第126話
GW連続投稿の2日目です。前回はルビーがミストフロッグから何かをぶんどった所で終わりましたが、今回それが明らかに!
詳細は本編で!
ルビーがミストフロッグからぶんどった…正確には口の中から引っこ抜いたのは中型の蟻、ジャイアントアントだった。
「何でモンスターが!」
しかし驚いている場合じゃ無い。慌ててパールがサウンドハラスメントでミストフロッグとジャイアントアントのヘイトを稼ぐ。
ミストフロッグは隙あらばパールを丸呑みにしようとするが、口を開けるモーションを見てからでも回避出来るので問題は無かった。しかしミストフロッグとジャイアントアントの波状攻撃に防戦を強いられる。
強いられているんだ!
「カエルからやるぞ!」
ルビーが睡眠の忍術でジャイアントアントを眠らせる。その隙にミストフロッグを集中攻撃する。
「あまり効かない…」
シトリンは相性が悪く打撃は柔らかい体に吸収され、関節を極めようにもぬるぬるの粘液で手足は掴めない。
「焼きガエルにしてやる!」
ルビーは火遁円舞でミストフロッグを強烈な炎で包む。ペリドットはハーピーを喚び風の力で火遁円舞の炎を使い炎の竜巻を作り上げる。炎が収まるとミストフロッグの皮膚は焼け爛れていた。粘液も蒸発し衝撃を吸収していた皮膚下の脂肪も燃えてしまっている。チャンスとばかりにシトリンは正拳突きから前足を絡め取り腕ひしぎ逆十字で膝関節を砕く。
機動力を失ったミストフロッグは丸呑みしようと大きな口を開けて襲ってくるが、こうなればただの的だ。
「ファスナー合流を乱した罪により銃殺刑!」
うん、ファスナー合流は邪魔しちゃいけない。安全に合流を済ませるドライバー同士の信頼の証なんだから自分勝手は絶対にダメ! そんなヤツには市中引き回しの上打ち首獄門、そして銃殺刑だ。クソプ○ウスめ、合流邪魔しやかって…。こほん、話を戻そう。
パールを丸呑みするため大きく口を開けたミストフロッグ。その瞬間を狙いアメジストはマイルドファイアをミストフロッグの口へ撃ち込む。
てこずりはしたもののミストフロッグを倒すと次はジャイアントアントだ。数回攻撃すると目を覚ましヘイトの高いパールへ襲い掛かる。
「蟻んこ1匹、さっさと片付けようぜ」
ミストフロッグを倒し勢い付くルビー。しかしパールは嫌な予感が拭えない。そんなにタフでは無いしいやらしいスキルを使う訳でも無い。なのに何か忘れている様な…。
多勢に無勢、楽勝ムードの中、ジャイアントアントを追い詰める。しかしそこに油断が生まれた。
―ジャイアントアントは仲間を呼んだ―
「しまった!」
臍を噛むパール。嫌な予感の正体だ。蟻も蜂と同じハチ目の社会性昆虫、仲間を呼ぶ可能性は少し考えれば気付けた事だ。
「おいおい、コイツらどこに隠れてやがった!?」
地中からわらわらと湧いて出てくるジャイアントアント。その数およそ10匹。ルビーが使う睡眠の忍術は単体スキルで1匹ずつ眠らせていては時間が掛かりすぎる。
「任せて、ヒュプノスララバイ! 続けてサウンドハラスメント!」
パールを中心に眠りの歌とヘイトを高める音波が連続で展開される。
「シトリンちゃん、スタンさせられる様に構えてて」
「ん」
ペリドットの言葉に短く答えるシトリン。3匹程倒して判った事は、このジャイアントアント、仲間を呼ぶスキルしか持って無い。至近距離に居てもヘイトを稼がなければダメージは受けない、そうなれば話は早い。サファイアも加わりタコ殴りだ。
しかし順調に数を減らしてもヒュプノスララバイが切れ起きた途端に仲間を呼ばれ更に数が増える悪循環に陥っていた。
「全然減らないよ~」
「これってヤバくないか?」
「今、何匹居るですヨ」
「40は確実ね」
「早く全滅させないと」
「逃げたい」
減らしては増え、減らしては増えを繰り返し周囲はジャイアントアントで埋め尽くされている。これ以上増えてはヒュプノスララバイもサウンドハラスメントも端の方では効果が薄れてしまう。つまりサファイア達が全滅する危険が高まるのだ。
「もしかしたら、さっき見付けた焚き火の跡って、ジャイアントアントに襲われて逃げ出した冒険者の物なのかもね」
「おいおい、嫌な事言うなよ」
「仇は取る」
「死んだとは限らねぇだろ!」
「今度はミー達の番ですヨ」
「嫌なフラグ立てるな!」
ルビーは律儀にツッコミを入れつつもスキルを駆使しジャイアントアントのHPを削る。
「何とかなるかも…。パールさん、私が合図したら静寂の鐘をお願いします」
フラウを喚んではいるが派手な履行は控え最低限にMPの消費を抑えていたペリドットがパールへ指示を飛ばす。
「判ったわ、任せる」
エーテルを飲みMPを回復させペリドットの合図を待つパール。大局を俯瞰しているペリドットが何かの打開策を見付けたのだろう。今はそれに賭けるしか無かった。
「今!」
「静寂の鐘!」
パールを中心にジャイアントアントのスキルが封じられる。その直後、ヒュプノスララバイの効果が切れジャイアントアント達は仲間を呼ぶ。しかしそれは不発に終わり作戦を理解したパールによって再び眠らされる。
「パールちゃんもペリドットちゃんもすごい!」
「グッドタイミングじゃねえか」
「ナイス連携ですヨ」
「天才」
全滅ムードだった空気が弛緩した。ヒュプノスララバイが掛かり、ジャイアントアントが起きるまでの時間をペリドットが計測し、そのタイミングをパールに伝える事で静寂の鐘を実行。仲間を呼ぶスキルを封じた上で再び眠らせる。
こうなればサファイア達は自分の仕事をするだけだ。みるみるうちにジャイアントアントの数は減り、最後の1匹も簡単に倒された。
「ペリドットさんタイミング教えてくれてありがとう。助かったわ。」
「いえ、私は時間を計っただけですから」
「何言ってるですヨ」
「その計測が無けりゃ勝てなかったよ」
「ペリドットちゃんすごーい!」
「やっぱり天才」
メンバーから次々褒められ茹でダコの様に真っ赤になるペリドット。
「でも睡眠時間が決まってたなんて初めて知ったわ」
「ミーもですヨ」
「いつもは寝かして目が覚める前に殴って起こしてるもんね」
「けどこれでジャイアントアントは怖く無くなった訳だな」
「スキルの届く範囲にジャイアントアントが居れば、の話だけどね」
「でもでも、いっぱい倒したから経験値もいっぱい貰えたよ」
「いちいち釣りに行くよりアイツらに仲間呼ばせた方が楽なんじゃないか?」
「私のMPが尽きたら確実に全滅よ。そんなリスク負えないわ」
「そりゃそうか…」
パールの意見にポリポリと頭を掻くルビー。
「それよりも少し休憩しませんか?」
「まだ狩り始めたばかりですヨ」
ペリドットの意見にアメジストが疑問を口にする。
「MP無い」
「あ、そっか。パールちゃんずっとスキル使ってたから消耗してるよ」
「この濃霧だし、多めに休憩するか?」
「MP回復だけで良いわよ。釣りはルビーさんのスキルで問題無いはずよ」
そう言ってその場に屈むパール。サファイアとペリドットもそれに続く。
「しっかしさっきのカエル、モンスターを飲み込むなんて有りかよ」
「蟻を飲み込んでた」
「誰が上手い事言えと言ったですヨ」
スキルによるMP消費が軽い物理アタッカーは暇をもて余す。
「ジャイアントアントって地中からわらわら出てきたけど、ジャイアントアリジゴクみたいな潜伏型じゃないよな?」
「もしそうだったらここに来るまでに確実に襲われてるですヨ」
「そうだよな潜伏型じゃ無いのがせめてもの救いだな」
ルビーは後衛の様子を伺いながら立ち上がり軽くストレッチを始める。
「そろそろ再開して良いか?」
「ええ、良いわよ。もう十分回復出来たわ」
パールが立ち上がりOKを出す。サファイアもペリドットも立ち上がりパーティの強化を始める。
「よし、じゃあ行くぜ」
そう言ってルビーは濃霧の中へ消えて行った。
◇◆◇◆◇
この日は濃霧が晴れる事は無く街道への移動も困難な為キャンプ地で夜を明かす事になった。
「ミストフロッグは高確率で何かしらのモンスターを呑み込んでるな」
「アイツにぶんどるは止めるですヨ」
「そうだな、デメリットしか無いからやる意味が無いよ」
ルビーは今日のレベリングを振り返りながら情報を整理する。
「あとジャイアントアントも戦うのはよした方が良いわね。比較的安全なのは山羊くらいしか居ないわ」
「マッドホーンか。アイツは猪突猛進だから突進にさえ気を付ければ楽勝だよな」
「個体数が少ないのが難点ですヨ」
「そこは他のモンスターを混ぜつつ狩るしか無いわね」
翌日の方針も決まりサファイア達は早めに眠りに付いた。
◇◆◇◆◇
翌朝も濃霧が立ち込め視界は最悪だった。ルビーのサーチスキルでモンスターを釣るのは苦労しなかったが、気を抜けばルビーは迷子になってしまいそうだし、下手にとんずらなんてしようものなら岩壁に激突してしまうだろう。
霧による溺れてしまいそうな湿度は不快で気温は低くとも汗をかけば乾かない。火と風の精霊達によるドライヤーも焼け石に水で、乾いても大気中の水分ですぐにしっとりしてしまう。
他のパーティとモンスターを取り合う事を考えればここの狩場は独占出来る為、移動するという選択肢は考えられない。この霧と湿度さえ無ければ。
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