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第55話 ドリーミン謎虫。

「――踏みとどまれ!」


 ……あ、これ夢だ。

だってアレだもん、リーチミとふいんき違いすぎるもん、状況的に。

……そしてトモさんの呆れた口調のツッコミもないもんね。

ということは、夢確定ですなあ。


「第四区画! 近接戦に入ったとのこと!」


「援軍の要請は!?」


「『必要ない、本隊に備えられたし』とのこと!」


「ほォ……吹きよるわ、小僧共!」


 真っ赤な光景だ。

どこかが、いやどこもかしこも燃えている。

遠くの空が真っ暗だから、今は夜なんだろうけど……

瓦礫の隙間から燃え上がる炎で、まるで昼間みたいに明るい。


「来ます! 距離300レーダ! 数、無数!!」


「焦るな! 盾兵、構え! 魔導兵、詠唱準備!!」


 ボクの目の前には、いつか見た黒い全身鎧を着込んだ一団がいる。

その中で、真っ赤なマントを翻している指揮官っぽい人が……蒼く輝く剣を真っ直ぐ正面に突き出していた。

……なんかあの剣、見たことあるような~?


「ここを抜かれるわけにはいかん! 各員! 己が責務を果たせ!」


「「「ハッ!!」」」


 この黒鎧……黒騎士の一団の正面。

崩れた城門っぽい所の瓦礫を乗り越えて、真っ黒な津波が押し寄せてくる。

いや、あれは津波じゃない――!


「斥候の報告通り『地走』――魔導兵! 聖術式起動準備!」


「「「『聖なる哉、天上の輝きよ。聖なる哉、千変の光纏いし光剣よ』‼」」」


 指示を受けて詠唱を開始した黒騎士たちの頭上が歪み、魔法陣が現われた。


「まだ撃つな、まだだ! まだ……!」


 津波に見えたのは……なんだろう。

アレは、全身を黒い装甲に覆われた……足がいっぱいある、蛇!? なんだあれ、トカゲでもない!

ウワーッ! 気持ち悪い! ヌルヌルでテカテカだ!?

ゴキブリみたい!? アレがジバシリってやつ?


 津波に見えるくらい大量のジバシリが、声も揚げずに突進してくる。

お、大きい……あのキショいの、長さ3メートルはあるぞ!?

それが、ザザザザ! って変な音を立てて、まっずぐこちらへ走ってくる。


「まだ……今ッ!!」


「「「『吾が敵を撃ち滅ぼせ! 喰らいつく剣たちよ』‼」」」


 詠唱が一斉にされて、魔法陣からキラキラ輝く半透明の剣が飛んでいく。

それは、津波の手前まで飛んで行って――分裂した。

無数からさらに無数に増えた剣が、魔物の群れに突っ込んで突き抜けていく。

見る角度によっては虹色に輝くそれらは、あっというまに魔物をズタズタに引き裂き始めた。

ドリルみたいに回転しながら、または円盤みたいに。


「「「GGGBGBBGGGGGGGGGGGGGGGGGGG!?!?!?」」」


 魔物たちは、ガラスをひっかいたような悲鳴を上げて、空中にどす黒い色の血をばら撒いている。

夜ってのを除いても、墨汁みたいな色だ!


「――前方、奥! 新手! 『豚』!!」


「来たか……!」


 光る剣が迫りくるジバシリを吹き飛ばしまくって近づけないようにしていると……後ろの方に動きがあった。

明らかに、ジバシリよりも何倍も大きい! 縦に!


「魔導兵は『地走』を優先しろ! 後方……立ち上げは!?」


「暖気十分!」「魔導塊への供給、問題ありません!」「いつでも行けます!」


 わわ!?

今までは前ばっかり見てたから分かんなかったけど……なんか、黒騎士の後方にもおる!

でっか……3メートルくらいの……なんだあれ、騎士鎧みたいな……ロボット?

胸の部分がガバーっと開いた鎧が……5体。

膝立ちの姿勢で並んでいる。

こんな場面じゃなきゃ、とっても格好いいのになぁ!?


「――『地走』は壊滅! 『豚』が接近!!」


 見れば、ジバシリは揃ってバラバラになって……その後ろから、黒い影がドンドン近付いてくる。


「畜生! 『鎧付き』だ!」


 顔を見れば黒オークに見えるけど……でも、あの時戦った連中よりデカい!

あの時の、オーク将軍の部下? と同じくらいのガタイだし、なにより硬そうな鎧を着込んでいる!


「魔導兵! 足止めを行え! 盾兵、耐えろ!」


「「「応ッ!!!!」」」


 魔法がバンバン飛び、 オーク? に着弾を繰り返している。

だけど、全力ダッシュが小走りくらいの速度に落ちただけで……全然効いてる様子がない!


 そして、その速度で近付いてきて――持っている、トゲトゲ付きの棍棒を一斉に振り上げた。

見た目通りのパワーファイター!


「ガアアアアアアッ!」「グオオオオオオオッ!」「グルアアアアアアッ!!」


「ぐううあ!」「おのれぇ!!」「そんなもんかァ! 豚野郎ォ!!」


 とてつもない重い音が響いて、最前列の兵隊さんがぶん殴られた。

だけど、全員が重厚な盾を構えてそれを防いでいる。

うわ、黒騎士さんたちの足首くらいまでが地面に埋まってる! なんて衝撃なんだ!


「魔導兵、左右へ!」


 指揮官さんが、赤いマントを翻して叫んだ。

蒼く輝く大剣を握ったその人の後方には――さっきの騎士ロボが並んでいる。

兜の奥をオレンジ色に輝かせて、魔力の粒子を呼吸みたいに漏らして。


「魔装機兵! 総員、抜剣!!」


 その声に、騎士ロボが背負った板みたいなものを一斉に引き抜いた。

抜かれた長方形のそれが、魔力の輝きでオレンジ色に染まっていく。

あれって剣なんだ!


「励起問題なし!」「魔力循環、良!」「反応、臨界点!!」


 指揮官さんが小さく頷いた。

そして、指示を出す。


「盾兵! 待たせたな――突き放せ! 今ァ!!」


「「「応ッ!!!!」」」


 オークの攻撃を受け止めていた黒騎士たちが、一斉に盾を振った。

攻撃を返されて、オークたちがたたらを踏む。


 すう、と。

指揮官さんは息を吸った。



「――全力、突撃! 我に続けェ!!」



 指揮官さんが、剣を握って走り出す。

蒼い輝きがどんどん強くなって、光の軌跡が目にくっきり残る。

その後ろを、重さを感じさせる動きで騎士ロボが追った。


「――このまま斬り込む! 横槍を封じよ!」


 指揮官さんはあっという間に最前列に到達して、盾をジャンプで跳び越えた。

そして、その先にいたオークに剣を振る。


「そこをどけェ!!」「――ッガァア!?!?」


 蒼い剣が、オークの頭を兜ごと両断。

そのまま、剣はお腹の辺りを通過して――股から突き抜けた。

な、何ちゅう切れ味だ!


「――オオオオオオッ!!」


 開きになったオークの間を通り抜け、指揮官さんはスピードを緩めずに走る。


「ギャアッ!?」「オゴアア!?」「ギャババ!?」


 そして、後を追おうとしたオークたちは……追い付いてきた騎士ロボにザクザク斬られている。

あのオレンジの剣もかなりの切れ味みたいで、鎧も豆腐みたいに切れている。

ボクのチェーンソーとか隠形刃腕でもあんなに斬れないだろうな……


 指揮官さんは、オークの群れを雑草みたいに切り裂いて走っていく。

騎士ロボも大暴れしながらそれを追っていて、魔導兵? さんたちも援護射撃。

背中を撃たれて、オークたちは半ばパニックになっている。


「――ガアアアアアアアアアアアアッ!!」


 大きな声が聞こえた。

大気がビリビリ震えているような気がするくらいの、とんでもない大声。


「やはり『長』がいたか」


「なあに、騎士長ならば問題あるまい」


「無駄口よりも魔法を叩き込め!」


 周囲にいる黒騎士さんたちがそう言っている。

騎士長……やっぱりリーダーなんじゃないか!


「――その声に見合った強さだといいがなァ!!」


 オークを切り倒しながら走る騎士長さんの前方に――今までのオークよりも、大きな影!

周囲を護衛っぽいオークに囲まれた、とっても頑丈そうな鎧を着たオークだ!


「すぅう――」


 走る騎士長さんが、息を吸い込む。

それと同時に……魔力が、爆発するみたいに放出された!


「――――――ッ‼‼」


 たぶん、何かの詠唱をしたんだと思う。

なんか、ボクの耳にはノイズにしか聞こえなかったけど……なんでだろ?


 とにかく、その詠唱が終わった頃。

騎士長さんの周囲に、何かが纏わりついているのが見えた。

なんだ、アレ――あれ!?

なんか、大きくなって……違う! 騎士長さんの鎧に追加パーツが付いてるんだ!?

なにあの魔法! ボクも使いたい!!


「おおおおおおおおおおおっ!!」「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 がぎぃん、と凄い音が響いた。

騎士長さんが、剣でオークと打ち合っている。

オークの得物は……でっかい鉈みたいな剣だ。


 2人は切れ目なく斬り合いを続けている。

その間にも、騎士ロボが大暴れしてオークはどんどん数を減らしていく。


「――隙ありィ!!」


 デカオークがそれに気を取られた一瞬で、騎士長さんの剣がその胸に突き刺さった。

中ほどまでが一気に突き込まれて、背中から飛び出している。


「ガアア!? ガア!? ギィイイ!?」


「オオオオオッ!! ――――――ッ!!!!」


 また、ノイズで隠された詠唱。

剣から、尋常じゃない魔力がデカオークに注ぎ込まれていく。

そして――その体に、見覚えのある蒼い線が、傷のあたりからじわじわと広がっている。


 あれって! じゃあやっぱり、騎士長さんの持ってる剣は――



「――砕けよ! 弾けよ! とこしえに滅びよ!!」



 目の前が見えなくなるほどの、蒼い光が一面に広がって――



・・☆・・



「ムニャァ……ア?」


 あれは……宿屋の天井じゃな?

そしてここはフカフカベッドの上……


「すみゃあ……ふみゃあ……」


「チュチュピ……チチチ……」


 枕元には、アカとピーちゃん。

アカはボクのほっぺたに涎をこぼし、ピーちゃんはフカフカ枕に突き刺さって寝ている。


 ……なんだ、ドリームか。

前にも見たような感じだなあ……


「んやぁん……くるし……」


「ぐおごごご……」


 反対側。

超絶に寝相の悪いヴァルの足が、ラーヤのお腹に乗ってる……

かわいそうだからどけてあげないと……


 しかしまあ、変な夢だったなあ……でもあの騎士ロボ、格好よかったなあ。

どっかのダンジョンに埋まってないかなあ……すやぁ。



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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございました!ムッくんそれただの夢やない。ヴァーティガさんの意識とシンクロしてるんやー。
ギガンティックな魔法はまだむっくんには使えないからお預け!って事でしょうねぇ。 ロボもどっかに一体くらい残ってると良いですねー。
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