23.命中率の低さ
的になるであろう木を確保したので、早速射つ練習を……と思ったのだが、周りに遊んでる子供たちがいるので危ないとのこと。外さないのならこのまま続行してもいいのだが、俺は下手くそなので外すことしかできないと思う。
「いいや、今日は矢を使わないで……というか、しばらく矢を使わないで練習しよう」
「え?」
「姿勢から始める。今日はゴムがないからそれで練習するけど、明日からはゴムを使って筋力付けるから」
姿勢って射つときの姿勢だろうか。俺は今まで何となくこれだろ、っていう感じで射っていたから当たらなかったのだろうか?
「んじゃここはリュウセイに任せて俺達は他で練習しよーぜ、フワワ」
「オッス!」
「後は任せたリュウセイ」
「わかった」
え、リュウセイと2人きっり?
無駄に緊張というか、恐ろしいというか。マンツーマンの方が上達するのだろうが、全然話したこともない人と2人きりはさすがに緊張するだろう。
「カイザ」
「……はいっ」
「とりあえず射つフリをしてみて」
「うぃす」
ギュッと弦を引くと、「姿勢は大体合ってるな……」と小声で言ったのが聞こえた。
「合ってる?」
「うん、体が正面見てないから。姿勢はまぁ、いいとするか。じゃあ、やっぱり問題は命中率なんだな。あと威力も弱いんだろうから、やっぱりゴムで練習だな」
うーん、と考える素振りをしている。何を考えてるのか。
「姿勢はもういいんだから……うーん……やっぱり矢を使おう。やることない」
「あ、そうっすか。でも子供たちに当たる……」
「当てたらどうなるかわかってるよな? なら当てないよう努力しろ」
「えっ……」
スパルタですかあんたは。
無駄な緊張が走るが、こうでもしないと上達しないとでも思われているのか。随分と舐められたものだ。
「……当てるわけないんで見てろ~……」
集中して的を狙う。ここだ! と思う所へ射った。
矢は一直線に的へ当たる……と思いきや、
「え」
全然的へ向かってはいなかった。矢は的の隣を飛んでいき、数m飛んでそのまま落下。
「カイザある意味天才、すごいわこの距離で」
的と俺との距離は約2mちょっとくらい。俺も当たると自信満々だったのだが、こうして当たらなかった時の恥ずかしさはかなりヤバい。
「距離1mにしようか」
「うぃ……」
ただただ下をうつ向く。幸い射った先には誰もいなく、多分誰にも見られてもいないからまだいいが。
「よし、射って」
言われるがままに2発目を射つ。サクッと的のギリギリ端に当たった。
「あっぶないね、下手くそな理由わかったかもしれない」
「え、なになに?」
「射った瞬間照準がずれてる。手を離すと同時に弓が上を向いてるんだな、今見たところだと。さっきはわからないけど。反動に堪えられてないってことになるのかな……筋力付けないと。今日からでも腕立て伏せして」
「腕立て……」
床に胸すら付けることができない俺にできるのか。腕力ないからできないんだろうが、命中率のためだ、やるしかない。
それから、1mは大体できるようになったので2mにまた戻って練習を始めた。数回外しはしたものの、やるにつれて外さなくなったので次は3m。たかが3mごときでもう詰まっている。
「駄目だね3m」
「駄目だわ3m」
飛距離はまだ足りているのだが、命中は簡単にはしてくれない。どうしたものか。
「1m、2mとやってきたけど、コツとかまだわからないの?」
「コツ……」
考えてもいなかったそんなこと。
ただ単に射つことに専念してたので、狙う時の感覚などは掴めていない。
「んじゃあもう1回2mから射ってコツを掴んで」
2mであろう距離へ立ち、弓を構えた。果たしてコツを掴むことができるのだろうか……。
「疲れた……」
走ってもいないのに疲れてしまった。
「コツは掴めなかったか……。まぁ、仕方ない。今日はここまでにしよう。お昼も食べずにぶっ通しで疲れただろうし」
「そう言われると腹減ったなぁ」
夕日も見えてきたので5~6時か。 一体何時間射ち続けていたのだろうか。
「明日矢でも買いに行きなよ。そのあとゴム練習だ」
「矢を……」
「サーモンならきっと選べる」
そう言って、「それじゃあまた明日」と別れを告げて帰っていった。
俺も帰る準備をして家へ向かった。
「ただいま」
玄関で靴を脱ぐと、もうフワワとサーモンは戻ってきているのがわかった。
「あ、お帰りなさいサーモン。……じゃなかった、カイザ」
リビングのドアを開けて早速名前を間違えられた。少なくともサーモンとは間違えられたくなかった。
「長い時間やってたね、上達した?」
「うーん……そこまで上達してないかな」
2mまでしか射てないのだから上達も何もあるわけないだろう。それに、これをサーモンに言えば笑われるのが目に見えてる。
「上達しないのか~。ま、1日しかやってないもんね」
そうだ、たかが1日で上達するわけないんだ。俺はとりあえずひと安心しておく。
フワワがソファに座っているので俺はソファの前の床へ座る。どうも女の子の隣を座るのに抵抗がある。相手から座ってくるなら別にいいのだが。
「ねぇ、カイザ」
「何?」
フワワの顔を見やった。
「私捨て犬を見付けてさ、サーモンに内緒でちょっと家の隣に子犬の入った段ボール置いてるんだよね」
「え、マジで?」
「サーモン家に入れていいって言ってくれるかなぁ」
「うーん……あいつが犬嫌いなのかは知らないけど、どうだろ」
ここは快く入れてもいいと許可をいただきたいところだが。
「見に行かない?」
「行く」
俺とフワワは犬を見に外へ出た。
「ほら、これ」
「可愛い……」
段ボールに入っていたのはミニチュアダックスフントだろうか、黒と茶色が入った毛がふさふさしている。にしても可愛い。
「飼いたいよね? これ」
「うん、すごく飼いたい」
つぶらな瞳でじっとこちらを見つめてくる。人見知りはしないようだ。
子犬に手をさしのべると、手をペロペロと舐めてきた。
「うわぁ~、可愛い」
「ヤバいな、すげー可愛い」
「餌どうしようかなって思ってるんだけど……」
「餌……」
冷蔵庫から何か食料を出せばサーモンに怪しまれる。リビングから冷蔵庫は見えてしまうから。
「やっぱりサーモンに聞いてみる?」
「そうして駄目って言われたらどうしよう」
「サーモンはお母さんじゃないんだし、許可してくれそうな気がしなくもないんだけどな~……」
「うん、お母さんじゃない。……けどねぇ…………」
うずうずしていると、俺達の上にある家の窓が開いた。
「何してんのお前ら」
「「うわっ」」
サーモンがそこから顔を覗かせた。
「何で窓開けたの!?」
「いや、声が聞こえたからちょっと見てみた……って」
サーモンは明らかに俺とフワワで隠してある、厳密には隠しきれてないが、一応隠してある段ボールに目をやっている。
「何それ可愛い、何でいるの」
「サーモン、これ飼ってもいいかな」
「へ? 飼う?」
すっとぼけた声で言ってきた。
「この子捨て犬だよ? 見捨てられないよね?」
「お、おう……。俺は別にいいけど、飼い方知らねーよ?」
「飼ってもいいの!?」
「うおっしゃあ!」
俺とフワワは喜びのあまり跳び跳ねる。
「俺責任取らないからな」
「ありがとうサーモン。サーモンは神様だよ」
「見直したわサーモン」
早速子犬を家の中へ入れた。犬に癒されながらも今日の1日が終わった。
最後の犬の話はあまりを埋めたもの……




