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第67話 やめて! もうえらいこっちゃはいらない!!

「んだなっす、間違いねぇ。それはまさしくディナ・ロータスの卵でやんす」


 ダルトンさんも太鼓判を押した。


「ホホーウ、これがそうなのナ? 初めて見たのナ」


「市場には絶対に出回りませんので無理もないかと。私も、ここまで完全なモノを見たのは久しぶりです」


 むーん……どう見ても宝石にしか見えないけどな。

それじゃ、あの中に亀さんの子供が入ってるんだ……見えないなあ。


「綺麗でやんす~」「きれえ、きれえ!」


 ロロンとアカは揃って目を輝かせている。

いくらくらいで売れるんかな、アレ。


 だけど、一つ気になるのは……イセコさんもダルトンさんも、全然嬉しそうじゃないってこと。

気になるな~……いやな予感しかしない!


「失礼します……むぅ、やはりコレは……!」


 アルデアから卵を受け取ったイセコさんが、何かを確認してさらに暗い顔になった。


「イセコさ、『中身』は?」


「……『処理』されています」


「嗚呼……矢張り」


 ……どしたんじゃろ、どんどん雰囲気が暗くなっていく。

と、思っていたらイセコさんはこっちを見た。



「――ムーク様、すぐにこの場を離れましょう。ディナ・ロータスが来ます」



「エェエ!?」


 まさかの爆弾発言である。


「アルデア様、トーラス様たちに急ぎ連絡を!」


「何やらわからんが、わかったのナ!」


 驚くボクを尻目に、アルデアが飛び立つ。


「イセコサン、一体ドウイウ……?」


「手短に言います。ディナ・ロータスの卵は中の赤子が十分に育つまでは、外敵の攻撃に対してかなり高い硬度を持つのです。加えて、魔法に対しても同じように」


 ほほう。

卵ってのは弱いものってイメージだったけど、その逆なんだ。


「この状態の卵にある種の呪いをかけ、中の赤子を殺します……すると、このような美しい宝玉になるのです。これは美術品としても、魔法具の触媒としても凄まじい価値になります」


 え、赤ちゃんに呪いを!?

さっきの連中……結構エグイことするのね。

その結果高級品になった、と……なんか、それ聞いちゃうと可哀そうが勝つなあ。

魔物は魔物なんだけど、なんというかあまりにもえげつないというか……


「そして……見たところ呪いが完了したのは少し前。ここからが重要なのです」


 イセコさんが、またボクを見る。

あら、綺麗なお目目。



「――赤子が死んだ時に、ある種の波動が放たれます。それを感じ取った親は……大いに怒り、暴れ回るのです。自らの命が尽きるまで、それは決して止まることはありません」



 ……あ~、そういうこと。

つまり……子供を殺されてマジギレした親が、ボクらを襲ってくるってことね……完全に理解した。


「ドコニ逃ゲマショウ!?」


 こうしちゃいられない! 危険がデンジャー!!


「ひとまずはリーチミ方面に向かいます、その途上で伝令魔法を放ち、周囲に危険を知らせます。運よく巡回騎士団でもいれば助かるのですが……」


 ここまで来たのに戻ることについて、別に嫌な気持ちはない。

だって大変だもんね! 護衛対象の命が一番大事なのですよ!


「ワカリマシタ! トコロデ、ソノ卵ハドウスルンデス?」


 貴重品らしいけど……


「これはわが国ではご禁制の品になります。専門の技師に頼んで適切に処理せねばなりません」


「ア、ソウナンデスネ。何デ禁止ナンデス?」


「赤子が死んだあともしばらくの間は波動を放ち続けるのです。親はその間これを追い、途上にあるものを破壊し尽くしますので……」


 うわあ……えらいこっちゃ。


「ですので、我々はこれを所持した状態で逃げねばなりません。これを放置すれば親がどこに行くかわかりませんので……こうなったら、余人に被害が及ばぬ場所に誘導しつつ援軍を待った方が良いのです」


 なるほど……そういうことね。


「じゃじゃじゃ……ほんに毛無猿どもはロクなことばしねえのす! 己が国でやればいいでやんしょ~!!」


 ぷんぷんしたロロンがピョンピョンしている。

それは本当にそう!


「ふん、奴らからすれば敵国を混乱させた上に貴重な品まで手に入る……ということでしょう。陰湿なオルクラディが考えそうなことです」


 イセコさんが普段のスマイルを消して吐き捨てている。

むうぅ……返す返すもヒューマンはロクなことをしない……!!


「ナンタル人種! ファッキュー! ヒューマンゴーホーム!」


「ふぁっきゅ! ふぁっきゅ!」


 あああ! アカが悪い言葉をまた使ってしまった!!

おのれ……おのれ人類! 許さんぞ!!


『どこの魔王ですか』



・・☆・・



「わかりました、反対? とんでもない! すぐに逃げましょう!」


 戻ってきたトーラスさんは真剣な顔で頷いた。

即断即決! 素晴らしい!


「ある程度距離を取ったら、お二方には安全な所まで離れていただきます。伝令魔法は放ちましたので、そろそろリーチミにいる仲間に届く頃合いかと……では、出発しましょう!」


 そうして、ボクらは来た道を戻ることにした。



「―――――――‼‼」



 む、なんじゃろ……今なんか声した?

どこかで鳥でも鳴いてウワーッ?!?!?


「意外と近くにいたようですね……せめて開けた所までは誘導せねば!」


 ボクらの後ろ、鬱蒼とした山があるあたり。

そこの一部が……爆発した!!

噴煙と、空中に散らばる木々のかけらが晴れたそこには……!


「卵ばあるので予想はしておりやんしたが……成熟した雌でやんすか!」


 遠いけど見える!

そこにいたのは――亀!

地球のゾウガメを10メートル級にして、頭にクソ長い角を生やして甲羅とか色んな所をトゲトゲにしたみたいな! 亀!! ビッグタートル!!


「こうなれば偽装している暇はないのナ! デルフィネ! トーラスを掴んで飛ぶのナ!」


「わ、わかったのナ! トーラス!」


「頼む、デルフィネ!」


 マントを脱ぎ捨てたデルフィネさんが、トーラスさんの両肩を掴んで上空に飛び上がる。

おー! 凄い! 飛ぶの上手!


「デルフィネのカバーに回るのナ!」


 アルデアも羽ばたき一つで飛び上がって追う。

離陸がスムーズでいいな! いいな!


「ムーク殿も飛びやんせ、ロロンさを頼んだなっす」


「了解!」「はひゃあ!?!?」


 ダルトンさんの声に、ロロンを横抱きにして……あれ?


「ダルトンサンハ? ソレニ、イセコサンモ」


「じゃじゃじゃ、オラは走るだけで事足りやんす」


「右に同じです、先導しますのでついてきてください――では!」


 イセコさんが地面を爆発させる勢いでダッシュをスタート。

一拍遅れて――ダルトンさんも走り出す。

し、親戚にF1カーとかいらっしゃる???


『えと……アカ! ボクを浮かせて! ヴァルとピーちゃんはついてきてね!』


「あい~!」


 アカが肩に着地して、がっちりしがみつく!


「行クヨ、ロロン!」「はわぁあ……はわ、はわわ……!」


 ……もっとギュッとせんと危ないか。

ぎゅぎゅ~! っと。


「あひゃあ!?」


「ゴメンネ! 行ックゾ~!!」


 ロロンをホールドして、ダッシュ開始!

ホップ、ステップ――大ジャーンプ!!

アフターバーナー点火! 補助翼を上昇方面へ!

一気に加速し、重力が襲い掛かる!

んぎぎぎ……! 相変わらずロケットの気分!


『ムークさん、本当に速くなったわ! 格好いいわ~!』


『ふむ、中々だな』


 キミたちもね! 妖精って格好よく飛べて羨ましい!

ピーちゃんは妖精以前の問題だけども!


「デッカ……!」


 ある程度飛行が安定したので、後ろを一瞬振り向く。

たぶんまだ何キロも離れてるとは思うけど……森を蹴散らしながらクソデカタートルが明らかにこっちへ向かってるのが見えた。

デッカイから縮尺が狂ってるような気がしてくる!


「トニカク、イセコサンタチヲ追ウカ! ロロン、チョット我慢シテネ!」


「は、はひ! しっかり掴まりやんす! 掴まりやんす~!」


 高い所が怖いのか、ロロンはうつむいてボクにしがみついてきた。

よしよし、これで安定性はさらに向上だ!


『(ぬっほっほ、むほほ……たまらん、初々しさがたまらんし~!)』


『(虫だったむっくんが立派になって……)』


 ……今誰か喋った? いや、気のせいか。


『――ホッコリしていたらこれです! むっくん、後方に魔法反応――亀さんから!』


「――ロロン! 急降下スルヨ!!」「は、はいっ!!」


 むっくん回避マニューバ!

頭の上を何かが高速で飛んでいった――アレなに!?


『甲羅の棘です!』


 んなミサイルみたいな使い方してからに~!

ええと、イセコさんとダルトンさんは……あそこね!

あの方角にジグザグで逃げるんじゃ~!!


 ……ちなみにホッコリってなに?


『……ムロシャフト様とサブ画面で猫の動画を見ていました』


 猫は可愛いからしかたないか……


『とにかく、むっくんが目立っているから狙っているようですね。ざっくりとした方向にいる者を無作為に襲うようです』


 まあ最後尾を飛んでるしねえ……

あんな適当な狙いに当たるなんて末代までの恥でしてよ~!


『その場合むっくんが末代では?』


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます!ここにウッカリ虫魔王爆誕。人類刮目せよ。訴えないでください!w
魔王ムックン爆誕。 見た目や言葉使い性格に反して、一撃必殺系の技を多用し四肢どころか半身失っても即座に修復する継戦能力を持つ。 甲羅の上なら安全とかないんかな?
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