第96話 無駄に騒々しい始まり 〜時空監察官シズカHMS!①〜
今回は、異世界召喚編ではございません。Season3はいろいろ飛びますので。
いちおう、シリーズと順番は判るようにしております
「ミツルさん、ようやく捕まえた」
「ニャ!?」
不定期が基本のミツルは、シズカの姉。悪戯な三毛猫のような人物だ。
それをスコップは今捕まえた。
「ミツルさんもニャって言うんだね、可愛い!でも今度こそ逃さないよ」
「なになに!?私まじめに仕事して帰ってきたところなんだけど?すっごい疲れてるんだけど?」
愛くるしいボイスとは釣り合わないイケメンフェイスも維持できないほど疲れているのか、ポワポワ系の面影がミツルに乗ってきている。
「そんなに疲れているときはこれだよ。三徹まで余裕の栄養剤!」
「大丈夫なやつ?」
「4日目の朝の全能感は、ホント、素晴らしかった」
「ヤバいやつだよ、それ」
「いいから飲め」
このチャンスを逃せば、いつ遭遇できるか分からない。犯罪チックなのは分かっているが、スコップはミツルの口に小瓶を突っ込んだ。
「もが」
「副作用は2日間寝れなくなるだけだから、安心して」
「……どうして私、あの程度のことであんなに疲れていたの?」
ミツルのイケメンアイに光が戻る。かつてないほど丸まってた背中が、仰け反るほどしゃんとする。色を失っていた髪房が黒を取り戻す。片方はもともと白です。
「スコップさん、良いよこの栄養剤!こんな星系3日で落とせるわ!……シズカちゃんがいなければ、いや、それくらい調子いいってことで……」
「意外。ミツルさんもシズカさん怖いんだ」
「怖いとかそういう次元じゃなくて、あの子は……何でもない。そう、シズカちゃんに怒られちゃうってことで」
「やめてよミツルさん!」
作者の寵愛を受けし、神の愛子。その力は本編にまで影響を及ぼす。ということでこの件は「回収」とさせてください。
「ミツルさん、調子が戻ったところで教えてもらえるかしら」
「な、何よ」
「あなた、いったい何が目的なの?」
「エムちゃん!またそんな格好で!」
洞窟でジメジメ過ごすのはあまり性に合わないハルナは、夏休みに入ってからはよくシズカの家に遊びに来ていた。
「自分ちでどんな格好してもいいでしょ」
隙間から色々見えちゃうタンクトップはダメ。下着姿も当然ダメ。エムとしてはこの暑さを乗り切るための最終手段として水着姿でリビングに寝転がっていたのだが。
生真面目なハルナがやって来るたび繰り返される問答。
「ハルナ先生こそ、暑くないの?」
「暑いに決まってるわ」
ハルナちゃんは、半袖ブラウスとタイトなスカート。女教師として恥ずかしくない、イメージ通りの服装だ。上下真っ白なので、この日差しの中、見るものは眩しくて仕方ない!
「暑いなら、冷房をつけなさいな」
この家のエアコンは、吐き出した熱も電気に変換する、この時代では永久機関にも等しいエアコンだ。当然未来技術。
「シズカさんが、北風と太陽、太陽バージョンよって言って」
当然ハルナちゃんはそのお話を知らない。
お互いの当然は当然ではないのだ。
「訪ねてきたゆうきちゃんが、一瞬で汗だくスケスケシャツになるようにって……」
「頭おかしいんじゃない?いいから、エアコンつけるわよ。あなたは着替えてきなさい」
「は〜い」
回を追うごとに順調に女子化が進むエム。山田のこともいつの間にかゆうきちゃん呼びだ。
「あれ?こらエム、エアコン勝手につけたでしょ!」
「私よ、シズカ」
「げぇ!お前は、ハルナっ!?」
「あ、MANGAありがと」
ハルナはそそくさとトートバッグから単行本を取り出す。「風◯の◯次◯」とは、シズカさんも良いチョイスをする!
「その辺置いといて。もう、ハルナちゃん。私だって考えがあって、エアコン切ってたのよ?」
「あなた、保護観察処分中って聞いてたけど」
「私はただ、夏の暑さを山田に正しく……」
「山田さんとは言っていません」
「ハメやがった……」
「彼女、私の生徒なんだけど?いかがわしいことを考えているのなら……」
「聞いて!」
シズカがエムに語ったことは、「汗だく」までが正解で、後はエムの誇張だ。元男子のエムにはそういう思考パターンがまだ残っているのだ。
シズカは山田をプールに誘いたかっただけらしい。
「やっぱり、聖剣戦争編の後が気になるの」
「だよね。でも霧◯と◯魔の関係が……」
「わかる」
リビングでMANGAの感想戦を繰り広げる2匹の猫。
可愛いキャラティーと短パンに着替えてきたエムはそんな猫たちを眺めながら、アイスキャンデーを舐める。
だが優雅な夏の日中は、いつも彼女のひと声にかき消されるのだ。
「たっ、大変だシズカさん!」




