第34話
よろしくお願いします。
「キッドさん、少し、ミラさんと二人だけで話をさせてくれませんか。」
「大丈夫か?」
「大丈夫です。」
ミレーユは笑った。
俺は頷き、
「キアラ、外に出るぞ。ミレーユがミラと二人で話がしたいそうだ。」
「!?この状態のミラを一人にできるわけないだろう!」
「いいから来い。」
俺はキアラを連れ、外にでることにした。するとキアラに殴られた。
なんだ、いきなり、と思っていると、キアラが泣きだした。
「ミラのことが大切だから、ここに連れてきたのに、なんであんたはミラの変化に気づかない!」
「何か、変わったか?」
「!?この馬鹿!」
俺はまたもキアラに殴られた。
side ミレーユ
「初めまして、ミレーユと申します。」
「キッド様、どこ~。」
私はこの子の状態をよく見てきた。大切な存在、親を失った子供がこうなるところをよく見てきた。生きることを拒絶している、そんな状態だ。この子にとって、キッドさんがそういう存在だった。でも、この子からしたら、私はキッドさんを奪った存在に思えるんだろう。
私は、最近幸せです。疑う余地がないほどの幸せです。もう借金に追われることがなく、もうお腹が空いて苦しむことがなく、もう子供たちの泣き顔を見ることがない。そして、キッドさんがいる。
でもこの子は、この子には何があるんだろう。まずこの子のことを知りたい。私はそう思った。
「ミラさんは、キッドさんのことは好きですか。」
今まで私に興味がなかったのに、キッドさん、の名を出すと、興味を持ってもらえた。
「あなたはキッド様の何!」
「一緒に暮らしています。この孤児院で、子供たちと一緒に。大体二週間前から、です。」
「二週間前!キッド様が帰ってこなかった。なんで帰ってきてくれない。私待ってた。キッド様帰ってこない。私ずっと待ってた。ずっと・・・ずっと・・・」
ああ、この子にとって、キッドさんが中心なんだ。親は、家族は、何て聞くまでもなく、一番大切なのがキッドさん、なんだ。この子は私を睨んできている。でも、涙が出ていない。きっと出し尽くしたんだろう。帰ってこない、と理解したとき、ずっと泣いたんだろう。
私は、この子と、どうなりたいんだろう。キッドさんを取り合うライバル、友達、・・・ああきっとこれが一番正しい。
「私たちと一緒にここで暮らしませんか。」
ああ、きっと家族になりたいんだ。
「ここで、キッド様、帰ってくる。ここにいれば、キッド様、に会える。」
「はい。一緒に待ちましょ。一人じゃ寂しいですよね。」
私は自然に抱きしめていた。ミラさんは体が震えている。
「も、う、や、だ、ひ、と、り、やだ!、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「大丈夫です。一緒に暮らしましょ。ここにはキッドさんがいます。私がいます。子供たちもいます。だから一人じゃありません。」
ミラさんは震えている。落ち着くように、何時も泣く子を宥めるように、優しく、背を撫でた。
ミラさんの体から震えが治まった。私は抱きしめていた腕を放すと、幼い表情をした女の子がいました。
「私の名前はミレーユです。あなたのお名前は?」
「私はミラです。えへへ。」
初めの印象とは打って変わって、可愛らしい笑顔をした、女の子でした。
かわいくなり、抱きしめると
「ミレーユ、えへへ。」
本当に素直なかわいい子でした。
さっきまでは必死だったんだろう。キッドさんがいない、それは私も考えたくないことでした。たった二週間、その二週間で、いなくなる、と考えたくない程の気持ちになりました。それが、ずっと一緒にいたのに、突然いなくなった、この子のことを考えると、胸が締め付けられる。
だから、たくさん話をしよう。この子と家族になるんだから、隠し事はなしにしましょう。その代わり、ミラさん、いや、ミラの話も聞かせてください。
side out
中からミラの泣き声が聞こえた。
「ミラ!」
その声を聞き、キアラが中に入ろうとするので、
「キアラ、やめろ。」
押さえつけた。
「放せ!キッド、ミラが泣いているんだ!私はミラを守らないと、あんたが守らなくなった分だけあたしが・・・」
「ミレーユが二人で話がしたいと言った。」
俺とキアラがもみ合っていると、部屋の扉が開いた。
ミレーユとミラが出てきた。手を繋いで。
「ミラ!」
キアラが俺を弾き飛ばし、ミラの下に走った。
「キアラ姉さん。」
いつものミラに戻っていた。やっぱり何も変わっていないじゃないか。
「ミラ、ううう、よかった、よかった・・・」
「キアラ姉さん。ごめんなさい。待ってろ、て言われてたのに・・・」
「もういい、もういいよ。あんたが元に戻って本当に良かった。よかっだよ~・・・」
キアラが泣いている。本当に今日はよく泣くな。
キアラが一頻り泣いた後に、また四人で話をし始めた。なのだが、
「キアラ姉さん。ミラ、ここにいたいです。」
「ミラ?何言ってるんだい。あんたキッドを連れ戻すためにここまで来たんだろう。」
「はい。でもミラはキッド様と一緒にいられたらどこでもいいです。それにここにはミレーユがいます。優しいミレーユがいます。だからここで一緒がいいです。」
「ミラ・・・はぁ、複雑な心境だよ。ミラが元に戻って、これでキッドと一緒に連れ帰って、それで万々歳、て思ってたのになぁ・・・ねぇ、ミラは一族のことは好きかい?」
ミラは俯いて、答えた。
「ミラは嫌い、です。キッド様とキアラ姉さん、だけが好きです。」
「・・・そうか・・・あたしだけ、か」
キアラはひどく打ちのめされていた。でも、ミラも俺と同じか。
「ミラ、俺も聞きたい。」
「はい!なんですか、キッド様!」
何だか、テンションが高い。まあいいか。
「ミラはどうして、一族を嫌っていた。」
ミラは泣きそうな顔をして、ぽつぽつ、と話し出した。
「一族の人、キッド様に、あげる、花飾り、壊した。折角、綺麗にできたのに。だから嫌いです。」
「そうか。俺と一緒だな。」
俺は、ミラが俺と同じ気持ちだったことに気付かなかった。たった一人で残してしまった。
だから、詫びの気持ちを込めて、抱きしめ、謝った。
「ごめんな。ミラ、一人にして。」
「キッド様!・・・許してあげます。でもこれからはミラもここで一緒です。」
「いいか。ミレーユ。」
俺はミレーユに確認をとると、ミレーユは笑って、
「はい。今日からよろしくね。ミラ。」
ミラの頭を撫でた。
ありがとうございました。




