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音のない異世界で、俺は音を創る勇者になった  作者: 為世 斐文


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13/19

第13話「鱗皮の大蛇」

なかなか更新できなくてすみません……。微熱でバタンキューしてました。

「まずドラムに必要な素材を考えよう」

「はい!」

 レネーに軽く説明すると、どうやら音はないくせにリズムを取る文化だけは健在しているようだ。

 リズムとは言わずに、名前もつかない「儀式」として呼ばれているらしい。どうやら祝い事などの時に行う儀式でリズムを取るみたいだ。

「ドラムは、とりあえずデカい皮だな。プラスチックってないんだろ?」

「プラスチック……?」

 レネーは頭の上にハテナを浮かべて、首を傾げた。

「まあ、ないんだな。ビニールとかもないんだろ」

「ビニール……?」

「了解……」

 ドラムの中で、一番基礎となってくるパーツ、バスドラムは基本的に耐久性の高いプラスチックが使われる。

 そうでもしないと、破れてしまうし、音もあの響く低音にはならないからだ。

「何をご用意いたしましょう?」

「そうだな……細長い棒で何回突き刺しても破れない耐久性を持った皮が欲しい。しかも張りが合って、伸びるというよりは、固い皮がいいな。金属製はだめだ」

「んー……ちょっと考えます」

「おう」

 まあ、そんな好物件な皮なんてそうそう見つからないだろうな……だって、それは伸縮性が出来ない、いわば魚の鱗を皮にしてるようなもんだもんな……

 気長にレネーの回答を待ったが、やはりレネーでも検討がつかないらしい。

「仕方ない……諦めるか」

 俺がそういうと、レネーは一歩前に出てきた。

「フィレア様に聞いてみましょう!」

 王はどんな仕事をするのか知ってるのか……?

 そんな素朴な疑問を持ちながら、レネーに呆れた表情を浮かべるとまたまた都合のいいお方だこと。

 フィレア様が忘れ物をしたと戻ってこられた。

「フィレア様!」

 レネーはすぐに飛びつき、フィレア様にまくしたてるように説明をした。

「ふむ……そうだの」

 でた殿様言葉……

「西の方で、それこそ金属ともまた違った皮膚をした大蛇が暴れているという話は聞いておる」

「大蛇……」

「ああ。金属ではなくつるつるした表面で、剣が滑って傷一つとつけられないと報告をもう何通も届いておる。ちょうどさっきもそれで援護の要請を貰った」

 つるつるした……それってもはやプラスチックなんじゃ?

「フィレア様。私が、命を懸けて倒しに行きます」

「いや……カイト殿はこれからも楽器を作り続けてもらわねばならない。だから勝てる確信のない以上は向かわせるわけにもいかないのじゃ」

 まあ……素性の知れない魔物なんだもんな

「しかもあそこ周辺は、今頃魔王軍の侵攻も活発なんじゃ」

「魔王軍……?」

「ああ。だから“勇者が見つかるまで”護衛も出来ないし」

「あ、それな――」

 絶対にいらぬことを言おうとしたレネーの口を塞いだ。

「大丈夫ですよ。俺を信じてください。なんたって、あのハーピーの群れを瞬殺した男ですよ」

 かっこつけて顔を斜めに、イケメンスマイルを見せたがどうやらこの世界はイケメンに疎い女性が多いようだ。

「じゃがな……」

「レネーが連れて帰ってくれると言ってます」

「ほう……でもレネーはまだ転移魔法が初級レベルで」

「前、使えたんですよ!」

 今度はレネーに辱める言葉を喋るフィレア様に言葉をかぶせて、制止させた。

 全く……この世界の女性には手がかかるな……

「カイト様……?」

「黙って合わせておけ……」

 レネーは気づかれない程度に小さく頷いた。

「まあ……絶対に無理をしないというのであれば、馬車は出そう」

「はい。絶対にしません。まだまだ楽器作りたいですからね」

 そういうと、フィレア様は微笑んだ。

「そうじゃな。そなたはガッキに触れている時は清々しいほどカッコよい。それならレネーに任せよう」

 今、カッコいいって言ったよな……!

 嬉々とした顔でレネーを見ると、レネーは真顔でこちらを見て来た。

 なんかデジャブだな……

「気を付けるんじゃぞ」

「はい! 任せてください!」

「期待しておる」

 最後にまた微笑んでフィレア様は拠点を出ていった。

「レネー、やっぱ惚れ直したでしょ」

「キモイのでやめてください」

「……はい」


 馬車に乗って、俺は大蛇のいる場所までやってきた。

 うわー……確かに暴れてるな

 周りを見渡すと、生えている途中から乱雑に折られた木が多数見える。

 全て大蛇がやったのか……

「むごいな……」

 所々に血の付いた鉄の破片が転がっている。

 きっと大蛇にやられていった兵士のものだろう。

「カイト様……くれぐれも無理はしないでくださいね。今回は完全に未知数なので……といっても、あまり不安感はないんですけど」

 でしょうね

 レネーは一応の確認と、明るく俺に声をかけて来た。

 まあ、目の前で前の勇者を倒したというあのシルバースを瞬殺したんだから、こうなるのも無理はない。

「それより、大蛇の皮って何で出来てると思う?」

「そうですね……未知なる物質の可能性があるので、私の口からはなんとも言えませんが……強いていうのなら、魚の鱗を一枚の皮に引き延ばした、そんなところでしょうか」

「おお……」

 レネーって相手の心読めたりすんのか……?

 俺の思っていたようなことを全て当ててきたレネーには驚きだ。

 しかもほぼ一言一句間違いがない。

 そしてそれが本当だとするのなら、もしかするとドラムにうってつけの素材かもしれない。

「暗くなる前にさっさと討伐して帰ろう」

「はい!」

 ん……

 元気よく答えたレネーの背後に、何か光る丸い球が映った。

 これってもしかして……

「レネー、俺の後ろにいろ」

「え?」

 レネーを背後に移動させて、俺は剣を構えた。

「もうすでにいるな」

「え……でも魔力探知は反応をしめしてません」

 となると……どういうことなんだ?

「それってさ、魔物全般に効くものなのか?」

「はい。ただ一部例外はあります」

「というと?」

「物理攻撃をしてくる魔物です。あらかた九割の魔物は魔法を使うので検知が出来ますし、大蛇と言えば、以前は魔法を使う名高い魔物とされていました。今回が特殊な異種だとはあまり考えられません」

 ふむ……

「分かった。じゃあ様子見を――」

 言葉を喋ろうとした時だった。

 目線の先に大剣がぶんぶんと空を斬ってこちらに飛んできていた。

「レネー……!!」

 レネーを跳ね飛ばして、俺はそれに覆いかぶさるように守った。

「ってて……大丈夫か」

 レネーに手を貸すと、レネーは驚いているのか頷くだけ頷いて手を取った。

「やっぱり、何かには狙われてるな……」

 ん……?

「レネー?」

 後ろを見ようとすると、レネーが俺の頬を押し返し、後ろを見せないようにしてきた。

「こんな時に何してんだよ」

「今は、後ろを見ちゃダメです」

「は?」

「なんでもいいので、絶対に見ないでください!!」

 そう言って横を向いていた俺の顔は、レネーのびんたによって前に向いた。

「いってぇーー……!」

 あの大剣よりも鋭く、強い痛みなのではないかと思えてくるほどに痛い。

 どんなけ力込めてんだよ……

 意味が分からな過ぎて、とりあえず俺も探るように剣で空を斬ってみた。

 お……今回は緑色か! 重低音が鳴り響くぜ……!

「うなれ!!」

 剣を横に振ると、辺りに重低音が鳴り響いて地面が揺れた。

「うぉぉぉーーー!!」

 また重低音の音圧に体を痺れさせられていると、目の前でどすっと大きいものが落ちてくるような音が聞こえた。

 ん……

 その音で体の縛りが解けた俺は、レネーを放って見に行くことにした。

 ほお……

 そこには目をくるくるさせた半分人間、半分蛇の魔物がいた。

 まあ、倒したってことだな

 一応でとどめの一撃としてまた剣を振るうと、今度は黄色に光った。

 おいおいこんなの、音をキメすぎてハイになっちまうよぉぉ……!!


 数分経って、俺の体は動くようになった。

 はぁ……心地よかったな……

 とりあえず、俺の数十倍とある大蛇の死体を、なんとかレネーのいる辺りまで引っ張ってきたが、レネーが見当たらない。

 ん……?

「レネー?」

 声を張り上げてみたが、聞こえていないのか、何も返事が返ってこない。

 どうした……?

「レネー!!」

 さっきよりも大きな声で叫ぶと、近くの茂みが微かに動いた。

「おい、レネー?」

 茂みをかけ分けると、そこにはしゃがんで動かないレネーが居た。

「何してんだよ。早く帰ろうぜ」

「あ、あの……」

 ん……?

「レネー、服着替えた?」

 さっきまでは露出なんてものは一切ない服を着ていたのに、今は背中側がもろだしで、へそ辺りまでは服がないように見えた。

「カイト様……」

「ん?」

「服が……破けてるので見ないでください……」

 振り向いたレネーは大層赤くなった顔をしていた。

「あ、ご、ごめん……」

 どうやら最初のよけた時点で地面とこすれてか破けてしまったみたいだ。

 きっとそこら中に甲冑の破片が散らばっているからだろう。

 俺のズボンも少し傷が入ってしまっていた。

 ああ、ああ……

 結局、レネーが応急処置を施すまで拠点に帰れず、そのまま日が暮れてしまった。

※この作品は他サイトでも掲載しています。

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