第66話 おのれクソヒューマン!!
「アング、ボキボキ……」
魔石をバリバリ。
失った魔力を一瞬でチャージ! 頭がクラクラしちゃう!
「ドウ見テモ死ンデル」
視線の先には……膝から下だけの足が2本。
ヴァーティガのごん太ビームが飲み込んだ結果だ。
アレで再生されたらもうエイリアンだよ……だけどまあ。
「念ノ為ファイア!」
最大溜め衝撃波、連射!
男の成れの果てはグシャグシャのハンバーグになった。
安心……してる場合じゃない!
まだ3人残ってる! トモさんみんな大丈夫!?
『鮮やかでしたねむっくん。現在皆様戦闘中です、ロロンちゃんが一番近いですかね』
待ってろロロン! 親分が横槍をダース単位で入れちゃるからね!!
「――ちぇあッ!!」「――ぐぁお!?」
ロロンと戦っているのは、ボクが相手したのと同じような格好の推定男。
武器は……アレだ! 鎖鎌みたいな魔法具! 鎌部分は実体だけど、鎖が光の何か!
今まさに、その鎖を搔い潜ったロロンの槍が――男の腹に突き刺さった!
「――スヴァーハッ!!」「ごおぁッ!?!?」
ロロンが詠唱し、槍に魔力が集中。
男の腹が、内側から爆発した! グロい!!
槍の穂先がウニみたいになったんだ!
「ぐぅう、あ! 死なば諸共よ、ケダモノが!『呪われ――」
「でいりゃぁあッ!!」
男が差に何かを詠唱しようとした瞬間、槍から手を放したロロンが跳躍。
土で固められたゴッツイ拳を、その脳天に真っ直ぐ叩き込んだ。
そんなに重くなさそうなロロンでも、纏った鎧の重量分の衝撃力が叩き込まれ――男の顔面が破裂!
「ヤッタ! ……アァァ!?!?」
頭の前半分が吹き飛んだ男はグラっと後ろ向きに倒れながら――もっと破裂!
飛び散る鮮血と肉片のうち――肉片が! ロロンに!!
まだあの呪い生きてたのか!?
「――ッ!!」
ロロンの体中に肉片が! ああ、ヤバい――!!
「――破ッ!!」
ロロンが叫んだ瞬間に、彼女を包んでいた鎧が弾けた。
その鎧は、キショ肉片ごと吹き飛ぶ。
ああ! ダルトンさんが言っていた対処法か、よかった~!
「んなっ!?」
よくない! 男の死体? から新たな肉片が飛び出した!
ロロンは後方に飛ぼうとしているけど、間に合うかわかんない――ならっ!!
アフターバーナー点火! カッ飛べ親分!!
「カワイイ子分ニ何シテクレトンジャ! コノ変態! 特殊性癖!!」
ロロンと肉片の間に割り込んで、ヴァーティガフルスイング!
まず飛んできた肉片を砕いて飛ばして――魔力オン!
「ドッセイ~!!」
残った男の成れの果てに、ヴァーティガを振り下ろして振り上げて何度も振り下ろす!
餅つきがしたいからこの世界でもモチ米を探さないと……なんて現実逃避をしていたら、かつて命だったものがピンクのペーストになっていた。
……ふう。
「ロロン、大丈夫!?」
「はいっ! ムーク様ぁ!」
よかった、無傷アルマジロ!
あんなキショい肉片にやられたら大変だもんね。
「おありがとうござりやんす! やはりムーク様は最高の親分でがんす~!」
ピョンピョンするロロンのお顔は真っ赤……興奮しすぎでは?
しかしボクも負けておられぬ!
「最高ノ子分ガ何カ言イヨルワ! コヤツメハハハ~!!」
「わひゃあああ!?!?」
ピョンピョンロロンを受け止めてグルグル横回転!
はっはっは! 回れ回れメリーなんちゃら!
『(……判定を!)』『(ノットギルティ! なんやかや言ってロロンちゃんも大興奮だし! 許す!)』
――その時虫に電流走る。
「イカン! イセコサントダルトンサンガ!」
ホッコリしてる場合じゃない!
ロロンをこのまま抱えてダッシュだ~!!
「あばばばば!?!?」
・・☆・・
「ご……ぁ……む、ねん……」
「――種の割れた手品などに縋る故そうなる。我らに牙を剥いたことを悔やんで死ね」
はわはわ言うロロンを抱えて到着したら、もう戦いは終わっていた。
無傷のイセコさんの前には……両手両足を落とされてダルマになった男が転がっている。
体中に半透明の鎖が巻き付き、クナイが所狭しと突き刺さった姿で。
「――弾けよ!」
クナイが爆発し、煙が晴れた時にはもう炭化した肉片しかなかった。
「イセコサン! 無事デスカ!!」
「これはムーク様! こちらは問題ありま……ロロン様はどこかお怪我を?」
あっ、抱えたままだった。
「はわわ……おろ、おろしてくださしゃいぃ……!」
出荷直前のトマトみたいになっちょる!?
「誠ニゴメンンサイ! 訴エナイデクダサイ!」
「う、うったえ……? はわわ、おしょすいごと……!!」
とりあえずロロンを降ろして……あとはダルトンさんだ!
あ! 向こうの方で戦ってる! 援護に行かなきゃ!!
「おうっ!」「おおあっ!!」
ばぎゃん、と凄い音。
二刀棍棒の男の連撃を、ダルトンさんの二刀三節棍が弾いた。
「ちいい! 『すべからく呪われよ!』」
後方に跳び下がった男が叫び、背中が盛り上がって――マントの内側から、のたうつ肉塊が飛び出す! やっぱりキショすぎる!!
「ぬうっ――アァアア!!」
ダルトンさんの三節棍が唸り、殺到する肉片を空中で粉々に砕く!
……凄いけど、動きが速過ぎて援護できる気がしない!
「――馬鹿の一つ覚えば、やめなんせ。此度の顛末を語れば、命ばかりは……」
「舐めるなよ薄汚い獣めが! まつろわぬ者どもよ!」
男はマジギレして、マントを剥ぎ取った。
う、うわわ!? マントの下は革鎧だけど……そこから覗く皮膚は、なんかこう……真っ赤! 綺麗な赤じゃなくてどす黒い血みたいな赤色だ!!
「情けをかけたつもりか――甘いわ、間抜けが!!」
男の体全体が盛り上がり、脈動し、膨らみ始め――
「事ここに至っては是非もなし! 貴様らごと、この地を不毛の呪界へと変えてくれるわ!!」
顔まで盛り上って歪んだ中で、男はとっても性格の悪い笑顔を浮かべた。
絶対に自爆する気じゃん!? そ、そんなことさせるわけにはいかん! 胸ハッチオープン!!
可及的速やかに魔力充填を――
「――遅い!」
だけど、ボクらの誰よりもダルトンさんの動きが速かった。
彼は、一足で男の懐に潜り込んで――飛び込んだ勢いを乗せて、地面スレスレから唸るアッパーカットを放った。
「っぎぃ!?!?」
膨らんだ男は、その衝撃で顎を破裂させながらちょっと浮く。
「――『我・応・雷』ッ!!」
浮いた男の前で構えたダルトンさん。
聞き馴れない詠唱と同時に……三節棍が稲妻に包まれた!
「『雷帝よ、我に力を』ッ!!」
――次の瞬間には、2本の三節棍が光り輝く帯と化した。
不可視の速度で暴れ回るそれらは――男の体を瞬く間に削り飛ばした。
「き、きさっ――」
何かを叫ぼうとした首が最後まで残って――稲妻と一緒に『消えた』
「――天魔、覆滅!!」
動きを止めたダルトンさんの前には、もう何も残ってなかった。
少しだけの肉片が、感電したみたいに焦げているだけだった。
「……ス、スゴ~……」
「はわぁあ……ワダスも見たごとねえ、凄まじい技なのす……!」
ボクとロロンは、揃ってポカンと口を開けるだけだった。
強すぎ……大人のアルマジロ強すぎ……
「雷神呪の並列詠唱……なんと、凄まじい……!」
イセコさんがなんか格好いいこと言ってる!
・・☆・・
「戻ったのナ~」
「たろいま、たろいま~!」
それからしばらくして、リーチミ方面からアルデアとアカが飛んできた。
念話でSOSもなかったから心配してなかったけど、見たところ大怪我はしていない。
よかった! よかった~!
「オカイリ~!」「きゃーはは! あはは~!」
飛び込んできたアカを受け止めてナデナデ。
よーし、やっぱり怪我はない……ムムム! ストックした魔石がほぼない!
ってことはいっぱい頑張ったんだねえ……
「ハイアーン」
「あんぐ、おいし、おいし~」
魔石を口に放り込むと、アカは頬を押さえて喜びの謎ダンス!
「アルデア様! 首尾はどうですか!?」
「ん、逃げることだけを考えていたようでナ。てんで相手にならんかったのナ……走る速度は確かに速かったけれど、空を飛ぶ我々には敵わんかったのナ~」
そう言いながら、アルデアは母性の隙間に手を突っ込んで……布に包まれた何かを取り出した。
なんじゃろアレ、見たところラグビーボールくらいの大きさに見えるけど。
「最後まで逃げた男がコレを持っていたのナ。イセコさん、これが何かわかるのナ?」
アルデアが布を取ると……中から出てきたのは、紫色に輝く楕円形のでっかい宝石だった。
ふわー! お高そう!!
「なんっ……!? そ、それは!!」
「じゃじゃじゃ!?」
イセコさんとダルトンさんが揃って驚愕している。
なんなん、そんなに価値のある宝石なんですか?
「ソレは――『ディナ・ロータス』の卵です!」
……なんて???




