33.乗っ取り成功
「本当に今日なの……?」
昨日リュウセイの親友に話をつけてから、明日本部長を説得しに行こうという話になったのだが、俺はいまいち実感がわかずなんとなく行く気にもなれなくなっていた。昨日わくわくしたはずなのだが。
「今日だわボケ。何言われようと攻めかかるぞ、力尽くでも」
「……おう」
思ったこと言えば成功するとは思えない……。
「ほら、協会本部はあともう少しだぞ」
駅を出た俺達は今本部に向かっている。俺だけかもしれないが足取りが重すぎる。
「唐突すぎてごめんなさいねカイザ。これしかないのよ」
「いや、別の日に改めれば……」
「さぁ、行くわよ」
聞けよ人の話! …………と言ってももう遅いが。
スタスタと足を進める一行についていく俺は1番後ろを歩いている。門番が見えたところで皆足が止まった。
「皆いい? 門番が逆らってきたら半殺しよ」
「…………ん?」
シュンレンは何を仰ってるんだ?
「意図もなく殺すのは犯罪だから」
「いや……」
傷付けるだけで犯罪じゃねぇのか?
もう、言ってることがわけわからなくて混乱してしまう。
そんなことを考えているのも束の間、一行はシュンレンの後に続いて歩き出した。慌てて俺も続いた。
「そこを通してもらえるかしら?」
「あなた方にそのような権限はございません」
門番はシュンレンの顔を見ることもなく、正面を見たまま答えた。
「そう……人の顔を見て話せないなんて困ったものね。あなた方の親となるセイキは何をしているのやら……」
「セイキさんを悪く言わないでもらえますか」
「そんなもの知ったこっちゃないわ。セイキを出してもらえるかしら? ここを通る権限がないのなら、呼ぶしかないわね」
「会う権限もございません」
「あっそう」
ふぅ、と溜め息をついて歩みを進めた。
「行くわよ」
「え、諦めるのかよ」
「黙ってついてきなさい」
早歩きで進むシュンレンの後へついていくと、建物を囲っている大きな柵の真ん前へ止まった。
「私はここの隠し通路を知っている……」
「おぉっ」
シュンレンは躊躇することなく、柵と同化していた小さな入り口を開けた。大人の男が余裕で入れるか入れないかくらいの大きさだ。
シュンレンに続いて入っていくと、建物の入り口の前にまた門番が立っている。ここはどう切り抜けるのか……
「こっち」
入り口へ向かわずに小路へ入っていった。
幸い門番に見付かっていないのでスムーズに進むことができている。
「この窓は唯一鍵が付いてない窓なの。ここへ入るわよ、トイレだけど」
「いやいや、トイレ? 誰か入ってたらどうするんだ」
「大丈夫、反対派の子たちなら話は通るはずよ」
さすがのサーモンも言葉が出ない。
シュンレンは先に窓を越える。少し飛べば届かないわけではない高さなので、続いて皆入ることができた。
「ここ女子トイレじゃん!」
「誰もいないようね。すぐに出るわよ」
サーモンは何かと興奮しているようだ。女子トイレなんて初めて入るのだから少しは見いってしまうのもわかるが。
トイレを出た俺達は早速人と遭遇してしまった。
「し、シュンレンさん!? 何してるんですかここで」
「あら、私らのことは秘密にしておきなさいよ本部長には」
「え、あ、はい。ところで、本部長と話をしにきたんですか?」
「そうよ、話がわかってて助かる」
「いえ、ミツルから聞いたもので」
「そう、あの子は気が利くわね」
「ごもっともです」
とりあえず別れたあと、また歩き出した。
「どこ行くんすか」
「本部長の所」
「いきなり攻めるのか」
「そうよ、サプライズ的な感覚で」
シュンレンはこれを遊びとしか捉えていないのか? 随分と気楽に進んでいるように思えるのだが。
トイレを左に曲がり、真っ直ぐに続く廊下をひたすら歩く。壁際にはドアがいくつかあるので廊下が長いのは見てわかる。
ようやく曲がり角が見えたと思いきやそこは階段だった。ここは建物の一番奥だろうか。
階段を上ると途中で廊下が見えたが、そこには下りずにまだまだ続く階段を上る。
黙々と上り続けてようやく最上階へ。最上階は他の階とは違いかなり落ち着いた雰囲気をかもし出している。ここだけやけに綺麗だ。
「ここは偉い人がよく来る場所なの。一般戦士はあまり来ないわ」
廊下を進み、曲がり角に曲がるとまたもや門番が。
「こんにちは」
シュンレンは堂々と門番に挨拶を。もう自分自身がここの人間ではないと知っていながらの行動なのだろうか。
「おやおや、シュンレンさんではないですか。部外者がなぜこちらへ? それに、よくこの建物の中へ入れましたね」
「お久しぶりです。ここはいろいろ欠点があるのでね、鍵がかかってない所が2ヵ所もございますから簡単に入れてしまうのです」
「それは困りましたねぇ。強化に努めなければ」
「頑張ってください」
2人はニコニコしながら挨拶? を終えた。
相手門番は老け顔で、年齢は70は軽く過ぎているかもしれない。
「というわけなので、帰ってもらえませんか?」
「残念ながらそれにお答えできませんね」
「なら処分いたしましょう」
「ふっ、やってご覧なさい」
何を引き受けてるんだと思ってる最中、門番は腰に付けてた鞘から剣を取り出した。シュンレンは今何も持っていないがどうするつもりなのか。俺達は持っているが戦えと言われても混乱するだけなのだが……。
シュンレンは何やらポケットに手を入れて漁り始めた。取り出した物は小手らしき物。それを手にはめて構えた。
……まさか素手で戦う気か?
「相変わらずのスタイルで」
「これが1番戦いやすいのですよ」
今始まろうとしてる戦いを俺達は黙って見てろと言うのか。
「お手柔らかに」
「そうはさせんよ」
床を砕く勢いで蹴り出した2人。容赦なく剣を振り回す門番をものともせずに避けるシュンレン。剣と剣がぶつかり合う金属音がしないだけいいと思った。
「リュウセイ、このまま戦わせるの?」
「それしかないだろ。シュンレンは殺す気は更々ないだろうし、なんとかしてくれるだろう」
嘘だろ……。
この時間が苦痛でしかないのだが。
「あがっ!」
門番が先に攻撃されてしまった。シュンレンの腹部への攻撃が効いたのかしゃがみ込んだ。
「年齢が年齢ですので無茶をなさらずに」
「うるさい。黙りなさい……」
息を荒くしながらそう答えた。
「裏切り者には罰を与えなければいけないものなんでねぇ……」
「そうですよね。裏切り者には罰を与えなければいけませんよね。でも、少なくとも私には無理でしょうね、力の差がありすぎますから」
すごい自信に溢れた顔でそう言った。シュンレンが強いのはもうわかった。この人の性格が恐ろしく思える。
「この無礼者! あなたには1から躾直さなければいけないですね」
「あなたの子ではないので躾られる権利はありませんので」
ピリピリとした空気がこの最上階を包み込む。
すると、大きくて立派な扉がゆっくりと開かれた。
「うるさいですよ門番さん…………」
目を大きく見開いてこちらを見てくる本部長。
「ご無沙汰してますセイキさん?」
「なぜここにいる……なぜだ? どうやって入ってきた!?」
「普通に入ってきました」
ニコッと笑みを浮かべた。
「今すぐ出ていけ! お前らを見ると目が腐ってしまう……」
「いっそのこと腐りなさい」
挑発的に発したその言葉をまんまと引っ掛かる本部長。
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ! リーダーを呼ぶぞ」
「まぁまぁ落ち着いて。ここは話し合いましょう」
「うるさい! 話し合いなど嫌いだ、力で話をつけようではないか」
「争いはいけませんよセイキさん。人を殺して何が楽しいのです?」
「黙れ」
本部長は後ろを振り向き早足で部屋へ入ろうとすると、シュンレンは直ぐ様本部長を止めた。
「旧日本の法則に則ってみましょうよ、戦争放棄……をね」
やっと入りました協会本部へ!ようやくですね。文章構成が下手くそすぎて困ります




