25.これぞ神業
モンスターの叫びと共に現れた無数の鳥。これからどうするのかはリュウセイに任せることにした。
考えている暇などありもしないので、リュウセイは遠距離攻撃の俺とサーモンに撃つよう頼み、その隙に少しでも戦略を立てるらしい。リュウセイの指示に従い俺もサーモンも撃つ体勢に入った。俺は鳥に当てることができるのかは不明だが。
「カイザ、あまり前出たら殺られるぞ!」
「前出ないと当たらないいんだよ、最低でも2mは離れないと……」
「は!?」
俺の命中率の低さにサーモンはさぞかし驚いたろう。馬鹿にだってされそう。
「お前下手くそか! 練習したんじゃないのか?」
「すぐに上手くなるわけないでしょうが」
「そうか、まぁ練習だと思って射ってて」
そう言ってサーモンはマシンガンを取って前に出た。
お前今前に出たら殺られるって……。上手いヤツは別ってか。
一方のリュウセイ達はまだ戦略を立てている途中のようだ。一体何を話しているのかは俺には全く聞こえやしないが、リュウセイのことだ、いい考えを持ち出してくるに違いない。
「さてと……」
当たらない覚悟で俺は弓を構える。当たらないと思っているのだが、ほぼ隙間なく飛んでいる鳥達に一発くらいは当たるのではないかという期待も少しはある。それに、スピードもかなり上がったので前より一層連続で射ちやすくなってるはず。
「喰らえ……!」
記念すべき第一発を放った。放たれた矢は曲がりもせずに一直線に飛ぶ。
この矢が多少でも曲がればまた変わるのではと思ったが、弓矢というのは曲がるものではないんだよな。
一発一発射っているが、鳥が密集しているのもあるのだろうけどよく当たる。ここまで当たると気持ちがいいものだ。
「次はアイツを……」
少し離れた鳥を狙って射とうとしたら、
「カァーイザー!」
「!?」
これはフワワの声か。後ろを振り向くとフワワが全速力で走ってくる。俺に用があるのかと思いきやそうではなく、俺を通り過ぎて鳥の群れの中心に止まった。まだ鳥以外にもモンスターが怪我を負いながら地べたへ座っているのにも関わらず堂々となぜ中心へ?
疑問に思っていたのも束の間、フワワは扇子を下から上へと持ち上げた。それと一緒に竜巻も発生させた。
フワワの竜巻を利用して浮いてる鳥を一斉攻撃しようって作戦か、すぐに思い付けばよかった。
フワワは次々と扇子を扇ぎながら鳥へ攻撃。風のみが吹いているというのに、鳥は次々と地面へ落ちていく。風でダメージが喰らう仕組みが知りたいくらい。
「フワワナイスー!」
遠くからサーモンがフワワに言った。フワワは「ありがとう」と叫んで再び鳥を攻撃していく。
フワワのお陰で空中にいる鳥の数はだいぶ減ってきた。スカスカになってきたので俺の矢は当たることはなさそうに思えてきたが。
「カイザ」
「うぃ?」
名前を呼ばれたので振り向くとリュウセイの姿が。鳥はフワワとサーモンに任せて、俺達で弱っているモンスターを殺してしまおうとのことだ。
あまり動ける状態ではないので近くへ行ってもまぁ、安心できるであろう。俺はリュウセイと共に弱っているモンスターの所へ。
俺達を察知したモンスターはよろけながらも立ち上がった。「グルルルル……」と低い声を出しながらこちらを警戒。
「俺カイザにモンスターの背中を向けさせるから待ってて。後ろ向いたら近付いて攻撃していいから」
「あ、ありがとう」
なんて優しい。それなら思う存分近付けるではないか。
リュウセイは駆け足でモンスターへと近付いた。そのままモンスターの横へよぎり、モンスターはリュウセイを目で追った。完全に俺に尻を見せたところで俺はモンスターに近付く。
「近くの方がダメージ大きいと思うんだよ」
小声でそう呟くと、俺は弦を思いきり引いて離した。モンスターに突き刺さったのはいいが、今更になって筋肉痛の痛みを覚え始めてしまった。かなり痛い。
「ジャンジャン射っちゃって」
そういうリュウセイに応えたいが、腕が痛い。なぜ今なのか? 朝から家出る前まで痛くて今まで全然痛くなかったのに、意識し始めたら痛くなるだなんて、人間も不便なものだ。
そんな痛みに耐えながらも射つ。さっきよりは全然威力もスピードもまるでなくなっている。
「俺今度こそ止め刺すわ」
20kgもある剣を持ちながら飛び上がり、振り落とした。
真っ二つとはいかなかったが、頭が少しだけ裂けた。大量の血が噴水のように溢れ出て、辺りは血だらけ。リュウセイは返り血にあってしまった。
「汚っ……」
腕で顔を拭った。
「あ、そうだ。鳥は……」
リュウセイが言ったのに気付いて、俺もリュウセイも上を見上げるとまだ鳥は残っていた。3匹ほどだが。
「大丈夫? フワワ」
「さすがに疲れる……」
汗までかいて、ヘトヘトのようだ。
「うぉし、俺に任せとけフワワ。俺の華麗な裁きで鳥を3匹同時に貫通させちゃる」
自信満々にスナイパーを取り出した。バラバラに飛んでいる鳥をどうやって同時に殺すというのだか。
その場にスナイパーを置いて、スコープ越しに鳥を狙う。サーモンにはどう映ってるのかはわからないが、俺から見れば同時に狙えそうにないくらい上下左右共に違う位置に飛んでいる。
暫しの沈黙が続き、サーモンがピクリと動いた。タイミングでも掴めたのだろうか、引き金を徐々に押していく。
何だろう、こちらまで緊張してきたぞ。
「おっ」
短く声を発して引き金を引いた。静かに放たれた銃弾は真っ直ぐに突き進み、1匹目2匹目3匹目と気持ちよく貫通していった。
「すご……」
「ヤバくね? サーモン」
「凄い……」
俺とリュウセイとフワワは同時に声を漏らした。
3匹同時に貫通したのも充分凄いのだが、最後まで貫いた銃弾も銃弾で凄いと思われる。
しかも一般的な鳥とは違い、太さも大きさもまるで違うのに。長持ちするものなのだなと感心。
「いやぁ~、緊張したわ」
「俺も緊張したんだけど」
「私も!」
「自分も緊張した……」
リュウセイまでもが驚くのだから相当凄い、リュウセイが驚かなくても凄いのだが。
「俺ってば神だわ、神」
「調子乗るなよクズ」
「なになに~、上手すぎて嫉妬かい? うん?」
「うるせぇゴミ」
確かになぜそんなに上手いのだと嫉妬してしまう部分もあるにはある。調子乗られては腹立つが。
「いやでも、そのサーモンの実力なら戦士協会に楽々入れそうなレベルだ」
「マジで!? ……あ~、でも俺札幌行くつもり更々ないわ」
「自分もおすすめしない」
テレビであの光景を見てしまっては行く気など失せるに決まっている。戦争だの何だのって……。
「さてと、受託所へ行こうか」
「ういーっす」
「受託所行ったら帰れるね」
「さあ行こうぜー」
俺達は森を後にして受託所へ向かった。
お馴染みの受託所の建物が見えてきた。相変わらずの小ささ。
「ごめんください」
先頭に立ったのはリュウセイ、後に続いて中へと入っていく。
掲示板には何も依頼は貼られていない。ここは平和で何よりだ、と思っておけばいいのだろうか。
リュウセイが手続きをしてもらってる間、サーモンの自慢話が続いた。
「やっぱり俺天才だったんだな」
「はっ。あんくらい俺だってできたわ」
「ちょ……カイザ、それはないと思う」
「どうしてだよ、サーモンにできるなら俺にもできる。人間にできるものは全て俺らでもできる。そうだろ?」
「え……」
「んなわけねぇだろカイザ。そんな理屈存在するわけねぇし」
頭大丈夫かぁ?とサーモンは自信の頭をつついて言ってきた。
「うるせぇ……」
サーモンの態度にイライラしていると、突如リュウセイが「えっ?」と言った。その声は大きく、俺たちにも充分聞こえたのでリュウセイの方を向いた。
「あっ、ごめん。声大きかったな」
「どうしたんだよリュウセイ、大きい声出すなんてらしくない」
「いや……指令長がここへ訪れてきたって」
「指令長?」
「協会を仕切ってるお方だ。俺はその人にお世話になってたんだけど……」
受付の男の人が口を開いた。
「えっと……リュウセイさんを連れ戻しにきたらしいのです」
「おぉぅ……リュウセイ強いもんな」
「でも俺は行かないけどな、あんな場所」
「俺もあそこは駄目だと思うわ」
「しかし、また時間を改めて来ると仰ってて」
「なら待とうぜ」
リュウセイの意見など聞かずにサーモンが言い出した。
「いや、待ってどうするの……」
「話を聞く、文句を言う。カイザとフワワは特に言いたがってたしな」
「俺達は指令長じゃなくてトップを……」
「初めの一歩として指令長を落とせ」
「…………」
話はそれからってことか?
指令長を落としたところでトップに会えるかと言ったらそうでもないのだが、指令長の気が変わってくれれば協会自体も変わってもらえる可能性も0ではない。
そう考えると待つのも有りかもしれない……。
「私は待ちたいな、文句ぶつけたい」
フワワは賛成のようだ。リュウセイはまだ納得していないようだが、俺はフワワが乗り気でいるなら俺も賛成しよう。協会を変えるために。
「俺も待つ」
「えっ」
「これで3対1でこっちの勝利、待とうぜリュウセイ」
「俺は口出ししないからな」
「おうよ」
俺達が勝って待つことにした。
一体どんな人が現れるのか、俺は緊張してきた。
3匹同時に撃ち殺してみたいっす。
次もよろしくです




