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音のない異世界で、俺は音を創る勇者になった  作者: 為世 斐文


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第4話「ハーピー襲来!」

遅れました。すみません……

「何をしたんですか……!?」

 レネーは俺のそばに近寄ってきた。

 俺もこの状況が上手く呑み込めていない。

「この草……さっきは生えていませんでしたよね」

 握る剣を見ると、やっぱりまだ少し緑に発光していた。

 音楽って、本当にこの世界を救えるんじゃ……

「と、とにかく。これがカイト様の言っていた秘策なんですね」

 腑に落ちていない様子のレネーだったが、俺も腑に落ちてはいなかった。

「そ、そうだ! 驚いたか? そしてこれが楽器という新しい武器の一部でもあるんだぞ!」

 勝手に音のおかげだと決めつけて、俺は誇らしげに鼻を高くした。

「すごいです! これなら数十年かかっても、生み出す価値があります!」

 レネーは純粋で、真面目で、とても助かる。

「だろう? さ、さあ素材を集めて帰るとしよう」

「分かりました!」


 そのあとはレネーと素材をいそいそと拠点と蔵の両方に持ち帰って、一息休憩を取った。

「でも、正直ガッキなめていました」

「だろ」

「これなら魔王も倒せますね!」

 魔王……

「あ、ああ。そうだな」

 珍しくはしゃぐレネーに、ぎこちなく返事をする俺。

 今この瞬間の拠点は対称的な人しかいないようだ。

 魔王討伐とか、俺絶対に行かないからな……!


「さあ、作り始めようか」

「はい!」

 あらかた素材を分類した俺は設計図を見ながら制作に取り掛かった。

「何を作るんですか?」

「まずはな、ギターというやつだ」

「ギター……ですか」

「おう。基本的に五本の細長い弦を手ではじいて、音階を奏でるんだ。アコギと、エレキと、まあ色々と種類はあるが、今回はアコギだな。アコギは優しい音を奏でながら、ベースとメロディ、リズムを取れて、アコギだけでも音楽が奏でられてな、まあ、普通のバンドとはちょっと音圧に派手さはないが、アコギだけで曲を作る人もいてな、そういう人は――て、どうした?」

 アコースティックギターについて、熱烈に語っているとレネーは口を開けたまま眉をしぼめて、動きを固めていた。

「なんだ。レネーも音楽に情熱が湧いてきたのか? 俺に勝てると思うなよ!」

 笑いながら言うと、レネーは首を傾けた。

 ああ……そっか、音楽の概念がないんだった

 レネーの若干音のある声を聞いていると、元の世界と記憶がリンクしてしまって、音がないことを忘れてしまう。

「すまない、すまない。まあ、とりあえずアコギってやつを作るから」

「ああ、はい」

 腑に落ちていない様子のレネーを横目に、とにかく木を切る作業から入った。

 えー、まずは平らにしないと意味ないからな。この木に平な場所を作ろう……

「レネー、やすりってあるか?」

「大工の方なら持っているかもしれません」

「なるほど、大工か……」

 そうだな。小回りの利くのこぎりとやすり、あとは釘とかなんかも貰えたら嬉しいな……そうなるとトンカチも必要だな

「レネー、大工のいる場所まで案内してくれ」

「はい。分かりました」


 レネーに連れられて、絶賛家を建てている最中の大工の元まで連れてこられた。

「おうレネーじゃねぇか。男連れて、デートか?」

 うわ……叫んでいるのに棒読みとか、気が狂いそうだな……

「違います。この方はゆう」

 勇者と言いかけていそうなレネーの口を急いで塞いで、俺が一歩前に出た。

「すみません。俺はカイトという名前の引っ越してきた者なんだ」

「おう、引っ越してきた坊やだったんか。えらい綺麗な服に髪型、しゅっとしか顔立ちしとるから、いいとこの坊ちゃんやと思ったけど、そうか、市民にもおるんやなー」

 関西弁……? てか、俺、今イケメンって言われたよな……おいおい、やっぱりそうなのかよ~

 にまにまとレネーの顔を見ると、レネーは無表情で立っていた。

 うぐっ……

「で、なんだ? 家を建ててもらいたいなら、先に店の方から行ってくれ。俺たちも土地の関係上、適当に建てるわけにもいかねぇからよ」

「ああ、ちょっと自分でDIYがしたいから、工具を貸してほしいんだ」

「なんだ、その〝デーワイアイ〟って」

 真剣にそういう様に不覚にも笑ってしまった。

「えっと……家具を自分で手入れしたいんだ。箪笥を作ったり、ドアを修復したり」

「ほー、なるほど。それなら、向かいの鍛冶場から買いな。やっすく売っとるし、俺らも家建てなあかんからな、ずっとは貸しておけんのだよ」

 まあ確かに……

「そうだな。ありがとうございます!」

「あいよ! レネー頑張れよお!」

「はい! 失礼いたします!」

 そうか……確かに、借りるというより買った方がよかったな

 レネーの案内の元、俺は鍛冶場にやってきたのだが、

「あー……足りないですね」

「……まじっすか」

「はい。その金貨、ひと昔の金貨なので、今じゃ市場価値がないんですよ」

 まじか……

 蔵にあった大量の金貨を出したが、トンカチと釘だけしか買えない金額だったようだ。

 ざっと二百枚はあるのに……そんなに市場価値がないとは……

 途方に暮れていると、街中に鐘の音が鳴り響いた。

 あの、ドラゴンやウルフを街の方まで連れてきてしまった時に聞いた音だ。

 レネーは慌てた様子で俺を置いてどこかに行ってしまった。

「あ、レネー!」

 俺はレネーがいないと、迷子になってしまう。

 まずいまずい……

「すみません。ちょっと保留で」

「あ、はい。でも、逃げた方がいいですよ」

 店主は恐怖に沈んだ顔を浮かべた。

「なんでですか?」

「魔族が攻め入ったんですよ……たまにありますが、ここは門から近いですからね……王都の方へ逃げないと、殺されます」

 それを聞いた瞬間に背中に冷たい氷をあてられたように体が震えた。

 し、死ぬだと……

「に、逃げよう!」

「あ、はい……」

 俺は店主を連れて、門から遠ざかる方へと走った。

 なんか分からんけど、死にたくはない!

 俺は不甲斐ない男だ。

 でも、これでレネーも俺を勇者だと思わずに、見損なった男だと認識してくれるかもしれない。

 俺に勇者だとかの重責は荷が重すぎる。

「ハーピーの群れが現れたぞ!!」

 どこかの誰かがそう叫んだ。

 ハーピー……ハーピーってあの鳥人間のことか?

 空を見上げると、確かに点々と何かがこちらに向かってきているように見えた。

 羽か……羽毛って何かに使えるかな……

 逃げながらも、俺はハーピーという珍しそうな魔物いや、素材について思考が回っていた。

「なあ、ハーピーってどんな見た目してるんだっけ」

 隣を走る鍛冶屋の店主に訪ねると、店主は怯えたように喋り始めた。

「あいつらは……獰猛な魔物です。風で建物を破壊し、人を吹き飛ばし、薄く伸ばした鋭利な空気を飛ばして、体を……」

 そこまで言って口を震わせた。

 ふーん……ん?

「それってさ、蔵とかの倉庫を重点的に狙ったりするってことなんすか?」

「ああ! 俺もあいつらのせいで昔、大赤字をくらったんですよ!」

 おいおいおい、それはちょっと待てよ……

 俺の蔵は門からすぐ近くの場所に位置している。せっかく集めた木や、ひげと皮たちを吹き飛ばされては迷惑だ。

 俺はすぐに方向転換して、門の方へと向かった。

「え、ちょっとどこに行くんですか!」

「先行っといて下さい。ちょっと守りたいものがあるので!」

 くそ野郎ども、俺の楽器の素材には一つも手を付けさせないぞ!!

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