリフトみたいになってる!?
そして、すれ違いざまに……全員が、例の撃発槍? をものすごい勢いでぶん投げまくった!
一拍置いて、ディナ・ロータスの顔じゅうのいたるところが爆発!
ボクがつけた傷が一層大きく、滅茶苦茶になった!
「離脱! 反転!!」
「「「応ッ!!!!」」」
そして、通り過ぎた騎士団は――すぐさまUターン!
来た道を通りながら――また、すれ違いざまに槍という槍を投げまくった!
またも爆発! 滝みたいな勢いで流れ出る鮮血!
「反転! 在庫が切れるまで繰り返すぞ!」
「「「応ッ!!!!」」」
うわ……ああやって何回も何回もやるんだ……全く同情はしないけど、亀さんナムナム……
「――頃合いか! ゆくぞライデンッ!!」
「ギャアアアウッ!!」
何度も何度も投げ槍突撃が繰り返されて、ディナ・ロータスがはもう顔中が真っ赤な肉の塊だ。
ボクが潰してない方の目がまだぎょろぎょろしていて……大変に! キショい!!
あの状態になっても生きてるの怖いな……
「これだけやれば! 『通る』であろう!! ハイヤーッ!!」
騎士団の塊から飛び出すルツコさん。
首に向けて、今までの何倍もの勢いで加速していく。
「――『憤怒の形相を持ちし者よ! 我が手にその権能を貸し与え給え』!!」
今度は何も持っていない、リツコさんの右手。
空中に突き出されたその手のひらに――野球ボールくらいの火球が出現。
こ、ここからでもわかるぞ……なんて魔力! まるで小さな、太陽!!
「――『渦巻き! 燃え盛り! 遍く不浄を焼き尽くす――降魔の神槍を』!!」
その太陽は、長く長く伸びて槍の形になった!
「――でいやぁッ!!」
ルツコさんがブン投げた槍は、一瞬でボクが潰した眼窩に飛び込んで――轟音を鳴らして爆発!!
目が! 目が~!! うお眩しッ!?!?
「オオオ……」
くらんだ目が元に戻った時には……ディナ・ロータスの頭部が半分になってた。
目から飛び込んだあの槍が、内部で炸裂したみたい……すっごい!
えっとたしか【焔姫】って二つ名があるんだったよね、あの人。
ほんと、炎のお姫様って感じだ……
『生命活動、停止を確認しました。大金星ですよむっくん! トモさんポイントもあげちゃいます!』
わ~い……終わった、終わったァ……
「おやびん! お~やび~ん!!」
上空から超高速で接近してくるアカに手を――振ろうとして、ボクの電源が切れた。
すやり……
・・☆・・
「……ムムム?」
「ギャルルゥ」
夢も見ずに寝て……起きたら、視界一杯に走竜くんの顔があった。
おお……雄はシュっとしたイケメンですなあ……雌とは違った良さがあるねえ。
「コニチワ……ムワワワワワ」
「ギャッギャ!」
めっちゃ舐められとる。
うーん、青臭い所は雌と一緒かあ……
「ムーク様ァ! お目覚めになりやんしたか!!」
走竜くんを若干押しのけて、今度はロロンの顔。
あ! よかった! 元気じゃんロロン!
「起きられやんすか? お食事ば、どうなさいやんすか?」
「オナカスイタ……起キルヨ、起キ……体ガ動カン!?」
ビクともしないですよマイボディが!?
なんで!? また体吹き飛んだとか?!
『あれだけ大暴れしたのですよ? 反動です、反動。むしろこの程度で済んだのは僥倖ですね、一応五体満足虫ですし』
まあ、そうか……それにつけてもお腹空いた! 餓死しそう!!
「じゃじゃじゃ、お待ちなんせ! ワダスがお手伝いするのす!」
やる気満々のロロンが、すぐさまボクを起こしてくれた。
ああ、暖かいと思ったら焚火の近くに寝かされてたのか……もう夕方ですなあ。
なんか、ちょっとした野営地みたいになってるね……騎士さんたちが色々働いてるし、過ごしやすそうな空間だ。
「おやびんおきた! おーきた~♪」
「ムヒャン」
アカがほっぺに突撃してくる。
いつでもどこでも元気な上にカワイイとか無敵か? この子は。
「だいじょぶ? だいじょぶぅ?」
「ダイジョブ。オナカスイタダケ~」
撫でてあげたいけど、現状腕もプルプルするだけで持ち上がらないねえ。
「しぇば! お待ちを! すぐにお持ちするのす!」
ボクの背中側になんか座椅子と座布団が悪魔合体したような何かを固定し、ロロンはダッシュで消えていった。
どっか別の場所に調理場? でもあるのかもねえ。
「おやびん、しゅごいかっこよ! しゅてき! きらきら、ばっきばき~!」
「ハッハッハ、苦シュウナイ、ハッハッハ」
ヴァーティガアーマーは超絶格好いいから仕方ないネ!
「騒がしいと思ったら起きたのナ」「ふわぁあ……飯か?」
続いて、アルデアとその谷間でスヤスヤしていたっぽいヴァルが来た。
「おおムーク、ムーク」
ヴァルが飛んできて、アカの横に座る。
「中々雄々しかったぞ、まあ……よくやったな」
「ヘヘヘ、ドウイタシマシテ」
最後が無茶苦茶格好悪かったけど、まあトータルで見れば及第点でしょ、うん。
「ふはは、締まりのない顔をしとるなあ……ホレホレ、撫でてやろう」
「アカも! アカも~!」
「コショバイ!」
妖精たちにヨシヨシされつつ、ボクはやっと肩の力を抜くことができた。




