第73話 仕切り直し、クソデカタートル。
「騎乗にて失礼! 話は後だ! 行くぞライデン!」
「――ギャルルッ!!」
突如やってきたルツコさん……と走竜くん。
彼女はそう言って、さらに前に向けて加速した。
「おお! このように巨大な個体は見たことがない! 心が躍る!!」
「ゴオオオオオガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
ボクに殺意は向けていても、高速接近してくる新手は気になるらしい。
早速、ディナ・ロータスは口を開けてブレスを放った。
さっきダルトンさんにやったみたいな、速射性重視っぽい小規模ブレス!
「来るぞライデン!」「ギャウッ!」
ム! ルツコさんと走竜くんが同時に魔力を使って――結界が展開された!
今までに見たことない形してる! なんか……円錐形!
それを展開したルツコさんは、ブレスの中に突入。
そのまま何事もなかったように突き抜けた! ナニアレ!?
「アレは騎獣と協力して発動する、移動式の個人結界です。受け止めるのではなく、受け流しつつ突撃する……そういった意図のモノですよ」
トモさ……イセコさんペディア!
なるほど、そういうのもあるのか……!
『そんなことを話している間に最低限の修復、完了です』
おお、ありがたい……これで逃げることができる!
「ルツコ様は巡回騎士団の中でも特に騎乗技術と騎乗戦闘に秀でておられます。恐らく、部下の方々に先駆けて来てくれてのかと」
ありがたいけど、一番偉い人が単騎駆けで突撃とか三国志か何かかな?
「ゴオオオオオオオオオアアアアアアアアアアッ!!」
おっと、薙ぎ払いタートルブレス!
「飛べッ!」「ギャウッ!」
地を這うようなそのブレスを、軽やかに飛んで躱すルツコさん。
すごい! まさに一心同体ってやーつ!
「――ハァッ!!」
空中で、ルツコさんが何かを投げた!
細長く、金属っぽいそれは真っ直ぐ飛んで行って――ディナ・ロータスの首に吸い込まれるように突き刺さった!
「ウワッ!?」
その突き刺さったモノは、一拍置いて爆発。
皮膚の破片を周辺にばら撒いた! なんじゃあれ!?
「アレは【撃発槍】という投げ槍の一種です。【ガリル】産の武器で、突き刺さると魔力を使わずに爆発します」
エンライみたいなドワーフさんの武器! なるほど、魔法じゃないならアレが正解ってことか……
あ! よく見たら鞍に細長いソレがずらっと装備されてる!
「トルゴーン北部はディナ・ロータスの生息域なので、街々に非魔法式の武器が配備されています。それを持ってきてくれたのでしょうね……」
なるほど、助かるなあ……
うお? ……そんな風にしていると、やっとまともに体が動くようになってきた。
「イセコサン、モウ大丈夫デス」
今まで肩借りっぱなしだったもんね。
しっかり立たなきゃ。
「あっ……は、はい! 安心しました」
バッ! とイセコさんが離れる。
セクハラにならんかどうか心配な虫ですよ。
でもお花みたいないい匂いがしました。
さて……現在進行形でルツコさんが大暴れしている。
ディナ・ロータスはすっかりそちらに気を取られて、ボクへ注意を向ける余裕がない。
このまま様子を見つつ、完全に体が治ったら戦線復帰……がいいだろうね。
『おやびん! だいじょぶ? だいじょぶぅ?』
『ハーッハッハッハ! ボクは最強で素敵な親分なのでもうすっかり元気なのだよ! 安心したまえ!』
『わはーい! さいきょ、さいきょぉ!』
アカへの念話ケアも忘れないボク!
……実際のとこは千切れた左腕の付け根がクッソ痛いけど。
『ああ、動けるようになったら腕を拾ってください。寿命も節約しなければいけませんからね』
寿命の節約……なんという言葉なのだ。
ていうか消し飛んでなかったのね、ボクの腕。
「チョット腕ヲ拾ッテキマ――」
「はい! 少々お待ちを!」
イセコさんが消えた! ちょっと! 拾いに行くって今言ったでしょ!?
「――戻りました!」
もう拾って来たのか! はやい!
見つけるのすごいなあ……観察眼に優れてるんだろうなあ。
「ド、ドウモ……」
ボロボロの腕を受け取り……切断面にペッタリ。
うう、我が腕ながらグロい……
『……主要部分は無傷ですね、この分なら千切れた肩部分の再生だけで済みそうですよ。修復、実行!』
「ンギギギギギ……!」
なかった腕が生えるのもアレだけど、この神経的な何かを一気に繋ぐのもキショい感覚!
なんか背筋がゾクゾクしますわ~!
……あ、神経つながった。
指が動く……ワキワキっと。
これで、むっくん五体満足モードに復帰したぞ!
一生この形態でいたいものだなあ……
「ヨシ!」
「いつ見ても凄まじい回復呪法です……同僚にも、これほどの使い手はほとんどおりません」
褒めてくれるけど、これは似て非なるモノだからな~……
ほんと、コレなかったら早い段階で天に召されてたよね。
トモさん様様、ありがたや~!
『まあ! このお上手虫! これはポイントの付与を日に2回にすべきか検討ですね! もうっ!』
無茶苦茶嬉しそうな所悪いけど、1回でいいよ……恐れ多いし。
『ヴァル! 元気になったよ! そっちの状況はどう?』
『もう回復したのか……出鱈目な男よ』
呆れたような念話が返ってきた。
回復力にだけは自信がある虫ですので!
『こちらは変わりない、ヤツの棘もそろそろ打ち止めのようでな……アカが頑張って減らしてくれたおかげだ。お主の子分だけあって、なんだあの誘導する光弾の呪法は? あのような魔法は見たことがないぞ』
それはボクにもようわからん。
アカは転生とかしてないし、この世界のどっかにアレ系のスキルがあるんでないの?
『さて、戦況だ。正面はあの騎士が釘付けにしているから問題ない。お主が傷を付けた足を、ロロンとダルトンが揃って攻撃している……特にダルトンは凄まじい剛力だな、この様子ならばそろそろ足が壊れるぞ』
おお! 朗報!
あの二刀三節棍ならグッチャグチャにできるだろうしね!
ロロンも頑張ってるのかあ……おやびんも頑張らんと!
合流しても邪魔になりそうだし、どこか別の部位をボコボコにしに行こう!
ターゲットがばらければ有利だしね!
「戦線ニ復帰シマス!」
「ご無理は……されていないようですね、わかりました。それでは私も牽制に戻ります……ムーク様!」
イセコさんはボクの手をキュッと握った。
「どうか、ご武運を……!」
「――ハイ、アナタモ!」
ボクは、その温かい手を握り返すのだった。
・・☆・・
「――デエエエリャアアアアアアッ!!」
何度目か忘れた、ヴァーティガフルスイング!
膝だ! 膝をよこせーッ!!
相変わらずかったいかったい膝だけど、ぶん殴り続けていればいつかはぶっ壊れるのは経験済み!
援軍が来るまで大暴れしてやるんじゃ~!!
現在ボクがいるのは後ろ足部分。
ルツコさんに気を取られたディナ・ロータスは、完全にボクを気にしていなかった。
顔の前でボッカンボッカンしてるんだもんね、そりゃあそっちを気にするよね。
てなわけで、太鼓よろしく殴り続けているボクです!
フルコンボだドン!
しっかし、本当に歩く要塞だ。
こんなんがウロウロしてたら、そりゃあ一般ピープルは街から出ずに生きていくはずですよ。
命が実質ダース単位のボクとか、無茶苦茶強いヒトじゃないとお外には出ないよねえ。
「セイヤーッ!!」
ヴァーティガでぶん殴り、ついでに足を叩き込む。
再生したパイルを発射する勢いで、離脱!
まだ表面は壊れてないけど、この調子ならまた破壊できるぞ~!
「グロアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
ずずん、と地響き。
ボク……じゃない! ディナ・ロータスが反対側に傾いていく!
ってことは……ダルトンさんとロロンが足に大ダメージを与えてくれたんだ!
よっしゃ! これで畳みかけられ――離脱ゥ!
この野郎! まただ! また手足を引っ込めた!
『頭がダルトンとロロンの側に行ったぞ!』
くっそ! やっぱりこうなったか!
待ってろロロン! おやびんが今行くぞォ!!
「デリャッ!!」
ジャンプのち、アフターバーナー!
一気に上昇して、甲羅を蹴って空中へ!
うわあ! まるで岩山みたいな甲羅! 近くで見るととんでもないや……ここをダッシュで渡ったダルトンさんっていったい……
っと、考え事をしてる暇はない! 行かなきゃ~!!
「ウワーッ!?」
甲羅上空を飛行し、向こう側へ。
そこでボクが見たのは、茶色い濁流――ブレス!
ボクが撃たれたのと同じくらいの規模だ!!
どこだ!? ダルトンさんと、ロロンは!!
「――イタッ!」
ダルトンさんは、ブレスを大きく隆起させた岩の壁で上手く逸らして受け止めている!
ロロンはその後ろで、土の鎧を身に着けた状態で――膝を、ついている!
あああ!? どしたの、怪我したのォ!?
「オ、オオオ……オノレ! ヨクモーッ!!」
一瞬で目の前が真っ赤になる。
お腹の底から湧き出す魔力を、全て背中のアフターバーナーに注ぎ込む!!
加速! 加速加速加速――!!
甲羅の端で補助翼を操作!
最高速のまま、急降下! 補助翼千切れた! でも構うもんか!!
あっという間に、ディナ・ロータスの頭の上に!!
「ボクノ! 大事ナ子分ニィ――」
魔力全開! 右腕へッ!!
額に着地し、宙返り!
大きく見開かれたでっかい目に叩き込む――むっくん・右ストレートォ!!
「何スンダコノ、クソデカタートルッ!!!!」
「――ガギャッ!?!?」
眼球まで硬い! だけどこんなもんでボクを! 止められると思うなァ!!
パイル――オン!! 引き千切折れチェーンソーッ!!
「グガギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」
どうだこの野郎ォ! 絶対に離れてやらんからな!!
隠形刃腕展開! 周囲に突き刺して――からのォ!
超! 振!! 動ォ!!!
「ガアアアアアアアアッ! ガアアアアアアアアアアアッ!?」
お前がくたばるのが先か! ボクの魔力が尽きるのが先か! 根競べだーッ!
ここまで顔面に近ければ何もできないだろ! 亀の構造的欠陥を呪え! クソデカタートル!!




