第34話 アカの進化!
『むっくん、むっくん起きて!』
チュチュン、と声がして……顔面に衝撃!
こ、この感触は……!
「ピーチャン、オハヨ……」
ピーちゃんが、チュンチュン鳴きながらボクの顔面で飛び跳ねている。
ううむ、今日も素敵な目覚めですね……
『……どしたん? なんかあった?』
『アカちゃんのピカピカが収まったわ! 収まったわ~!』
なんじゃて!?
ボクはすぐさまベッドから跳び起きた。
外は薄明るい……ってことは早朝か!
浴場でヴィクセンさんと会ってから、今は翌日。
お仕事を一緒にすると約束して、宿の美味しい晩御飯を食べて……グッスリ寝て、起きた!
『アカちゃんの進化が終わりましたよ』
トモさんの声を聞きながら、テーブルの上に安置したアカの方へ行く。
「ふわぁあ……おはようごじゃりやんしゅ……」
あ、ロロンも起きたみたい。
アルデアは……当然寝てる。
夜になってお風呂に行って、その後ベロベロになって寝たんだよね……お風呂でお酒ガブガブしたらしい。それ死ぬぞ~?
「ムーク様、ロロン様、これでお顔をお拭きください」
完全に起きているイセコさんが、濡れタオルを差し出してきた。
一緒に旅するようになってしばらく経つけど、この人が寝てるところ見たことないんよね……
誰よりも遅く寝て、誰よりも早く起きるんだもん。真面目……!
「おもさげながんすぅ……むももも」
「アリガトゴザイマス……フモモモ」
ふはあ、スッキリ。
さて、テーブルの上のアカは……起きてる! 毛布がもこもこしてる!
「アカ~?」
「むいむいむい……おやびん、おやびぃん! でれない、でれなぁい!」
おっと、出口がわかんなくなってるみたいだ。
ずっと見てたいくらいカワイイけど、さすがにそれは可哀そうなので……救出!
「オハヨ、アカ。オ腹スイテル?」
「おはよ、おはーよ! すいてる! すいてるぅ!」
めくった毛布から、アカが元気よく出てきて……ボクの体をよじ登ってきた。
「ハイ、ドウゾ~」
バッグから取り出したパンを渡す。
昨日買っておいた硬いパンだけど、この子なら大丈夫だろう。
昨日飲んだ花蜜も完備しております、ハイ。
「じゃじゃじゃ、アカちゃん。ちくっと変わったのす!」
「一晩でこのように変化するとは……興味深いですね」
ロロンとイセコさんが目を丸くしている。
『格好よくなったわ! 色も素敵よ~! 素敵だわ~!』
アカとは反対の肩で、ピーちゃんがテンション高く飛び跳ねている。
「あむあむあむ……」
一生懸命パンを齧っているわが子分、アカ。
彼女の体には、昨日まではなかったものがいくつかあった。
全身の装甲は大まかには変化していないけど……前よりも流線形というか、空気抵抗が少なそうなツルっとした感じになってる!
ミサイルスロット? の数は増えてないけど、それも体に合わせるようにツルっと洗練された形だねえ。
大きく変わったのは、羽……じゃなくて、2対の羽の下部分の、さらに下。
そこに……なんて言うのかな、腰の側面から長い翼が膝のあたりまで伸びている。
数は2枚で、羽じゃなくて『翼』だ。
元々あったトンボみたいな羽じゃなくって……戦闘機みたいな紅い翼が生えている!
アレだ、アニメのロボットについてるスタビライザー? みたいなアレ!
「んにいぃ……むぐむぐ」
今、ちょっと背伸びしたアカ。
そうするとよく見えるけど……まだ新たな器官がある。
上側の羽の下、人間で言うと肩甲骨よりちょっと上あたり。
そこに……なんて言うのかな、でっぱり? がある。
盛り上がった骨とかそういうのじゃなくって……台形の、よくわかんない器官だ。
これも、薄ピンクの装甲と違って紅いからよくわかる。
元々あった装甲に追加パーツが付いた感じ……?
とりあえずトモさん、この隙にスキルおせーて!
『はい、それでは表示します』
ブンっと、目の間に現れるスキル表。
そこには――
・個体名『アカ』
・保有スキル
『念話』『念動力』
『雷撃魔法』『火炎魔法』
『衝撃・魔力反転装甲』
『魔力吸収最適化』『魔力再生(小)』
『思念誘導式魔力弾・多連装』『魔素凝縮光砲・連装』
『ハイ=マニューバ』『魔導翼』
……増えてるゥ! なんか格好いいのが増えてるゥ!
物騒な名前がなんか、増えてるゥ!?
トモさん! 説明、説明おなしゃー!
『朝からテンションが高いですね……では、順を追っていきましょう』
はぁい!
『ではまずは『魔力再生(小)』……これはですね、大気中の魔力を吸収して回復するスキルです。ピーちゃんが普段やっているのと同じですよ、もっともまだ発現したばかりなので回復量は微々たるものですが』
い、いいな~!
永久機関じゃん! いいな~! ボクも欲しい!!
まだそんなに強力じゃないだろうけど、それでも羨ましい!
『そして次は……『魔素凝縮光砲・連装』ですね。これは体内の魔素を凝縮して放つ……むっくんの電磁投射砲の簡易バージョンのようなものです。言ってみれば速射砲でしょうか? 誘導性のない光線を発射する器官ですね、両肩にあるのがそれですよ』
キャノン! アカキャノンが生えたのか!
ボクの電磁投射砲よりも使い勝手よさそう……!
『最後は『魔導翼』ですね。これは、魔力を込めることで飛行を安定させたり、機動力を上げたりする器官のようです。アカちゃんの飛行能力がさらに向上しましたよ』
お、おお……ボクも進化してちょっとは上手く飛べるようになったと思ったらさらに引き離された……
なんというかわいく有能で素敵な子分よ……
「花蜜ドウゾ~」
「なにしょれ! んぐ、んく、んく……」
ストローで花蜜を飲むアカ。
わー、目がキラキラしててかーわいい!
「おいし! おいし! おやびん、おいし!」
「ンフフフフ……アカ、マタ格好ヨクナッタネエ。イイコイイコ~」
花蜜に感激して頬を擦り付けてくるアカを撫でる、撫で~る!
進化しなくてもかわいいし、かしこいけどね~!
「んへへぇ、えへへぇ……アカ、おやびんのおてつだい、がんばゆ、がんばゆ~!」
「ハアアアアアアア……ナンコノ素敵ナ子分……! ハアアアアアアアア!!」
「きゃーはは! あははぁ! んふぅ! あははぁ~!」
静電気が発生するくらい撫でちゃろ! 嬉しいので!
ピーちゃんとロロンも撫でちゃろ~ゥ!!
『うっふふ! うふふ! くすぐいったいわ~!』
「はわぁ!? じゃじゃじゃ……」
あー今日は朝からなんて素敵な日なのだ!
「早朝からやっかましいのナー!」
「ハギャブ!?!?」
アルデアの投げた枕の角が! 角がボクの目に的確に!!
グエェ~!?!? 地味に痛い!!
・・☆・・
「ムークさん! 今日のサラダは美味しいわよ! まあ毎日美味しいんだけどね!」
「こっちのパンも自信作よ! 花蜜を練り込んでフワッフワで柔らかいんだから!」
「スープはアタイが作りました~! ミルボアの骨から出汁をとった自信作だよ!」
この宿を経営している三姉妹さん。
彼女たちは、朝からとっても元気だ。
「おねーちゃ、おいし! おいし~!」
『サラダドレッシングに混ざった木の実がとってもいいアクセントよ! 歯ごたえが面白いわ~!』
妖精たちも負けずに元気!
特に進化明けのアカの食欲が、すごい!
起きてすぐにクソデカフランスパンを丸々1本食べたんだけども。
「オイシイネエ」
「んだなっす! 特にパンがふっくら香ばしくて……さぞいい窯があるんでやんしょ!」
「野菜の下処理も素晴らしいですね。これなら首都でも問題なく店が出せるでしょう」
ロロンも、イセコさんも高評価だ。
そう言うってことは、やっぱり首都には美味しい店が多いんだろうねえ。
「ンムム……朝摘みのポプルとレパラ、控えめに言って最高ナ……!」
すっかり覚醒したアルデアは、なんかサラダをものすごい勢いで食べてる。
お肉も好きだけど、野菜はもっと好きなんだって、健康的!
……あ、でもお酒はもっともっと好きなんだろうな……うう~ん、プラマイゼロ!
「トーラスサンタチハ?」
「昨日の疲れ具合だと、まあ昼過ぎまでは起きてこないのナ。宿に言って軽食は用意するから、今は寝かせてやるのナ」
そうだねえ、無理もないか。
よく気が付くねえ。
「アルデア、優シイネエ」
「私はいつ何時も優しく美しく強いのナ? 今更気付くとはやはりムークの目は木のウロらしいナ~?」
ひどいことを言われた!
しかし優しい……? それなら定期的にボクのスネに叩き込まれるそらんちゅキックはなぁに?
あ、睨まれた……手を振っておこう。
「ふふふ、衛兵のこともありますし……トーラス様たちにはごゆるりと体を休めてもらいましょうか。ムーク様たちは明日ギルド依頼を受けるのですよね? 私はここを守護しますので、ご懸念なきよう」
「ワア!アリガトウ、イセコサン! 助カリマス!」
ほんと有能むしんちゅ! ……あれ、ボク依頼受けたこと言ったっけ?
……まあいいか!
「はうっ……! 一切万事お任せを、ムーク様!」
イセコさんの返事がすごいキリっとしちょる……!
やる気が満ち溢れていらっしゃるなあ……!
「ワダスも一層武者働きするのす~!」
ロロンも!?
はぁ~、みんなやる気に満ちているね!
ボクもがんばらんとな~!
『こいつホンマ……アホ虫! ボケ虫! トーヘンボ……あ、これはチキュウのカンサイ地方の方言で超絶有能イケメンっていう意味なんでェ……ちょっと、その見たことないデッカイ剣を収めてほしいかな~って……』
『メイヴェル様、メイヴェル様おやめください! 今トンコツの仕込み中なので!!』
『ッチ、命を拾いましたねムロシャフト……!』
女神様たちもなんか大変だな~……




