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音のない異世界で、俺は音を創る勇者になった  作者: 為世 斐文


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8/9

第8話「ギターの音」

 拠点へ帰ったのはいいものの、俺の作ったギターがゴブリンには通用しなかった。

 確かに音ではあるが、何か決定的なものが足りないのだろうか。

「レネー、起きろ」

 レネーはずっと静かに寝息を立てて、俺に全体重を任せている。

 仕方ない……ベッドに寝かせるか

 レネーをベッドに寝転がせて、ギターを手に取った。

 再度、音を鳴らしてみる。

 んー……我ながらに、音の再現戸は高いと思うんだがな……

 ギターの音色と、剣から出る音の違いと言えばその大きさと、重低音かどうかの違いだ。

 剣からはまるですべてを飲み込むかのような重低音が聞こえてくる。

 やっぱり、スキルとかが影響してるのか……?

 ギターを弾くとき、ギターは特段発光などしていない。それが原因だというのであれば、俺には向いていないことになってしまう。

「スキルの使い方とか、どこかで知れたらいいんだけどなー……」

 独り言をぼやきながら、ギターを弾いていると、店に誰かがやってきた。

「カイト殿はいるか」

 ん……この声は

「今行きます」

 確認に向かうと、そこには気前のいい王様フィレアが立っていた。

「どうされましたか?」

「いや、その……オトを聞いてからというもの、それを聞きたくて体がうずうずしてしまってな……恥ずかしながら、仕事に精がつかないんだ」

 フィレア様は恥ずかしそうに体をもじもじしながら、物欲しげに俺の顔を見つめた。

 なんか……二人目のレネーが生まれたみたいだな……

 そんな感覚に陥りながら、もっと音楽を広げるためにもギターを演奏することにした。

「どんな感情になりたいですか?」

「それは、好みの感情にさせることが可能ということなのか?」

「まあ、はい」

「すごいの……」

 悪くはないな……

 褒められてまんざらでもない気分になった俺は、ギターのチューニングをしながらフィレア様の言葉を待った。

「それなら、心が清らかになるものを注文しよう」

「承りました」

 清らかと言えば、夏、海、ラムネ色、水、空、透明感、こんなものか

 それとなく、海の音が聞こえてくるような音色を響かせるとフィレア様は満足げに目を閉じて、音に聞き入った。

 今後とも仲良くしなきゃいけない人だからな、サービスしてもいいだろう

 それっぽく、歌を付けて曲として聴かせると、フィレア様は口を開けてただ固まった。

 まるでレネーが最初にギターの音を聞いた時と同じような顔だ。

 どうだ……! 音楽って素晴らしいだろう!

 俺も気分がよくなって、高らかに歌声を響かせた。


「お主、一体何者ぞ」

 演奏が終わったとき、フィレア様は首を傾けて俺を注視した。

「あー……ここに引っ越してきた者です」

「どこから来たのじゃ?」

「遥か遠く、戻れるか分からない程の場所からです」

「長旅をしておるのか」

「そんな感じです」

 フィレア様とひとしきり喋っていると、奥の方からレネーがやってきた。

「おや、レネーも居たのか」

「あ、フィレア様」

 レネーは眠そうに目を擦った。

「やっと起きたな」

 いたずらに笑いながら言うと、レネーは慌てた様子で頭を下げた。

「カイト様、すみません。お手を煩わせてしまって」

「いや、いいよ。俺もこのギターの欠点を知れたし」

「なんと、それにはまだ欠点があるのか?」

「はい。今のギターじゃ、まだ魔物に対してそこまで効力がないようでして、もう少し企業努力が必要になってくるかと思います」

「そうか。重責になってしまって申し訳ないな」

「いえ、俺は音楽のためならば命だって差し出せますので」

「それなら、安心じゃな」

 しっかし、フィレア様ってスラっとしててかっこいい人なのに、口調が面白いよな……

「レネーとはいつ出会ったんじゃ?」

 この最後の「じゃ」とか、面白い

「森の奥深くで、俺が彷徨ってるところを見つけてもらったんです」

「そうであったか」

 なんというか……将軍? みたいな喋り方だよな……変なの

 そして、俺はもう一つ気づいたことがあった。

 フィレア様……少し、話に抑揚と音程がつき始めてないか……?

「たまにこうやって顔をのぞかせるかもしれん。また、頼んでもいいだろうか」

 やっぱり……ひと昔のレネーにそっくりだ

「はい。お留守にしているかもしれませんが、基本的にはここに居ますので、なんなりと」

「では、頼むぞ。また会いに来る」

「はい」

「あ、送ります。フィレア様」

「よい。レネーはカイト殿のそばに居たらよい」

「分かりました」

 音に触れたから……なのか?

 多くの疑問を残して、フィレア様は店を後にした。

 てか、よく俺の場所分かったな……

「カイト様、ゴブリンは倒せましたか?」

「いや、それが倒せなかったんだよ」

「そうでしたか……」

「まだまだ、改良の余地があるってことだな」

「付き添います!」

「おう。頼む」

 お前はギターの音色が聞きたいだけだろ

 レネーの言葉は俺に向いているのに、視線はずっとギターに向いている。

「寝起きの体に一発ギターをキメたいんだろ」

「あ……えっと、はい!」

 レネーはまた子供の用に隣に座った。

「仕方ないな……」

「お願いします」


 結局その日はレネーに曲を聴かせて、少しギターの調整をしていたら日が暮れていた。

 しっかし、レネーもフィレア様も、俺が演奏を聴かせた後からまるで音を取り戻したかのように棒読みじゃなくなったよなー……音を失ったとかでは、ないか……だって知らなかったしな

 疑問が深まっていく。

 何にせよ、フィレア様が気に入ったってことは時期に音楽は繁盛するな。楽しみだ……

 高揚する心のなか、俺は元居た世界での曲を思い出しながら目を瞑った。


「カイト様」

「ん……」

「もう朝ですよ」

 眼を開けると、ポニーテールにしているレネーが居た。

「今日は髪型違うんだな……」

「はい。なんとなく、これにしました」

 首回りがすっきりとして、その骨格の良さが露見されている。

「いいじゃん。似合ってるよ」

「あ、はい」

 ん……求めてなかったか

 レネーは目を下に落としてお辞儀した。

 なんか、降られた気分だ……

 勝手に悲観的な気持ちになりながら、今日もまた作ってくれている食事に手を付けた。

 こっちの世界の食事は若干似通ったところもありながら、全く変わった味をしていたり、感じたことのない新しい触感があったりして、斬新でいて慣れない。

 でもレネーの作る料理はとても美味しくて何杯でも食べていられる。

「今日は何するんですか?」

「そうだなー……まずはギターの素材、構造の見直しと、試し弾きかな」

 そういうとレネーはいつも通り、顔をきらきらと輝かせた。

「完成するまでは長いだろうし、一度聴いてからにしとくか?」

「ぜひ、お願いします!」

 元気よく答えたと思ったら、食べるペースを上げた。

 そんなにかっこむなよ……

 レネーは第一印象としてクールで真面目で、凛とした女性だと思っていたが、案外子供っぽくてかわいげがある。

 そういえば……

「レネーって今何歳なの?」

「今は十九歳です」

 十九か……三歳も下なんだな

「カイト様は何歳なんですか?」

「二十二だよ」

「三歳も上だったんですね。もっと若く見えます」

 おいおい、言ってくれるじゃないか

「何歳に見えてたんだよ」

「同い年くらいです」

「そうか」

 そんなに俺のお肌年齢よかったかな……

 たわいもない会話を続け、食事が終わったらギターを響かせた。

「今日も頑張ります!」

「おう」

 レネーは王に努める身として仕事に出ていった。

 さてと、ギターを見直していくか!

※この作品は他サイトでも掲載しています。

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