22.リュウセイ
「カイザおはよう」
テーブルの側に座っていたフワワが俺に挨拶をしてきた。俺も返すと、サーモンがいないことに気付く。いつもなら夜更かししても俺より断然早く起きているサーモンがいない。
「サーモンは……」
「まだ起きてないみたい」
「え、昨日あんなに早く寝たのに?」
実は部屋の中で何かしてました、とか言ってくるのか。しかし、部屋の中にはテレビや何やらと暇を潰すものがないと思われるのだが。
「サーモンがいないって新鮮な気がしなくもないなー」
「うん、朝は特にな」
フワワの何だかほんわかとした流れに流されながら会話をする。名前の由来もそれなんではないかと思うくらい。
「うおおぉぉぉ」
入り口の向こうからサーモンであろう声が聞こえてきた。階段をかけ走っているのか。
「見ろよカイザー!」
ドアをバンッと思いきり開けて1枚の紙を見せびらかせながらこっちへ歩いてきた。
なになに……。と思いながらその紙を見てみると、スケジュールがこと細かく書かれている。
1日目:依頼2つ終わらせる。
2日目:残りの依頼を終わらせる。
3~10日目:命中率上げを徹底。
この他に円グラフに時間毎に分けられている手書きの図が書かれていた。コンパスを使っていないせいかかなり汚い、いや、使ってないから汚いというレベルではない。
「俺これ昨日の夜少し考えて朝に書いたのよ、偉くね?」
「え、あぁ、俺のために書いてくれたもんね。偉いと言うかありがたいと言うか……」
「カイザこと宇宙人の謎も明かしたいわ」
「いや、意味がわからない」
だから宇宙人じゃない。
そう言いたい、人間だと言いたい。言ってもどうせ宇宙人扱いだけど。
「つーわけだから今日は2つクリアさせるからな、覚えておけよ」
「内容はわからないけどね」
「アイアイサー」
一段落ついたところでフワワは「腹減った」と言い出した。それに答えてサーモンは朝飯作りに取り掛かる。
何かな何かな、とわくわくするフワワ。すると、
「ピーンポーン」
インターホンが鳴った。こんな朝早くに誰だよ、と思いながら俺が出た。
「はーい……」
ゆっくりとドアを開けると、無名戦士が立っていた。驚いた俺はカタコトになりながら「何でしょうか?」と言うと、真顔のままこう言ってきた。
「依頼全て終わらせたんですが、残りありますか?」と。
その答えはどう返せばいいのか。まだ依頼は残っているが、それを渡せばサーモンの考えたスケジュールが台無しになってしまう。俺は別に構わないがサーモンが許さなさそう。
「あ、ちょっとお待ちを……」
俺が決めることではないのでさっさとサーモンに聞いてくることに。
サーモンのいる台所へ急いで向かって即座に言った。
「サーモン、無名戦士が依頼全部終わらせたから他にないかって聞いてきたんだけど」
「はっ!? 依頼全部終わったの!? 早くね?」
しゃもじに乗っかっていた米が炊飯器に落ちていった。愕然としてしゃもじは傾けたまま停止してしまったのだ。
「……まぁ、あいつが求めてるならくれてやってもいいけど……」
「サーモンの考えたスケジュールは?」
「あれは~……命中率強化だけ見ておこう」
渡していいぞ、と依頼書を持ってけと素振りをした。
俺は無名戦士を待たせてしまっている事に気付いて急いで向かった。
「遅れてすみません……これ」
「ありがとうございます。あと、あなた方の仕事奪ってしまって申し訳ない……あ、そうだ。あなた方の活躍ももう少し見たいので、このモンスター退治一緒に行きません?」
「へ?」
思いもよらぬ発言が確かに聞こえた。「一緒に行きません?」だと?
こんな絶好なチャンス今後二度と見なさそうな気がしたので快くオーケーを出した。
無名戦士はペコリと礼をして、「日を改めてまた伺います」と言い残して行った。
俺はなんとなく嬉しかった。あんな喋らなさそうな人が誘うという行為をするなんて。
しかし、勝手に引き受けてしまってよかったのだろうか……。これもサーモン達と相談だ。
「え? 無名が一緒に行こうだって?」
「そんな奇跡あるんだね」
俺は2人に話した。
俺達は朝飯を食べ終えているのでまったりとしている。
「これで仲良くなればカイザはもっと強くなれるんじゃないか?」
「本当に? 仲良くなるだけで強くなるの?」
「あとはいろいろ教えてもらって……」
仲が良い人がそれなりに賢ければこちらも多少は賢くなったりするらしいが、仲良くするだけで強くなれるとは到底思えない。やはり動作などを教えてもらってこそ強くなれるのだと。
「よかったねカイザ……と言いたいところだけど、相手は弓使えるのかな?」
「そこ問題だよな。あと、上手くなるのはほぼカイザ次第だと思うし」
「え、お前今無名と仲良くなれば強くなるって……」
「それと、カイザのやる気次第だよ」
やる気……か。あればいいけど、なんて言ってられないんだよな今は。協会に文句言い付けてやらないといけないから。
「いつ来るんだろうな、ごんじろう」
「ごんじろう?」
「無名の名前~」
「そうなの!?」
いや、そんなわけないでしょ。フワワは詐欺師に騙されるな、絶対。
さすがのサーモンも冗談だということを教えた。
「嘘か……嘘ってよくないんだよ」
「それはカイザに言えや、別世界から来たとか言ってんだから」
「それは本当なのさ」
もうその話はいいから……そう言いたいけど、そうやって逃げて証拠隠滅とか言われたら嫌だから言えないでいる。
「んー。依頼全て渡したから、今日はカイザの特訓といこうか」
「強くしてあげないとだね」
2人は勝手に準備を進め始めた。それに続いて俺も準備を始める。
外へ出ると、太陽が凄く眩しい。眩しいが、暖かいので気持ちがよい。
「春って感じだね」
「そうだな、ちょうどいい温度だし」
準備を終えたのかと思いきや手ぶらだった。服装は戦闘服なのだが、武器は持たず、フワワに関しては戦闘モードである前髪を上げたスタイルではなく、前髪を下ろした普段のスタイルでいる。自分達は特訓しなくていいのかと思うが。
こうして歩みを進めること3分、小さな公園に着いた。この地区はやたらと公園が多い気がするのは気のせいか?
「ここで連し……」
「ここで練習」とでも言いたかったのだろうが、止まった。なぜなのか?
「見ろ、あれ」
俺とフワワに小声でそう言ってきた。サーモンが言う方へ向いてみれば、無名戦士が何やら剣を振り回している。無名がいつも使っているであろう大剣ではなく、普通のサイズの、日本刀くらいの太さの剣。
「俺達があそこに行ったらあいつ場所移動すっかな」
「なんかしそうだね。あっ、すいませんって言ってどっか行きそう」
「行ったら行ったでいいでしょ」
躊躇わずに行こうと俺は言って2人を押しながら進む。
押してる途中無名がこちらに気付いたのか、こちらを向いてきた。
「あっ……と」
「おはようございます」
「お、おはようございます……」
気付かれて若干、いや、かなり動揺しながらも答える。
「あの~、今は何を?」
「今は型をある程度覚えておこうと思って」
「なるほど。あの、急で申し訳ないのですが、こちらカイザの弓の特訓を一緒にしていただきたいな~……なんて」
まさか今ここで言うだなんて。全然喋った事もないのに、そう簡単に受け入れてくれるのだろうか。しかも相手は怖そうなのに。怖そうだけど、依頼一緒に行かないかって誘ってきたのだが。
「弓か……。学校で弓についてもある程度学んだから……まぁ、教えられるかもしれませんね。特訓付き合います」
学校……。戦士になるための学校でもあるのだろうか。それならこの強さも、まぁ納得できる気がする。
「弓見せてくれません?ついでに矢も」
無名は俺に手をさしのべてきた。素直に弓と矢を手渡すと、無名はじっくりと見つめる。
僅か数十秒の沈黙の後、無名はこう口にした。
「弓はいいけど矢が弱い。これじゃあ小型動物しか殺せない……と思います」
「あ~、矢な。弓ばかりに気を取られてた」
「矢を新調すればまた変わると思うんですよ。後は射撃能力」
「これがカイザの欠点だな」
申し分ない。風が吹かれれば尚更難しい武器だと思う。吹かなくても難しいのだから。
「射撃能力は……うーん。いきなり遠くの物を狙おうとしても意味はないんで、近くから徐々に遠ざけていくのが無難なやり方かと。あなたも銃の練習そうしませんでした?」
「え? いや、別に。俺は最初から上手かった」
なんてナルシストなのだろうか。事実を言ってるので仕方ないが、腹立つもんは腹立つ。
「あっ……最初から……。才能あるって羨ましい。さて、カイザ? の特訓を始めてみましょうか」
「おう。それより名前は? 俺はサーモンだけど」
「あれ、フルネームで言わないの?」
「あ、サーモンの刺身だ、うん」
「変わった名前……」
もっと馬鹿にしていいのだぞ? そう思ったが、口に出せば争いになってしまう。
「そんでこれがカイザでしょー、あと1人が…………あれ?」
どこ行った? とサーモンが探すと、少し離れた所でしゃがんでいた。しかも地面をいじって何をしてるのか。
「ちょっとフワワ! 何してんのー?」
「うん? あ、ごめんね、今行くね」
ガチで何をやってたのだろう。手を払いながらこちらへ向かってきた。
「んでこちらがフワワな。見ての通り馬鹿&天然」
「ほう、ありがとうございます。俺はリュウセイです、よろしく」
「よろしくな、リュウセイ」
かっこいい名前だなと思っていると、サーモンはリュウセイに「タメ口な!」と大きい声で言った。相手は快く引き受けてくれたのでやりやすい。
眼精疲労で目が尋常じゃないくらい眠たくて進みませんな、申し訳ない
とか言って眼精疲労じゃなかったり。でも、頭痛もするので多分そうです。……蓄膿症と症状似てるけど
毎日投稿したい。どうしても日にち空いてしまう
誤字脱字あったらスルー




