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音のない異世界で、俺は音を創る勇者になった  作者: 為世 斐文


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第12話「旋律の効果」

 フワツジは俺の膝の上で鳴いた。まるでもっとギターを鳴らしてほしいと言わんばかりに。

 こいつ出来るやつか?

 いつも通り、明るい和音のメジャーコードを鳴らすと、それにあったような旋律を鳴らした。

 うぇ……音楽センスいいな

 今度もみんなに効かせたように、悲し気で神秘的なセブンスコードを鳴らした。

 するとフワツジはそれに対応するように、荘厳な雰囲気と、神々しい教会の中にいるかのような錯覚を生み出す旋律を奏でた。

 おおお……

「お前、やるな!」

 フワツジを抱きかかえると、今度は嬉しそうに翼をばたばたと広げた。

「なあレネー、こいつ飼おうぜ」

「え……いや、」

 レネーは顔を歪ませた。どうしたというのだろうか。

「こいつ、害は及ぼさないんだろ? 中立的な立場で」

「そう、なんですけど……」

 目を伏せて悲し気に手を重ねて、その手に力を入れた。

「何か問題あるの?」

「一般市民は、それでも怖い人は多くて……見つかれば、魔物と手を組んだとみなされて殺されかねません」

「まじ?」

「はい」

「まいったなー……」

 フワツジはとてもかわいい。

 そして俺のコードに合わせた旋律を即興で奏でられる音楽センスがある。

 マスコットにもなるし、いざ楽器を売るとなったときにはいい相方になってくれそうだ。

「どうにか、ならないのか?」

「そうですね……こればかしは、私でもどうしようもできません」

 まあ……一応は魔物側らしいもんな……

「カメラとかってこの世界にないよな」

「カメラ……なんですか、それ?」

「まあ、だよな……」

 フワツジと俺が演奏している光景を映像として全世界に広めることが出来れば、それだけでいい証拠になるはずだが、カメラがないとなると諦める選択しか思いつかない。

「仕方ない……ごめんな」

 静かに俺を見つめるフワツジを降ろして、俺はギターを手に持った。

「たまに弾きに来るから、それで会おうぜ」

 そういうと言葉が分かっているのか、喜んだ様子で翼をばたつかせた。

 ここまで可愛くてなついてくれてるのに、連れ出せないのか……でも、今はレネーの気分回復しないとな

 俺はこの草原にあったような曲を、レネーに聞かせた。


 しばらくして、辺りが暗くなってきたころ、帰ろうとする俺に困る出来事が降りかかっていた。

「カイト様……」

 あれだけ拒否反応をしめしていたレネーがフワツジの旋律と、可愛さに撃たれたのか、どうにか拠点で飼いたいと駄々をこねるようになってしまった。

「だから……持って帰ったら危険なんだろ? 俺も飼いたいけど、ばれたら終わるんじゃないのか?」

「ですが……」

 レネーはフワツジを抱きかかえて離さない。

「レネー、帰してあげよう?」

 フワツジもフワツジでそこまで嫌にも思っていなさそうに見える。

 だからこの言葉の意味もないものになってくるが、いいのだろうか。

 このまま連れて帰ってしまって、せっかく王にも認められつつある俺が魔物と手を組んだんなんて話が街中に広がってしまうと、困るのは俺だけじゃない。

 レネーもそうだし、何人かはフィレア様が俺の下に訪ねている場面を見ているはずだ。

 きっと好感度が下がってしまう。

「フィレア様に相談します!」

 お、おお……

 そこまでの行動力を引き立てられてることに正直驚く。

「どうにかなるもんなの?」

「分かりませんが……もしかしたらどうにかなるかもしれません」

 分からないのかよ……

「じゃあ一旦、今日は置いて帰ろう」

 そういうと渋々頷いた。


 翌朝、俺のなぞの物体が頭に置かれていることに気づいて起きた。

 目の前が真っ暗で、どこか温かくて、自然の匂いがして、ふわふわで、獣臭い。

 ん……? まさか

 俺は頭に乗っかる正体を持ち上げた。

 それは翼を広げてバタつかせ、俺の顔をクルクルしてぱっちりとした目で俺を見つめていた。

「おいレネー」

 体を起こして周りを見渡すと、そこにはレネーとフィレア様が居た。

「え……」

 両者ともに、俺の様子に笑みを浮かべている。

「どういうこと?」

 疑問符をフワツジにぶつけると、レネーがこちらに歩いてきた。

「フィレア様から承諾されましたよ」

「あ、そう……なんだ」

 仕事早くね?

 レネーは当たり前かのごとく、真顔できっぱりと言い張るとフワツジを抱きかかえた。

「前々からずっと触りたいと思っていたんです……!」

 ああ、可愛いのに目がないのね……

 フワツジに頬ずりして、曲を聞いた時と同じくらいの笑みを浮かべては幸せそうな声を出す。

 いつもクールで知的なレネーだが、今だけは稚拙な一人の女の子に見えた。

「カイト殿、フワツジは本当にオトを発したのか?」

「ああ、はい」

「そうか……」

 はしゃぐレネーに呆然とする俺に、フィレア様が近寄ってきた。

「承諾はするが……昨日の、あの新しいガッキをもう一度聞かせてくれぬか……」

 手をもじもじとさせて、顔を赤らめるフィレア様。

 この場所には女の子しかいないのかよ……

 そんな気持ちを抑えつつ、俺はギターを鳴らした。

 すると、フワツジが旋律を奏で始めた。

「おぉぉ……」

 レネーもフィレア様も、その音の美しさに心を奪われたかのようにへにゃりと地面に座った。

「これが音楽だ!」

 いい気分いなった俺は朝っぱらから歌った。


 昼前、俺の単独ライブは終わり、フィレア様はまた金貨の入った袋を置いて帰っていった。

 さてと……まず完璧な状態のこれが魔物に効くか確かめるか……

 フワツジにこのギターは効いたのだ。もしかしたら、前のゴブリンなどにもこのギターなら太刀打ちが出来るかもしれない。

 レネーはフィレア様の付き添いに行った。なので今日は俺一人となる。

 まあ、別に大丈夫だろ……

 そんな楽観的な思考で、俺はギター片手に森へ入っていった。

「ゴブリーン、出で来いよーー!」

 そう叫んでもゴブリンは姿を見せない。

 どこにいるんだっけなー……

 適当に探すことはや小一時間、俺はようやくゴブリンを見つけた。

「お、いたいた」

 友達に出会った時のように手を振りながら近づくと、ゴブリンは激高して持っている木をぐるぐると輪をかいて回し始めた。

「まあまあ、そんな血気盛んになりなさんなよ」

 俺はギターを構えて、ゴブリンにギターを向けた。

「さあ、痺れな!」

 俺の声と共に新星ギターが綺麗な音色を響かせる。

 どうだ……

 ゴブリンの様子を見ると、前とは打って変わって振り上げた腕を降ろし、腰を据えて聞いているように見えた。

 ん……倒すんじゃなくて、聴いてる?

 ギターを鳴らすことをやめると、我を思い出したかのように激しく咆哮を上げた。

 ゴブリンってこんな感じに叫ぶんだな……

 その声はすごく尖がっていて、まるで前のハーピーが出した声のようにトゲトゲしい声だった。

「鎮まれ!」

 もう一度ギターを鳴らすと、やはりゴブリンは咆哮を止め、岩に腰を掛けて目を瞑る。

 まるで曲を心から聴いている時の俺みたいだ。

 んー……これはこれでありなのか?

 俺は成果を得られたため、ギターを弾きながら拠点の方へと後ずさんだ。


 拠点に帰るとスッキリした顔のレネーが居た。

「おかえりなさいませ。どこに行っていたのですか?」

「あー、このギターでゴブリンが倒せるか調べにな」

「どうでしたか?」

「なんか、鎮まったってのが一番近いかな。倒すことは出来なかったね」

「そうですか……」

 まあ、フワツジが倒れてない時点でそういうことだったんだろうな……

「今日はこれからどうしますか?」

「そうだなー……」

 ベースは音が聞こえないだろうしな……増強装置を作られればいいんだが……響く重低音となると……

 レネーが鼻歌をリズムよく歌い始めた。

 リズム……ドラム?

「レネー、ドラムを作ってみよう」

「ドラム……ってなんですか?」

「リズムを刻む楽器だよ」

「リズム……?」

 また懐かしいレネーの棒読みが聞こえてくる。

「あー、まあ作ったらなんとなく分かってくるよ」

「分かりました! 新しいガッキですね! 手伝います!」

「おう」

※この作品は他サイトでも掲載しています。

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