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この謎多き異世界で  作者: いくよ
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28.勝手な準備

「カイザ!」


 フワワが俺の腕を執拗に触ってくる。


「男らしい腕になったね、特に二の腕」

「男らしいって俺男だけど」

「あー、もう。わかってないなカイザは」

「は? ……って、いででででっ」


 フワワは急に俺の二の腕を捻り出した。肉はまだ付いているのでかなり痛い。捻った後ジンジンと痛みが残っててとても不愉快だ。


「いってぇ~……」

「こうしてたら肉が消えてくよ」

「あっそう……」


 フワワはあからさまに腕を捻ろうと手をグーパーさせている。


「肉を……」

「ヤメロ」


 いやらしい手つきをしながらこちらへ迫ってくる手を必死に止めながら自分を守る。


 それを数秒間続けていると、ニュース速報を知らせる音が聞こえた。テレビ画面にテロップが出てきた。


『北海道戦士協会本部長のセイキ氏がリポーターを誘拐した模様』


 ____は?


 内容が掴めない。何を思って誘拐したのだ? そもそも、それを今テロップで出すこと自体どうかと思うのだがどうなのだろうか。こうするしかないのか? 番組を潰してまで知らせる情報ではないと。


 あ、もしかしてリュウセイはこの事を知って協会へ行ってしまったのだろうか。

 いやでも、リュウセイは朝から消えている……。

 そうだリュウセイから連絡来たのは俺が協会のニュース見た後ら辺だったか? それなら、つじつま合う……と思われる。


「見てカイザ」


 フワワがテレビ画面を指してきた。


 そこには、怯えながら話す男の姿。


「本部長さんが……カメラを壊してリポーターを一回気絶させて……それで…………」


 そう言って頭を抱えた。思い出すだけで恐怖心が沸き上がってくるのだろうか。その光景を俺はぜひとも目にしたかった次第だが。


「落ち着きましょう。落ち着いて、知っている情報を全て教えてください」

「はい……すいません。私は後ろの方にいたので、怖くなって逃げたのですが…………」


 なぜこれを全国放送にしているのかが謎なのだが。


「カメラマンさんはその後どうなったのかさっぱりで……」

「そうですか。誘拐されたか殺されたかの2択ですね」


 その2つに絞っていいのか。しかも殺しちゃっているではないか。


「……あ、今情報が」


 質問側は一旦席を外した。


「ヤバいことになってるね、カイザ」

「うん……。俺の推測だけどさ、リュウセイもこれに関わってそう」

「え?」

「だって今日はリュウセイいないって連絡来たじゃん」

「そっか……」


 謎が深まるばかりだが、もしリュウセイが関わっているとすれば俺達と交わした約束はどこへ行くのやら。一緒に行くという約束は……。


 しかし、リュウセイの力で変わるのなら俺達の出番はなくて済む。


「えー」


 やっと画面内から声が聞こえた。


「もうひとりの帰還者がいるとのことで、今こちらへ向かってくるそうです。話がまとまり次第情報をお伝えいたします。それでは番組の続きをどうぞ」


 画面が変わって、今までやっていたニュースの画面に戻ったようだ。


「協会がイカれてしまってるね」

「しょうもない奴ら……」


 これはもういつ戦争来てもおかしくないな、と俺は確実に思った。戦う準備でもしておいた方がいいのかね。


「じゃーん」


 ニッコニコの笑顔でサーモンはパンケーキを持ってきた。生クリームに苺まで乗っかっている、いかにも甘そうなケーキ。


「美味しそうでしょ」

「うん」

「でも今はパンケーキより協会の方が重要だよ、サーモン」

「協会?」


 きょとんとした顔を見せるサーモン。

 それも無理もない。サーモンは今までパンケーキを作ってて、こちらの会話など聞いてすらいなかったのだから。


「協会何かやらかしたのか」

「うん、人を拐った」

「え……」


 次はドン引きの顔。


「そんな馬鹿な所だとは思って……いたけど、そこまで馬鹿だとは」


 パンケーキを大きな口を開けて頬張る。


「ひゃひゃっへほーふんはほ」

「口に物を入れながら喋るなアホ」


 サーモンはなんとかケーキを喉へ流し込むと、再度口を開く。


「拐ってどうするんだろ」

「知らない」

「顔が好みのタイプだったとか!」

「あのねフワワ。リポーターは男だったでしょ?」

「見てないからさ、うん」

「あ、そうか」


 しばらく沈黙が続いたので、俺も含めて3人はパンケーキを黙々と食べる。


「リュウセイいないんだもんなぁ、俺が訓練手伝ってやるよ」

「え……」

「いや、不満そうな顔すんなや。俺だって遠距離戦闘者だぞ」

「安心感がないというか……。それならゴム引っ張ってた方がマシ」

「あぁ……娘に振られる父の気持ちがわかる気がするぜ……」


 何言ってんだコイツは。


 ガンスルーしてパンケーキを食べ終えた。


「ねーねー、カイザとサーモン」


 フワワが呼んできたので向く。


「世界最強になるために今乗り込むのはどうだろう?」

「なぬ?」


 世界最強という言葉にサーモンは食らい付いた。


「注目されてるから名も知られると思う。リュウセイばかり有名になられてはこちらが許せない、そうでしょサーモン?」

「そうだな、許せないわ。許せないから行こう、うん、行こう行こう」


 勝手にフワワとサーモンとで行くことにしてしまっているが、これは冗談抜きなのか……。


「平民の意見を尊重しねぇとな」

「そうだよ、明日行こうよ」

「よぉーし、準備だ準備。野郎共準備だぞ」


 一斉に立ち上がりそれぞれの部屋へ向かって行った。俺の意見もなしに勝手に。


「マジかよ……」


 乗り気になれないが、俺も仕方なく準備を始めることにした。俺から乗り込むという考えを発祥したのだが、それが今だなんて予定が狂いすぎだ。


 具体的に何を準備すればいいのかわからず、弓と防具さえあればいいのかと思いそれだけを準備。別に争うことはないと思うのだが。

 俺はふらーっとサーモンの部屋を覗いてみる。さすがにフワワの部屋は入りづらいので。


「えっ」


 サーモンはリュックにお菓子をたくさん詰めていた。


「あ、カイザ。もう準備終わったのか?」

「うん……。それよりお菓子……」

「これはただ持っていきたいだけ」

「緊張感持てよ、乗り込むんだからさ」

「緊張してたら物事進まないって」


 詰め終えたのか詰める手が止まり、リュックのチャックを閉めた。相変わらず呑気なものだ。


「明後日辺りテレビに出るかなぁ」

「それはないでしょ」


 サーモンはワクワクしながら明日を楽しみに待っているよう。


 俺も、本気で乗り込むというのならやる気を出さなければ。これで今後の戦士生活が一変するというのなら。

とうとう乗り込むところまできましたね。(まだ乗り込んでないけど)


終わりも近いかなー

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