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音のない異世界で、俺は音を創る勇者になった  作者: 為世 斐文


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第5話「羽、羽、羽……」

 門の方へ向かうと、すでに精鋭部隊だろう甲冑を着たいかにも騎士の人たちが集まっていた。

 おお……血の気が盛んな奴らだ事

 そんなことを考えながら、俺はすぐに蔵の方へと向かった。

 俺の素材たちは誰にも触れさせん!


 蔵までつくと、門の方では戦闘が始まったようだ。

 遠くからでも、迫力あるな……

 まるで映画館の一番前の席で、アクション映画を見ているような感覚だ。

 お、いいぞ! そこだ! ああー……

 なんて楽観的に見ていると、食い止められなかったのか何匹かのハーピーがこちらへ飛んできた。

「お前ら! そこで止まったほうが身のためだぞ!!」

 そう警告を叫んだが、ハーピーに届くはずもなく、ずいずいとこちらへ向かってくる。

 仕方ねぇやつらだなー……羽って何か素材に使えたっけか?

 色んな楽器を頭に思い浮かべながら、剣を抜いたその時、耳をつんざくような甲高い音が鳴り響いた。

 な、なんだ……!?

 この世界で初めて聞く音だ。

 いつもなら中音域か、低音域くらいの音しか聞こえないのに、この一瞬だけはギターのハーモニクスのような、超高音域が鳴り響いている。

 耳を塞いでも耳を貫通して、行動が制御される。

 なんなんだよ……!

 目も閉じていないと痛くなる。

 薄目でハーピーの位置を確認すると、もうすぐそこまで来ていた。

 そして、そのハーピーの口が開いていた。

 まさか、あいつらがこの音の発生源か……!?

 これは厄介だ。

 近くの家の窓が割れたような音が聞こえてきた。

 高くて、一定の音を保つ能力がある。

 その音楽のセンスは認めるけどよ……こりゃちっとばかし、

「マイナーな人にしか刺さらないぞ!!」

 剣をしっかりと握ると、また緑色に発光した。

 お、きたきた!

「これが俺の音楽理論だ!!」

 また空を斬るように剣を振ると、超高音域の音を量がする、爆弾が爆発したのかというほどの超低音域が鳴り響いた。

 うっほ、やっぱりしびれる~!!

 音圧で悦に浸っていると、目の前のハーピーたちはドラゴンやウルフ同様に、地面に倒れていった。

「こ、これまずい……動けないぜ……」

 音に魅了された俺は、体が痺れて動けなくなった。

 あほ面で空を見ることしかできない。

 はぁー……心にしみる……

 涙があふれて、神様へ感謝の気持ちが滲み出る。

「音楽ってこうじゃなきゃなー……」

 音圧で魅せられる曲は大好きだ。

 あの何も言えなくなる感覚。音の圧で言葉を発することが出来ても届かないあの崇高的なオーラ。

 何にも変わらず、独創的で、神秘的で、爆発的なあの強い痛みは、俺の心を鷲塚んで離さない。

「カイト様!!」

 ん……?

 ハーピーみたく道端に膝から倒れこんでいる俺の横に、レネーがやってきた。

「あ、お前、どこ行ってたんだよ」

「鐘が鳴り響いたので、そちらに行っておりました」

 まあそうか……レネーも一応は国に使える魔術師って言ってたしな……

 レネーと出会った当初、レネーは国に使える魔術師だから、国の事なら何でも聞いてくれと自己紹介してきた。

「でも今の、あれってガッキですよね!」

 レネーは顔を輝かせて、俺を持ち上げた。

「そうだぞ」

 地面に倒れこむハーピーを横目に、俺は地面に足をついて立ち上がった。

 ハーピーの群れはまだまだいるみたいだ。

 ここで待ち構えていても、俺がまた低音域に魅せられてしまえば、リロードする時間がかかってしまうな……しかも、素材を一つの地点に集めたほうが回収がしやすいか……

「レネー、門まで向かうぞ」

「はい! 勇者様!」

「あ、お前、それ大工の人たちに言おうとしてただろ!」

「はい」

「絶対に! 誰にも! 言うんじゃないぞ!!」

「……はい。分かりました」

「なんだその間は、」

「分かりました」

「お前、絶対に分かってないだろ!」

「分かりました」

「はぁ……」

 それしか言わなくなったレネーに諦めて、とぼとぼと門の場所までやってきた。

「下がってください……ってレネーさん。この方は」

 騎士の一人にそういわれたレネーは俺の子犬のような目を見てか、溜息交じりに答えた。

「新しい、魔法が使える者です。一気に広範囲の魔物を倒せるので、今の状況に打って付けかと」

「そうでしたか! では我々が尽力してお守り申し上げます!」

「おう、頼んだー」

 意外だな……絶対に言うと思ったのに

 そんなことを考えつつ、俺はさっさと剣を振って、降ってくるハーピーのリズムと、重低音の奏でる音楽に聴き痺れた。

 くあぁっ……! これもまた一興……!! 素晴らしい!!

 まるで、指揮者になったかのような感覚だ。

 いやー……楽しかった。

「さ、レネー、素材を回収しようか」

「あ、はい。分かりました」

 手際のいいレネーと共に、固まる騎士たちをよそに俺はハーピーの羽を一つ一つ丁寧にむしり取った。

「す、すごい!!」

「英雄だ!」

「いや勇者だ!!」

 うわっ、最悪だ……

「いや、そういうんじゃないんで。あの、ハーピーの羽むしり取って貰っていいかな」

「あ、え?」

「早く。素材は鮮度が命なんだ。これで綺麗な音色にならなかったらどう責任取ってくれるんだ? ああ?」

 にらみつける俺に委縮した騎士たちも、みんな黙々とハーピーの羽をむしり始めた。

「お、俺……こんなむごいことしたくないよ……」

「し、仕方ないだろ。救ってくれた英雄が言ってんだ。口より手を動かせ」

「で、でもよぉ……」

「はははっ、嫌なら帰ってくれても構わんよ。その分の対価はたんまりとお金で支払ってもらうがね?」

「い、いえ! やらしてください!」

 おお、素直。そういう子嫌いじゃないよ

 ぐちぐち言っていた騎士たちのおかげで、素材回収はかなり早く終わらせることが出来た。

「いやーご苦労ご苦労」

「あのー……それ、何に使うんですか?」

「お、おい、それ聞くのかよ……!」

「ああ、楽器に使うんだ。まだ何に使えるか浮かんでないけど、まあそうだなー……ブラシスティックには使えるかもしれないな。あのドラムの、ジャズとかでよく使ってるやつだ」

 専門用語を並べた訳でもないのに、騎士たちは顔を見合わせてぽかーんと、口を開いたまま動かなくなった。

「私が説明します!」

 妙に乗り気なレネーが騎士たちに楽器について分かりやすく説明を始めた。

 んー……帰るか

 別にここに居てもすることはない。それなら帰って早く楽器の制作に取り掛かったほうがいいだろう。

「あ、冒険者ギルドの方に問い合わせをしてみてくれ。きっと報酬の金貨がもらえるはずだ。このバッチを渡せば、きっと沢山もらえる。貰ってくれ」

 一人の騎士から、それを預かった俺はウキウキな気分で換金に向かった。


「あ、地縛霊様……」

「違う!」

 俺はすっかり地縛霊として定着してしまったようだ。

「俺は生きてる」

「聞こえない……」

 うぜー……あ、そうだ

「このバッチ、お金に換金できるって聞いたんだけど」

「おや……」

 騎士からもらったバッチを見せると、受付の人の態度が変わった。

「これはこれは……大変失礼いたしました。すぐに換金に参ります。あと、冒険者ギルドに名前を登録しておきますね。名前はカイト様でよろしいでしょうか?」

「ああ、それで頼む」

 やけにすんなりと通ったな……そんなにすごいバッチだったのか

 数分もしたら受付の人は、年末の福袋かと言うほどデカい袋に沢山の金貨を入れてやってきた。

「これ、全て俺のですか?」

「はい! もちろんでございます」

 おー……

 前の金貨と比べると、確かに光沢や細かいところの作りが丁寧な気がする。

 これなら、工具一式買えそうだな!

「あざまーす」

「またのご利用、お待ちしております」

 沢山の金貨を持って、鍛冶場にも寄り、工具一式を買いそろえた俺は拠点へと帰った。

「ふうー……しっかし、ちょっと疲れたなー……」

 床に倒れこむと、視界に顔が映った。

「レネーか……ここに来てたんだな」

「はい。カイト様の姿が見えなかったので」

「そっか……」

「夕飯、食べますか?」

 もうそんな時間か……

「そうだな」

「作ってまいります」

「おう」

 おう? なんか、家政婦みたいな感じになっちまってるな……まあいいか

 レネーの作ってくれた夕飯を食べた俺は、今日はそのまま眠りについた。

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