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蒼と紅  作者: 久村悠輝
128/129

第128話

 GW連続投稿4日目です。

 連休も本日が最終日、皆さんの笑い納めになればと思います。

 土埃を巻き上げて疾走する6羽のキューニィ。ヴェストアルティケルからヴァイトインゼルへ向かうサファイア達だ。2列縦隊で街道をひたすら西へ向かうぞニンニキニキニキニン。


「なあパール、どうしてヴェストアルティケルにも競売所(オークションハウス)があるのにわざわざヴァイトインゼルまで行くんだ?」


 パールと並走するルビーが問い掛ける。


「街の近くで取れる物とキューニィで2刻掛かる所から運ばれた物、どっちに付加価値が付くかしら」

「そりゃ遠い方だろ…あっ」

「気付いたみたいね。ヴェストアルティケル地方で取れる素材をその地域で売るより遠いヴァイトインゼルで売った方が儲けが大きいわ。けれど輸送の手間を考えれば微々たる違いかもしれないけれどね」

「それでもわざわざヴァイトインゼルへ行くって事はそれ以外にも旨味があるんだな?」


 ニヤリと笑みをパールに向けるルビー。パールは何も言わず微笑みを返して返事にする。

 休憩を挟みつつヴァイトインゼルへ向かっていると大規模な商隊(キャラバン)とすれ違う。大小様々な馬車や荷車が馬に牽かれ運ばれている。荷車からはみ出している爪や牙が見える。おそらく奇襲戦(レイドバトル)の戦利品、土竜(アースドラゴン)がドロップした素材だろう。商隊が東へ向かっていると言う事はヒルマウンテンへ行くのか、それともグルックベルクから北上しリースリビョーナクを経由してプチーツァブラーチへ向かってると思われる。

 やがて長い隊列を組んでいた商隊の最後尾とすれ違い暫く走るとヴァイトインゼルの鯉城(りじょう)が見えてきた。

 城門でキューニィから降り門番へ冒険者カードを見せて城下町へ入った。


「まずは冒険者ギルドでレンタルハウスを借りるわよ」

「今日は泊まっていくの?」

「そのつもり。それともサファイアさんはすぐにヴェストアルティケルへとんぼ返りしたい?」

「それはちょっと遠慮したいかな~」

「でしょ。さ、行くわよ」


 城門から鯉城へ続く大通り、その中程に剣と盾の意匠が刻まれた看板を掲げた冒険者ギルドがある。開け放たれた観音開きの扉を抜けパールはカウンターへ向かった。すっかり顔馴染みになった受付嬢が出迎えてくれる。


「こんにちは、今日はどういったご用件ですか?」


 営業スマイルを浮かべながらマニュアル通りの対応をしてくる。


「一晩レンタルハウスを借りたいのだけど、6人部屋は空いてるかしら?」

「6人ですね、少々お待ち下さい」


 そう言ってカウンター脇に設置されている端末を操作して飽き部屋の状況を調べる。


「はい、空いてます。こちらに冒険者カードをかざして頂けますか?」


 端末をパールへ向ける。その画面へ手の甲から取り出した冒険者カードをかざして自身のデータを登録する。


「ジュエルボックスのギルドマスター・パールさんですね。登録は終了しましたので314号室をお使い下さい」


 恭しく頭を下げる受付嬢。


「少し尋ねたいのだけど、この街で腕の良い骨細工の職人は居るかしら?」


「骨細工…ですか。該当する者は2人おります。1人はどんな依頼も受付ますが人気店な為、予約だけで3ヶ月待ちしてる状態です」

「3ヶ月…ね、とても待って居られないわ。もう1人の方はどうなの?」

「えっと、こちらの方は気難しくて自分が気に入った相手じゃないと決して依頼を受けません。なのでお薦めは出来ないんです」

「ありがとう、良かったら2人がどこに住んでるか地図を描いて貰っても良いかしら?」

「両方…に行かれるのですか?」


 おず…とパールへ問う受付嬢。


「ええ、そうよ。手間を掛けるから今すぐじゃ無くて構わないわ」

「判りました、夕方…いえ7と半の刻まで待って下さい!」


 パールの言葉にプライドを刺激されたのか、受付嬢はそう言い残すとバックヤードへ飛び込んだ。

 その様子を見てパールはクスリと笑うと…


「さ、部屋へ行きましょ。ずっとモンメに乗っていたからお尻が痛いわ」


 お尻の件の真偽はともかく全員が疲れているのは間違い無い。空腹は感じているが今は体力の回復が先決だ。

 廊下の突き当たりにあるキッチンを使いパールはカモミールティーを入れる。ハウスへ戻るとサファイアはベッドの上でペリドットに脚をマッサージされていた。鞍の上にずっと立っていたのだ、両足は棒の様になったのだろう。サイズが小さいのであっという間に終わってしまいごねるサファイアを宥める為にペリドットは背中や肩もマッサージを始めた。そうしてるうちにサファイアは寝落ちてしまい、すやすやと寝息を立てていた。


「少し落ち着いたらパブへお昼を食べに行きましょ。適当に時間を潰して骨細工職人の工房へ行きたいわ」

「まだ説明されてませんけれど、どうしてパールさんは骨細工の職人を探してるんですか?」

「マッドホーンの角を加工して貰うの。ヒルマウンテンの貴族から受けるクエストで必要になるアイテムよ」

「マッドホーンからは幾つか頭骨もドロップしたけどこれも使うのか?」


 レベル上げでマッドホーンを100匹以上狩り数える程しか手に入らなかった頭骨。ルビーはそれをポーチから取り出しカチカチと歯を打ち鳴らす。


「それは時間短縮の為に使う予定よ。上手く行くか判らないけどね」


 そう言って紅茶を一口飲んで喉を潤すパール。


「今回何も覚えなかった」

「? ああ、スキルの事かしら…」


 シトリンの発言にパールは軽く首を捻る。


「多分そうだと思います。もうシトリンちゃん、もう少し言葉を増やさないと皆さん解らないわよ」

「ん、大丈夫。通じた」


 ペリドットの言葉も然したる効果があったのかは謎だがシトリンはパールへ向けサムズアップする。


「それより腹減ったよ。そろそろサファイア起こそうぜ」

「ミーも空腹警報(アラーム)がさっきから鳴りっぱなしですヨ」

「それってただの腹の虫が鳴ってるだけだろ」

「脂肪という非常用エネルギーを貯められないミーにとっては空腹=機能停止を意味するですヨ」

「ロボットは面倒臭いんだな」

「ロボットじゃ無いですヨ、アンドロイドですヨ」

「同じだバカモノ!」


 久し振りにルビーのハリセンがアメジストの顔面を捉える。

 2人が漫才をしてるうちにペリドットはサファイアを起こす。短時間でも眠りの質が良かったのか、サファイアは愚図る事も無く目を覚ました。そして、


「お腹空いた!」


 と、周囲の期待を裏切らない言葉を発した。


     ◇◆◇◆◇


 昼のピークを過ぎ空席が目立ち始めたパブでサファイア達は少し遅めの昼食を摂る。食後のデザートは温暖な気候で育てられたレモンをふんだんに使ったチーズパイだ。パイ生地のサクサクとした食感とほどよい酸味が甘さを引き立たせる絶品だ。

 甘い物は別腹と言うがサファイア達はレモンチーズパイをあっという間に平らげ2枚目を注文した。それも軽く半分を食べた所で冒険者ギルドの受付嬢がパールを見付けやって来た。


「パールさん、お待たせしました。これが骨細工職人のお店の地図になります」

「あら、ずいぶん早いわね。まだ7の刻を回ったばかりよ?」

「これでもヴァイトインゼルのギルド職員でしから、これくらいの事は指定時間よりも早く完成させて当たり前ですよ」


 そう言ってにっこり微笑む受付嬢。さも当然の如く振る舞っているが、地図の書き込み具合や袖口に付いたインクを見ればこの受付嬢がどれだけ必死に地図を書き上げたか想像に難くない。そんな彼女に多めのチップを渡すとパブを出る。


「まずこの大通りに面したお店へ行って見ましょうか」


 パールは地図を片手に大通りを南へ向かう。目的の骨細工職人の店はすぐに見つかった。20畳程の店内に整然と並べられた骨細工を求めひっきりなしに客が出入りしていて人気店なのはすぐに判った。

 パールは近くに居た店員に話し掛ける。


「マッドホーンの角の加工をお願いしたいのだけど、お話出来るかしら?」

「加工の依頼ですね、それではこちらのカウンターで手続きをお願い致します」


 そう言って店員はカウンター嬢へと引き継ぐ。そこで言われた通り書類に必要事項を記入しカウンター嬢へ渡すパール。


「マッドホーンの角の加工ですね。工房へ問い合わせるので少々お待ち頂けますか?」


 そう言ってカウンター嬢はバックヤードへ消える。おそらく奥が工房になってるのだろう。

 サファイア達は待っている間、店内の商品を見て回る。やがて書類を持って戻って来たカウンター嬢は申し訳無さそうに、


「ただいま加工はお時間を頂いておりまして、こちらの加工は半年程待って頂く事になりますが、如何なされますか?」


 ギルドで聞いた話より長い期間を求められパールは「ありがとう、考えてみるわ」と答え店を後にした。


「おいパール、どうすんだよ」

「半年もヴァイトインゼルに滞在するですカ?」


 すたすたと歩くパールにルビーとアメジストは慌てて話し掛ける。


「あまり大きな声じゃ言えないから一度レンタルハウスへ戻りましょ」


 それだけ答えるとパールは視線を前に向け再び歩き出した。

 今回も読んで下さってありがとうございます。コメントや評価を貰えるとモチベーションが向上する…かもしれないので気が向いたらお願いします。

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