第129話
GWも終わり今日から通常投稿に戻ります。
思い付きで始めたGW連続投稿だったのでストックしてた話が枯渇してしまいました。毎週投稿を続ける為にもサファイアには頑張って貰わないと…。
レンタルハウスへ戻ったサファイア達はパールの淹れたコーヒーを手に話が始まるのを待つ。
「皆はさっきのお店、どう感じた?」
パールはそう切り出した。
「お客さんいっぱいだったよね」
サファイアが興奮気味に話す。
「商品も手頃な価格で無難な品揃えだったな」
アゴに手を当てながらルビーは思い出す様に感想を述べる。
「冒険者より一般客を相手にしてるみたいですヨ」
「私は無難過ぎて物足りないくらいでした」
「付与品が無かった」
全員の意見を聞きながらパールはうんうんと頷く。
「私も概ね皆と同じ意見よ。品揃えは悪くなかったけれど良くも無かった。80点商法ね」
「80点」
「商法?」
サファイアとルビーが頭の上に「?」マークを浮かべ首を傾げる。
「100点満点を目指すと気に入る人とそうじゃない人にハッキリ別れてしまいます」
「じゃけぇ程々で止めておく」
ペリドットとシトリンが補足する。
「あの店で買っておけば失敗は無い。そう思い込まされてるですヨ」
「商売としては正しい選択の1つよ。でも私達は冒険者、程々じゃ満足しないし、そんな装飾品に命を預けられないわ」
全員がコーヒーを飲み終わるのを待ちパールはもう一軒へ向かう事にした。が、
「ペリドットさんとシトリンさんは残る?」
「どうしてです? 私も行きます」
「ん」
突然のパールの提案に驚くもしっかり自分の意見を通すペリドット。
「それじゃ死ぬ気でついて来てね」
そう言って不敵な笑みをこぼすパール。早くもペリドットは選択を間違えたかも、と反省するのだった。
◇◆◇◆◇
大通りから3本の路地を跨ぎ奥まった場所に有る工房を目指す。距離にして1キロも無いが辿り着くまでに半刻を要した。原因はもちろんペリドットとシトリンの迷子スキルだ。
少しでも目を離すと突如角を曲がり別の路地へ。パールが先導しているにも関わらず、だ。一瞬の隙を突いて姿を消す。パール達が慌てて探し出し正規のルートへ連れ戻すとまた別の角を曲がる。これの繰り返しだ。終いにはロープをペリドットとシトリンの腰に結え囚人の様に連行された。
「なんか…一見さんお断りって雰囲気ぷんぷんだな」
「でも骨細工の意匠が掲げてあるから商売する気は有るみたいね」
「目的はここなんでしょ? 早く入ろうよ」
サファイアはルビーの言葉を気にする事も無くパールの手を引く。それに引っ張られロープで繋がれたペリドットとシトリンも工房へ連れ込まれる。更にロープの最後を握っていたアメジストも同様だ。
こぢんまりとした工房は一部が店舗の様で幾つか骨細工のアクセサリーが並んでいた。店舗と工房を隔てるのはカウンターで、その奥にはエルフ族の男性が居た。
雪崩れ込む様に入ってきたサファイア達を一瞥すると、
「店は狭いんだ、壊すなよ」
そう言って手元へ視線を落とす。そこには精巧な細工が施された指輪があった。それを見るだけでこの男性の腕が知れた。
「お忙しいところすみません、素材の加工をお願いしたいのですが…」
一歩前へ進みパールが要件を伝える。
「物を見せてみな」
視線は指輪から外さず男性は告げた。
「これです」
そう言ってパールはマッドホーンの角を1対カウンターに置く。
「ヒルマウンテンのクエストアイテムだな。6人分か?」
顔はそのまま視線だけをパールへ向けて男性は問う。
「いいえ、素材はあるので10セットお願いします」
その言葉にサファイア達はぎょっとした表情でパールを見る。
「だったら2日くれ。加工料は1セット15万ケロだ」
今度は男性を瞠目して見るサファイア達。加工の相場は判らないが高過ぎやしないか? とでも言いたげだ。しかしパールは落ち着いた様子で、
「ルビーさん、あれを」
「ん? ああ、これか」
パールに言われポーチからマッドホーンの頭骨を取り出す。
「3つあります。これの買い取りもお願い出来ますか? 1つ5万ケロで」
頭骨がカウンターに置かれた途端、男性の目付きが鋭くなった。ルビーはヤバい物を出してしまったのではと内心ヒヤヒヤだ。
しかしおかしい。マッドホーンの頭骨は4つある。それなのにパールは3つと言った。
「加工料は5千ケロで良い。明日の夕方にもう一度来てくれ」
そう言って男性はパールへ頭骨3つ分の買い取り金を渡す。
◇◆◇◆◇
レンタルハウスへると全員がパールへ詰め寄る。
「パールちゃん、あれってどういう事?」
「加工料が馬鹿みたいに下がったけど、あの頭骨がそんなに価値があったのか?」
「1個タダでくれてやったのはどういう意味ですカ」
「私が持っている頭骨は出さなくて良かったのですか?」
「説明求む」
一気に話し掛けられパールは皆を落ち着かせながら1つずつ答える。
「まずマッドホーンの頭骨はレア中のレア素材で高く取引されてるわ。けれど流通するのは競売所を通した冒険者同士だけよ。だから工房は競売所以上の値段で買い取るしか無いの」
一度そこで区切り全員を見渡し、ここまで理解しているのを確認して続ける。
「競売所を使えない工房の職人達は冒険者の言い値で買うしか無いのよ」
「そこまでして欲しい素材なのか?」
「最初に言ったでしょレア中のレアだって。冒険者が合成加工すると高性能な防具になるのよ。だから1つサービスする事でクエストアイテムの制作に掛かる時間と費用を抑えられたわ」
椅子に座ると長い脚を組み悪い笑みを浮かべる。絶対に見目麗しいエルフ族の女性がして良い顔じゃ無い。
「それにしても安くなりすぎな気がするですヨ」
「それだけの価値が有るアイテムって事よ。それとペリドットさんに持たせている残りの頭骨はヒルマウンテンで売る為よ」
「けど、ヒルマウンテンで売れるって保証は無いよな?」
ルビーが頭を捻り疑問を口にする。
「そうね、通常ならそんなに高くならないわ」
「だったらどうして…」
「通常なら、と言ったでしょ。今後ヒルマウンテンには土竜の素材が流通するはずよ」
「それとどう関係があるの?」
サファイアは首を傾げる。
「ま、まさか…。土竜の素材を加工するにはマッドホーンの頭骨が必要なんだな?」
ルビーの答えを聞き、パールはクスリと笑う。
「正解。私達はキューニィで移動出来るから馬車で移動する商隊よりも速くヒルマウンテンへ行けるわ。例えタワーを攻略してからでも、ね」
「他の素材はどうする」
「ん~、ヴァイトインゼルで売っても二束三文にしかならないからヒルマウンテンの競売所で売った方が良いでしょうね」
「パールちゃんパールちゃん、マッドホーンの角はどうして10セットなの?」
「ああ、それはアタシも気になってたんだ」
サファイアの質問に窓枠へもたれ掛かり腕を組んでいるルビーが乗っかる。
「そんなの決まってるじゃない、ヒルマウンテンの競売所で売る為よ。クエストを受ける地元の方が高く売れるわよ。それより私は競売所へ行ってくるわ。そろそろアメちゃんの弾丸も尽きる頃だろうし、何か掘り出し物が有れば買って来るわ」
そう言ってパールは外套を被り部屋を出て行った。
「さて…ミー達は何するですヨ」
「パブで紙ヒコーキ」
「そうね、それが良いわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今のだけじゃ伝わらないから」
シトリンの意見にウキウキで乗っかるペリドットだがルビー達には何が何やら訳が解らない。
「パールさんが居ないならパブで紙ヒコーキタワーの情報を集めようってシトリンちゃんは言ったの」
「今ので解るか?」
「エスパーかニュータイプじゃないと無理ですヨ」
「むずかしいよ~」
サファイア、ルビー、アメジストが顔を突き合わせコソコソと話をする。しかし他にやる事が思い付かなかった為、5人でパブへ向かった。
◇◆◇◆◇
まだ日没まで時間があるにも関わらず店内は人で溢れている。中にはウエイトレスに絡み、店から摘まみ出される冒険者も居た。サファイア達はひとまず隅っこのテーブルに陣取り情報を集める事にした。
しかしシラフの冒険者は口が固くなかなか情報を聞き出せない。かと言って過度に酩酊している冒険者は酌をしろと言って体に触れようとしてくる。ペリドットは勿論、サファイアにまで手を伸ばす猛者すら居た。
「お待たせ、レンタルハウスに戻ったら居なくなってたから驚いたわ」
半刻程して集めた情報を精査している所へパールが合流した。
「だから書き置きを残しておいたですヨ」
「それで、何か有用な情報は得られたの?」
「タワーは10のフロアから成っているそうです」
パールの質問にペリドットが代表して答える。
「ダンジョンほど広くは無くてモンスターの強さも程々みたいです」
「だったら攻略は簡単そうね」
「ですが、入手出来るアイテムやケロは旨味が無いとか」
「あと、皆、口を揃えて「行ってみれば分かる」なんて曖昧な事を言ってるですヨ」
「行けば分かる…ね。何だか含みが有るわね。良いわ、明後日グルックベルクまで行ってから明朝に紙ヒコーキタワーへ挑戦するわよ」
「競売の方はどうだったですカ?」
話が一段落した所でアメジストはパールに問うてみた。
「アダマンブレットが安く買えたから補充しておいたわよ。後は相場をチェックして動向を探ってみたけれど、手持ちのアイテムで大きな利益が出そうなのは無かったわ」
アメジストはパールからアダマンブレットを受け取りウキウキと弾倉へ充填した。
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