26.連れ戻す
「あ……」
受付の男は手に何か黒い物体を持ち上げて声を上げた。
「指令長さんの忘れ物」
そう言って見せてきたのは黒いポーチだった。中身を見たいがむやみに見ては相手に失礼なので見れないが。持ち主がわからなければ見る可能性もあるとは思われる。
「あ、そんなら指令長戻ってくるかもな」
「忘れ物だなんてドジっ子さん」
サーモンとフワワがそれぞれ口々に言った。
忘れ物に気付いてくれればいいのだが……。何も知らないで帰られるとこちらは困る。聞きたいこともあるし、忘れ物はあるし。
「ってか何で受付さんがポーチ持ってんの」
「…………あぁ、鞄の中の物取りたいので持っててください、って言われたのが始まりですね」
じゃあそのポーチ鞄の中に入れろよ!
そうツッコミたかった。
「コンコン」
ドアをノックする音……を真似した声が聞こえた。
「開けまーす」
そう言ってる頃にはもうドアは閉ざされていた。
「忘れ物をしまして~……あっ、リュウセイじゃないの」
「…………」
リュウセイはそっぽを向く。ものすごく嫌そうな顔をしている。
「あっ、忘れ物ありがとうございます」
受け取りながらリュウセイの方を見て一言、
「帰りましょう」
鞄の中にポーチをしまって、真っ直ぐリュウセイを見つめる。
「あんな場所帰りたくもないです」
「何が不満なの? もしかして戦争? ……それなら大丈夫よ、あなたを含める協会にいる者達は被害はないもの」
「ここにいる3人は? 助からないじゃないですか。意味もない戦争で関係無い人がいなくなるなんて信じられません」
口出ししないと言っていたものの、案外むきになって抗論している様子。
「そんな愚民など要らないわ」
今のこのおばさんの発言で少なくとも俺は頭に来た。きっと2人もイラついているに違いない。
「何が愚民だ、エリート気取りですか。数少ない強者達が集まる協会の人間だからって……」
「弱者などこの世に必要ない。ねぇ、そうでしょう? リュウセイ」
「それは大きな間違いだ」
険悪な空気がこの建物の中を舞う。
「弱者がいてこその強者、またはその逆。弱者は強者から教わり、また強者は弱者から新たなことを教わる。そのメカニズムは大事だと思いますが」
「いい? 馬鹿と一緒になれば片方も馬鹿になるの。だから強者が弱者と一緒にいれば強者は弱くなって……」
「それは違う」
フワワが割って入っていった。
「強者は弱者から教わる……間違ってないと思うんです。だって、勉強で例えるなら、馬鹿に頭いい人が勉強教えることによって、頭いい人自身も勉強が身に付くんですよ? 自分で教えるって相当効果あります。それを戦に例えても同じことが言える……」
「そんな理屈信用するもんですか。皆馬鹿のペースに囚われてしまうわ」
「囚われてしまうほど弱いってことです?」
「はっ?」
眉間にしわを寄せながらおばさんは言った。
「馬鹿のペースに囚われるくらいなんですから、それもそれでちょっと……」
「何よ、あんた達に何がわかるのよ。いいから帰りましょうリュウセイ」
うつ向くリュウセイの腕を思いきり引っ張って、無理矢理外へ連れ出そうとする。
「離せ……!」
掴まれている腕を大きく振り払う。
「今の思考を止めるまで帰らない」
リュウセイはじっとおばさんを睨み続ける。
「懲りない子ね。なら一生帰って来なければいいわ」
「あぁ、そうします」
腕を組んで壁へ寄り掛かるリュウセイ。それを見届けたおばさんは無言でこの場を去った。
「……はぁ、疲れる」
「本当に帰らないの?」
「うん、断言した」
そんな簡単に抜けてしまえるとは。それほど嫌だったのだろう。
「あーあ、俺指令長に聞きたいこと聞けなかった」
「協会本部に直接言うしかねぇな」
「いつ行こうか」
壁に寄り掛かっていたリュウセイがこちらへ来て口を開くと、こう言う。
「カイザと、フワワを少し強化してからだな」
「わ、私も……」
「協会本部長は強い者にしか耳を傾けない性格で……。かなり面倒な人だ」
「強い者かよ。何なのそれは」
人気者にしか目がない、媚でも売っているのだろうか? なら最低な人間だと俺は思う。
「俺カイザに付くからサーモンはフワワに付いて。個別指導だ」
「オッケー。フワワを別人にしちゃる」
サーモンの考えたスケジュールが大幅変更されてしまうが、これも乗り込むため、文句は一切ない。
「サーモンより早く世界最強になってやる!」
腕をブンブンと回すフワワを横目にサーモンは、
「なんだとー? 俺より先に最強になれると思うなよ?」
そう言ってフワワとサーモンはワイワイと楽しげに会話をし始めた。
「とりあえずの市内最強はリュウセイだけどね」
「え、俺は部外者だから……サーモンでいいんじゃないか?」
「お前は今ここにいるのに?」
「俺は元々ここの戦士じゃないからな。サーモンでいいよ」
すると、リュウセイは両手をパンッと叩いてから行こうと皆に声を掛けた。皆はリュウセイの後に続いて外へ。
俺は最後尾にいたので、とりあえず受付の男に失礼しました、と一声掛けて出ていった。
「今日はモンスター倒したから疲れてるだろうから、明日午後にそちらへ向かう」
「了解」
サーモンがそう答えると、途中まで一緒に歩いて帰ることに。リュウセイの家がどこにあるかはわからないが、そう遠くはないのかと俺は思った。そうでないと毎日のように通うことができないだろうし。
数分歩いたところでリュウセイは「それじゃあ」と言って曲がり角を曲がった。
「楽しみになってきたなカイザとフワワよ」
「うん。トップに勝ったらどれほど気持ちいいのかな」
「勝ったら有名人だな」
そんな妄想を膨らませながら道を歩く。家の近くになったところで、フワワは「ブラックホールー!」と聞こえもしないのに走り出した。サーモンもそれに続いて走り出したので、やむを得ず俺も走る。
いよいよ明日から本格的な訓練が始まる。
この自分の作品を3話だけ様子見て面白かったら決める~とか言ってたら絶対打ち切られる気がする。進みが遅いから。後半くらいは確実に進んできてるはず
そして投稿も遅れました




