24.大勢の鳥
「こんにちは」
午後3時頃、リュウセイは家を訪れてきた。
午前中に俺達は矢の調達をしてきたところなので来たタイミングはいいだろう。午前中に来ればまだ準備ができていない状態だったであろう。
「あ、今日もよろしく」
「うん、よろしく」
リュウセイは手に持っているゴムを手のひらでバシバシと叩きながら待っている。何か恐ろしい。
退屈させないように早く準備を済ませ、昨日練習した公園へ。
今の時間帯だと小さな子供もそうだが、小学生も多く遊んでいる。これは、より一層当ててはならないというプレッシャーがくる。
射ちまくった木へ着いた俺達は、早速リュウセイはゴムを取り出した。
「これの使い方は、ただ片手で引っ張るだけ。こうやって」
リュウセイは弓を射る体勢に入って、左手で持ったゴムを右手でぐーっと後ろへ引っ張った。
見るからに固そうなゴム、リュウセイでも引っ張るのに多少の震えが生じた。
「ほら、やってみな」
「おう」
難しさで言えば多分簡単だろうと思い、躊躇うことなくゴムを受け取る。
俺はリュウセイのように引っ張ってみると、なかなかゴムを引っ張れない。
「固っ……」
嘘だろ? と思った俺は顔を赤くしながら引っ張る。引っ張ったままの体勢を取れなかった俺は右手からゴムを離してしまった。戻ってきたゴムは俺の左手に命中。すごく痛い。
「力もないのかカイザは」
「はい……」
己の運動神経の無さを噛み締める。もう恥ずかしい。
「腕立て伏せやった? やってないよねん筋肉痛になってないなら」
「あ……」
すっかり忘れていた。大体フワワのせいだろ、犬なんか見せてきやがって。
「まぁ、このゴムでも力付くから毎日やって。……あ、そういえば、明日モンスターを狩る依頼行こうと思うんだ。日を改めるって言ったろ?」
「あぁ、依頼ね。わかった、サーモン達に言っておくよ」
「ありがとう。それじゃあ練習続けてて」
そう言ってリュウセイは木を背もたれにして座り込んだ。
「座るのかい……」
まぁ、いいや。俺はゴムを引っ張っては戻して、引っ張っては戻しての繰り返し。
開始30分で俺は飽きてきた。
「飽きた……」
「早くない? 俺にとっては長かったけど」
「腕疲れるわこんなの」
「承知の上だろ、もっとやって」
こうなったらゴムを千切るくらいまで引っ張ってやる、と思いながら引っ張る。無論千切れるわけないが。
更に30分ほどやってまた飽きる。これでも合計して1時間はやっていることになるのだから休ませてくれてもいいのに、もう1時間やれと強制してきた。
「腕が死ぬんだけど?」
「殺してみろ」
こいつは鬼だ。完全なる鬼。サーモンよりも厳しいのではないか? いや、サーモンが優しすぎるのか。
我慢して引っ張ること1時間。リュウセイは休ませてくれた。
「腕が動かない……」
「よく頑張ったな2時間も」
「本当だよ、俺すごいわ……」
「俺は持ち前の大きい20kgの剣を3時間ぶっ通しで振り続けたけどな」
「えっ……20!?」
振り続けた時間よりも、あまりにも重すぎる剣の重さに驚いた。あの剣を普通に振っているリュウセイは何なのか。しかし、さっきゴムを引っ張った時は固そうにしていたが。
「重いよ俺の剣は。……さて、もうどこの家も夜飯時だろうからお開きにしようか。お疲れさんでした」
「あ、お疲れ様」
お互いに「それじゃあ」と言葉を交わして家へ戻った。
「ワンッ、ワンッ!」
昨日家に入れた捨て犬が俺に吠えてきた。
「ブラックホールうるさいよ」
ブラックホール、この犬の名前。俺はこの名前がものすごく気に入らない。この名前を聞いたとき俺は全否定したのだが、最初につけたサーモンにフワワは絶賛して、多数決的にこちらが勝ってるからとブラックホールになってしまった。2人のネーミングセンスの無さに俺はイライラする。大体サーモンの刺身言ってる時点でアウト。フワワもフワワでこれまたなんとも言えない名前だし。
「ねぇ、やっぱり名前変えない?」
「何でー? 何が気に入らないの本当に」
フワワは犬を撫でる。
「長いでしょうが、名前」
「サーモンだって長いよ」
「あいつはもう知らないわ」
この先一緒に平和に暮らしていける自信など微塵もない。俺は内心で強く思う。
「お帰りカイザー。ブラックホールー? ご飯だよ~」
俺達の飯より先に犬の餌を持ってきた。
「ワンッ!」
尻尾を素早く振りながら犬は皿が床に置かれるのを待つ。顔は可愛いが名前を聞くと幻滅……。
「ほーら、ブラックホール」
コトン、と皿を置いて犬はバクバクと食らい付く。
「変な名前を付けられたお前は可哀想だな」
「どこが変なの!」
今すぐにでも他の名前を付けてあげたい。ずっとそう思っていた。
「いってぇ……」
朝、起き上がった俺は腕の痛みにうずくまる。これは筋肉痛だろう。昨日すごく頑張ったから、筋肉が疲れてしまったのか。
今日はモンスター狩りの日だっていうのに、こんなのではまともに太刀打ちできやしない。
とりあえず立とうと、手で支えながら立つ。足だけでは立てないので。
痛い思いをしながら下へ降りる。この時、足が筋肉痛にならなくてよかったなぁとしみじみと思った。思ったのだが、腕も腕で支障は出るが。
「やっほー、カイザ」
「おはようカイザ」
「えっ、リュウセイ……?」
「うん、俺だ。訪ねたらまだカイザは起きる時間じゃないからと入れてもらった」
「は、早くない?」
「そうか? 8時なんて遅いもんだ」
今日俺はいつもより早く起きれたと思っていたのだが、遅いとか言われては何も口出しできない。
「ほら朝飯」
「うん」
俺を待ってたフワワとサーモンは一緒に朝飯を食べる。リュウセイに朝飯を食べたのか聞くと、勿論食べたと。
何かリュウセイに申し訳ないので素早く食べ終わると、早速行こうとリュウセイが言った。休憩をくれないのかを聞こうとしたら、フワワもサーモンも行こうと賛成して結局行く羽目に。食後は動くと横っ腹が痛くなるから動きたくないのだが。
外へ出た俺達は、リュウセイの後を追う。場所は前に行った森だ。まだモンスターはいたみたい。
こうして歩いていると森に着いた。燃えて木が所々なくなってしまっているが動きやすくなって、反っていいかもしれない。
「思いでの地だよ」
「いや、全然思い出に残らないわ~」
はははっ、と笑いながら森へ入る。
入ると、明らかに見通しが良くなっていた。これは見付けやすいし戦いやすいのではないだろうか。それに、リュウセイもいるので安心しかない。
「あっ」
先頭をきっていたリュウセイが早速モンスターを見付けた。
「フワワ行くよ。カイザとサーモンは遠くからモンスター狙ってて。特にカイザ、俺とフワワを当てるなよ」
「おっす……!」
「じゃあ攻撃開始」
フワワとリュウセイは一斉に走り出した。後ろ姿を見ればフワワもかっこいい。
相手モンスターは一番背が高いサーモンより少し高いくらいの大きさ。たいして大きくはない。
俺はたった2日の練習の成果をぶつけてやろうと弓を構えた。たったの2日だから、多分俺ではまだ何も変わっていないと思われるが。
俺の限界の距離である2mはさすがに近付けないので、4m程離れて狙い射つ。サッと解き放たれた矢は、今までの数倍もの早さで一直線に飛んでいった。生憎モンスターに当たらなかったが、それを見たリュウセイは驚いた顔を見せていた。
にしても、縦が短くても幅は結構太いはずなのになぜ外すのか。まだ射つ時に弓を動かしてしまっているのか。
一方のサーモンは、スナイパーでモンスターを次々と撃っていた。サーモンの命中率は馬鹿にできないほど正確だ。ショットガンでもそうだ、スコープ無しでもきちんと当たる。
前方を見ると、フワワとリュウセイはモンスターを切りまくっている。
リュウセイを見ていると、あの剣が20kgもあるのだと思うと凄さしか感じられない。普通に振っているのだから。
フワワは、突然扇子をモンスターに投げた。投げられた扇子は綺麗にモンスターを切りつけ、ブーメランの様にフワワの手元へ戻ってきた。あの扇子は何なのか、風は起こせるし、戻ってくるし。
「そろそろ潮時か!」
よろけたモンスターを見てリュウセイはそう言った。
「フワワ、トドメ刺すぞ!」
フワワとリュウセイは渾身の一撃をモンスターに喰らわせた。頭を大打撃だ。
ドスンッと尻餅付いたモンスターは、倒れるのかと思いきや突然叫び出す。危険を察知したリュウセイはフワワと共に俺達のいる後方へ下がる。
しばらく様子を見ていると、遠くから無数の鳥が。しかも烏や鴎などの小動物とは違い、明らかにでかい。
「何あれ……」
「あれもモンスターだ」
愕然としながら見る。あの数のモンスターをどう対象すれと。
本日二回目
カイザ早く強くなんねーかなぁ?((
この話は飛ばしすぎてるかな、どうなんだろ




