【2投稿目】ナホ 写真3枚
写真①:ハチマキを首にかけ、運動場をバックに、教室のベランダで大笑いしている翼とナホ。
ーー高校1年の時。
この写真が20年前だと言うこと信じられない!笑
でも、気持ちは変わってないし、
この時のことは今でもしっかりと覚えてる。ーー
「おはよう!」
入学式。
教室に入り席に着くと、前の席のナホが振り返り言った。
知り合いだっけ?
ナホのおはようの軽さが、翼にそう思わせた。
ナホと翼はあっという間に仲良くなった。
高校では、青春したい、バイトしたい、恋したいだった2人は、一緒に美術部に入った。
もちろん、幽霊部員。
そんな2人に顧問の先生も、何か言う事はなかった。
しかし、ある日の昼休み。
「1年4組 工藤奈帆さん。松戸翼さん。職員室、中野のところまで来て下さい。」
お弁当を食べる手が止まった。
2人で顔を見合わす。
「なんかした?」
「サボりすぎて、いよいよ、退部じゃない?」
そんな事を言いながら、職員室に向かった。
美術部の顧問、中野先生が言った。
「あなた達、中学では運動部だったって?」
「まぁ、はい。」
ナホが答えた。
「私は、マネージャーでしたよ?」
翼も答えた。
「でも、小学校は少年野球の唯一の女子でしょ?」
「なんで知ってんの…」
「工藤さんも、中学は陸上部短距離でしょ?
しかも、県大会出てるわね?」
「なんで知ってんの………」
「今度の運動会、部活対抗リレーがあるの。
出てくれる??」
「えぇ〜、走れるかなぁ〜」
先生が手招きをして、ナホと翼の耳元で囁いた。
「あなた達…バイト2つしてるでしょ。」
2人の肩がギクっと反応した。
「学校の校則はなんだった?」
「「バイトは1人1つ、学校に申請する事」」
「バレたら1週間の停学に、反省文だったかなぁ〜」
2人でダンマリ。
「リレーに出るなら、見なかった事に…」
「「やります!!!」」
そんな事で、幽霊部員にも関わらず、
運動会の部活動対抗リレーに引っ張り出された。
運動会当日。
「ねぇ、やるからには、勝ちたいんだけど!」
ナホが言った。
元野球少女の翼も同じ気持ちだ。
「絶対勝とう!!!」
<位置について、よーーーい、
ドン!!!!>
第1走が走り出した。
案の定、ドベ争い。
2走、3走とドベ争いは変わらず。
4走目、翼。
バトンを受け取り、猛ダッシュ。
久しぶりの全力疾走に、心臓はすぐに高鳴った。
すぐ前を走っていた卓球部とバトミントン部を抜いた。
会場がどよめく。
先頭集団のバレー部、バスケ部、女子サッカー部の真後ろに着き、
「ナホ!!!」
バトンを渡した。
ナホは翼以上に早かった。
先頭集団をあっという間に、ごぼう抜き。
美術部が…
どんどん、どんどん、運動部に差をつけていく。
会場は、何が起きているのか分かっていない様子。
「ナホぉぉぉ!!!いけぇぇえー!!!」
ナホは圧勝でゴールテープを切った。
「「いぇえぇぇえーーいい!!!」」
2人で抱き合った。
運動部が美術部に負けると言う、歴史的下剋上が起きた瞬間だった。
この運動会のあと、
いろんな運動部の先生から、ナホと翼は勧誘を受けたが、2人は3年間、美術部の幽霊部員とバイト掛け持ちをやり切った。
写真②:海の前で、カメラに背を向けピースをする、翼とナホ。
ーーこの写真の写り方が…ダサい。笑
この時、どうやってホテルを抜け出したんだっけ?
先生達に見つからなかった事が奇跡だよね。笑ーー
修学旅行の日の夜。
翼とナホは、ホテルの非常階段で落ち合った。
コソコソとホテルを出て向かったのは、ホテルの目の前の海。
「持ってきた?」
ナホが言いながら、ポケットからマッチとロウソクを出した。
「もちろん!」
翼もポケットから2本、線香花火を出した。
「よしきた!」
2人は、線香花火に火をつけた。
パチパチ
小さな光が点滅する。
潮風が、線香花火を揺らす。
「風で落ちそう〜」
そう言いながら、翼は笑った。
「先に落ちた方がアイスだよーん」
「え!始める前に言ってよ!!」
ナホからの急な駆けに慌てる翼。
翼もナホも真剣線香花火を見つめたた。
そして、
ポトッ。
「あぁ〜!!!!落ちたー!!」
先に落ちたのはナホ。
大袈裟に頭を抱えるナホに、翼は拳を握った。
自販機のアイスクリームを買って、堤防に座って2人で食べた。
翼はチョコバナナ。ナホはチョコミント。
「チョコバナナ好きな人の気がしれない。」
「隣に居てますけど?」
「あぁ。失礼。」
負けた腹いせに小言を呟くナホ。
「チョコミント民より、バナナ民の方が圧倒的に多いと思います。」
「そんなはずない。」
「そんなはずある。」
2人は笑った。
溶けたアイスが、アスファルトに水玉を作っていた。
写真③:卒業式。「卒業おめでとう」と書いてある黒板の前で、花束、卒業証書を持って満面の笑みの翼とナホ。
ーーこの日もすごく覚えてる。
なんだか、帰りたくなくて。
終わっちゃうって気持ちが強くて。それぐらい、ナホと毎日顔を合わせて、中身空っぽのお喋りが楽しくて…。私の宝物。ーー
「終わっちゃったね〜」
誰もいない教室は、声がよく響いた。
「だね〜。子ども終了!」
ナホの声も響いた。
沈黙。
しんみりと、
でも、どこか清々しい。
「帰りますかね〜」
ナホが言った。
「そうだね〜。…車校行かなきゃ。」
「あ、私もだ。」
「てか、ナホ、明日仮免試験でしょ?」
「そーだわ。」
ガガガガ。
椅子を引く音。
「最後に写真撮っとく??」
「山ほど撮ったんだけど。」
翼は笑った。
「本当に最後よ。」
ナホは教卓の前に立った。
「もうないよ?制服着て、ここに立つこと。」
「確かに。」
2人は机にスマホをセットして、教卓に立った。
カメラのカウントダウン。
10
9
「翼?」
8
「ん?」
7
6
「これからも親友で居ようね。」
5
「当たり前じゃん?」
4
2人は笑い合い、腕を組んだ。
3
2
1
カシャ!
ーーナホ。
私の人生があんなに楽しかったのはナホのおかげ。
大学は別々だったけど、それでも私達の関係が切れることはなかったね。
大人になってからも、よく2人でお酒を飲んだ。
一人暮らしをしてたナホの家は、私達の溜まり場。
私の結婚式で、ナホがしてくれた、友人代表のスピーチ。
あの動画は、何回見ても涙が出るよ。
ナホの結婚式のスピーチは、
私しか居ないと思ってたけど、
私はナホの結婚式に出席出来そうにない。
それでも、
私がいなくても、
結婚式はちゃんとやってほしいな。
綺麗なドレスを着て、
これからの幸せを願って。
ナホ、病気を伝えた日以来、
毎日会いにきてくれて、ありがとう。
今にも泣き出しそうな笑顔をしてる。
分かってるよ。
きっと、1人で泣いてるんでしょ?
ナホ、……ごめんね。ーー




