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第35話 シャフさんの教会。

「メイヴェル様の次はムロシャフト様ナ? ムーク、お前いくつ主神があるのナ」


 アルデアが呆れたように言った。

いや、ようにじゃなくて完全に呆れてるね……


「イイノイイノ、神様ニハイクラデモ帰依シテイイノ」


 ボクは推定日本人だから、神様をいくつも拝むことに違和感はない。

でもこの世界の人……特にそらんちゅやむしんちゅは、『これ!』という神様を決めて祈るものらしい。

まあ、主神同士の付き合いというか、『同じ陣営』とされているならその限りではないみたいだけど。

ボクみたいにジャンル違いの神様を拝むのは変わり者というか『節操がねえなお前……』みたいな扱いらしい。


「ロロンもそう思うのナ?」


「じゃじゃじゃ……ムーク様は見返り目的でお祈りされているわげではねえ様子。問題はねがんしょ」


 ジト目になるアルデア。


「そうだった……ロロンはムークのことになると基本的に肯定しかせんのナ。できた子分なら諫言も必要なのナ~?」


「しょっ! しょしょ、しょげなわげでは……!」


 からかうアルデアに、顔を赤くしてわたわたしているロロン。

微笑ましい……種族は違うけどまるで姉妹だね~。


「おやびん、あれ? あれぇ?」


 肩にいるアカが前方を指差す。

反対側にいるピーちゃんは、景色が珍しいのかせわしなくあたりを見回している。


「ソウソウ、アレ」


「きれえ! きれえ~!」


 確かに、綺麗!

ボクの視線の先には……ヴェルママの教会とはまた違うけど、白壁で造られた大きな教会がある。

そう……アレはリーチミにある唯一の教会。

シャフさんの奉られている? 『慈愛教会』なんだ。

宿から歩いて5分くらいの所にあるから、あっという間についたねえ。


 アカの進化が終わり、今日はオフの日。

じゃあ何をしようか……って考えてて、教会に行くことを思いついたんだよね。

本当は昨日にでも行くつもりだったけど……アカのイレギュラーがあったからねぇ。


 ピーちゃんは、飼い主のさっちゃんさんがお世話になったから絶対行く! ってついてきた。

アカはそこら辺はよくわかってないみたいだけど、ボクが行くならついてくるって理由。

そして、家事が終わったロロンを誘い……アルデアはなんか普通についてきた。


 まあそんなこんなで、ボクらは連れだってシャフさんの教会に行くことになったのだった。

残りの皆は宿でお留守番です、デルフィネさんたちは多分まだ寝てると思う。


「オ~……」


 リーチミらしく、教会の敷地には綺麗な花畑がある。

手入れはとても行き届いているようで、見たことはないけどなんか貴族様の庭園みたいだった。


『ちなみに慈愛教会では複数の女神様を奉っています。他の街ではムロシャフト様以外の女神様も見れますよ』


 トモさんペディアたすかる!

へえ~、そうなんだ……神様で色々違うんだなあ。


『そうですね、逆にこの西国にある【ウォルド】という国では『力の女神』様一強といった状況ですよ』


 ち、力の女神様……?

ど、どんなん?


『豪快でとても美しい方ですよ。身の丈を超えるハンマーとそれに連結された鎖がトレードマークです』


 女神……女神ってなんだろう。

戦神の間違いじゃないんだろうか。


『おっとむっくん、それは禁句です。前に戦神の一柱がそのような発言をしたところ……笑いながら殴り飛ばされて2キロメートルほど水平に吹き飛びました』


 一生言わないことにしておこう。

おそろ、おそろし……!

まあ会わないとは思いますけどね。

一寸先はシャドーですが。


 と、脳内で戦々恐々していると……教会の入口に立っているシスターさん? がこちらに気付いた。


「まあ、まあまあ~♪ いらっしゃいませ~♪」


 藍色っぽいスラッとした手足のむしんちゅ女性だ。

背が高くって、スタイル抜群だね! とっても美人!

黒い目が宝石みたいで素敵!


 そんな彼女は、嬉しそうにこちらへやってきて……ちょっと待って!?

シスター服のスカート部分が、よく見たらチャイナドレスくらいスリット入ってる!?

わ、わわわ……せ、セクシー!?


『むしろウチではちょい露出度低めってカンジかな~?』


 シャフさんとこはどうなってんですか!


「なんと、可愛らしい信徒の方ですね~♪」


 だけど、妖精にはメロメロらしい。

さすが妖精の魅力は素晴らし――


「まあ、雄々しくてよいお顔。お肌もツヤツヤで……はぁああ……♡」


「ボクゥ!?」


 シスターさんは妖精じゃなくて、ボクの頬に両手を添えてうっとり呟いている。

か、カワイイ要素はどこにもないんですけお!?


「じゃじゃじゃ!?」


「こにちわ、こにちわ~!」『こんにちわ! 私はピーちゃん!』


 振動しているロロンを尻目に、妖精たちは元気に挨拶と自己紹介。

彼女の周りを飛び回っている。


「まあ~可愛らしい! こんにちは、私はハリコです~♪」


 シスター……ハリコさんはアカとピーちゃんを撫でたり頬ずりしたりとっても嬉しそう。

まあ……ビックリはしたけど絶対善人だね……


「あなたも可愛らしいですね~♪」


「はわわわわ!?」


 そしてロロンのほっぺもスリスリしている。

アルデアはこのノリが苦手なのか、ススス……って距離を取った。

な、なんというか……今までの教会とはまた毛色が違う!


『ま、狭いとこだけど入って入って』


 シャフさんが失礼! 自分の教会でしょ!



「こちら、慈愛の女神が一柱……女神ムロシャフト様でございます」


 色々あって案内された教会内。

そこは、ヴェルママの教会とは違ってながーい椅子が沢山用意されていた。

そしてハリコさんが手で示した最奥には、ステンドグラスの光に照らされる大きな女神像があった。


『まー! 綺麗な女神様! さっちゃんを助けてくれたのはこの方だったのね!』


 ボクへの内緒念話を放ちつつ、ピーちゃんは肩でデュルンデュルン揺れている。


「きれえ! きれえ!」


 他に信者さんはいないので、アカも少し大きな声で興奮している。


「じゃじゃじゃ……お優しくもあるし……」


「お強そうでもあるのナ……なんとも、メイヴェル様とはまた違った……」


 ロロンとアルデアがぽそりと呟いている。


 シャフさんは、もといシャフさんの女神像は……

ふんわりした柔らかそうな長い髪を靡かせて、ニッコリと微笑んでいる。

着ている服は、ハリコさんと同じような感じなんだけど……ええと、お腹丸出しだ。

そして、そこまで入れてもいいの? ってくらいスリットの入ったロングスカート。

……信者さんに盛らせるって言ってたけど、盛る必要が絶対にないくらいの……ボン! キュッ! ボン! て感じ。


 それと……クソデカモーニングスターを持っている。

持っているっていうか、ニコニコしながら振り上げている形だ。

こわ……あれがいつぞや言ってたメルテなんとかちゃん?


 とっても綺麗でナイスバディだけど、同時に攻撃力も超高そう……


「アノ武器ッテ……」


 横のハリコさんに聞くと、彼女はにっこりして……どこからか同じようなものを取り出した!?

ヒエーッ!? 殺さないで!?


「あれは神器『メルテヴォルグ』、愛を阻まんとする悪しきモノを叩いて砕いて微塵と化す素敵なモノです♪ こちらはレプリカですが強力ですよ~?」


「サ、サヨウデゴザルカ……」


 なんにも悪いことしてないのにヒュっとなっちゃった。


『んで、どーよむっくん。あーしの素敵バディを見た感想は?』


 いや、うん……(色々な意味で)予想以上ですよシャフさん……

とってもお綺麗ですねえ、ありがたや、ありがたや~……


『はーん、言われ慣れてるし~?』


『(物凄い勢いで蕎麦を啜っています。照れ隠しでしょうかね)』


 ……まあ、喜んでくれてるみたいね。


 とりあえず、妖精たちと一緒に手を合わせておく。

しっかり細部まで見つつね! 木像のために!


「ナムナム」「にゃむむ~」『オンムニムニマカムニシャカムニソワカ~……!』


 ピーちゃんの格好いいお経がいつもより圧強めだ!

さっちゃんさんがお世話になったんだろうしねえ……


『むほほほ! きよるきよるし~! ビンビン伝わるし~! あ~たまんね~!』


 ……無茶苦茶テンション高いや。

まあ、喜んでいただけてなによりですわよ、ハイ。

それはそれとしてシャフさん! これでおフィギュアが作れるよ~!


『え~? この上木像まで作ってくれんの~? 別に無理せんでもいいよむっくん! 1日1体くらいでいいんよ~?』


 強欲ッ!?

ボク木像だけ作る虫になっちゃうじゃん!?

仏師虫になっちゃうじゃん!?


『ムロシャフトぉ……あまり調子に乗らぬことですよ……』


『ピエッ!? ちょっと! シャモジはそんな用途に使うものじゃないっていうか……デカくね? えっなにそのシャモジ……鈍器?』


『メイヴェル様、丁度よい所に。こちら、自信作のボロネーゼでございます』


『ゾルゾル……スバババ……』


 どうやらボロネーゼで戦争は終結したようだね……ふう、よかった!


「祈っている姿も素敵ですねえ……♪」


「ヒャワーッ!?」


 目を開けたらすぐそこにハリコさんが! ハリコさんが!?

慈愛の教会ってみんなこうなの~?


「あれくらいグイグイいく方がよいのやもしれんナ? ロロン、今晩あたり2人でからかってやるのナ……? 何故丸まるのナ?」


「はわわわ……破廉恥……おしょすいごと~……!!」


「……幼児ナ?」


 なんで丸まってんのロロン!?

嫌な事でもあったの~!?



「また、いつでもいらしてくださいね~♪」


「おねーちゃ! あいがと、あいがと~!」『素敵なお土産をありがとう! 素敵なシスターさん!』


 ハリコさんに見送られて、ボクらは教会を出た。

アカとピーちゃんは、2人で1つの袋を持って喜んでいる。

中身は焼き菓子だそうだ……優しいねえ。


「ムーク、断ってよかったのナ? 意外と高いのナ、アレ」


「拙者ニハ必要ゴザラヌ……」


 ボクに差し出された精力剤は丁重にお断りしました、まる。

なんでお土産に精力剤!?

『この場で試されても~♪』ってどういうこと!?

シャフさんち爛れてなぁい!?


『普通っしょ?』


 そんな普通はノーサンキューでしてよ!!


「破廉恥……破廉恥……」


 何故か気絶してしまったロロンを背負いつつ、ボクは慈愛教会についてよくわからない感想を抱くしかなかったのだ。

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― 新着の感想 ―
慈愛・・・慈愛とは一体・・・ しかしこれでおひい様、ヴェルママ、シャンドラ様、シャフさん。 四女神の像を作れるようになったのか… コンプリートまで先が長い!
ムロシャフト様!入信しました!今私入信しました!更新ありがとうございます!ムロシャフト様!ムッくんいいなぁ⤵︎モテテ。まぁ、その分苦労の数がカンストしてますが。トモさん食堂、うちの会社の前にできないか…
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