第35話
これからは毎日12:00で投稿させていただきます。
「よかった。ミラが元に戻って・・・」
キアラが泣いている。ミラを心配していたし、安心したんだろう。
「連れ帰る気はないのか?」
「もう、いいよ。ミラが元に戻ったんだ。きっと、連れ帰ったら、また、・・・」
「そうか。キアラはどうする。一緒に暮らすか?」
「イヤ!」
「そうか。さっさと帰れ。」
俺はキアラを追い出し、帰るように、促した。
「寂しいこと言うな!」
キアラに殴られた。解せぬ。
リオンとキール、それに子供たちを呼び戻してきた。ミラをみんなに紹介する、とミレーユが言ったからだ。
「今日から新しい家族が増えました。ミラです。みんな仲良くしてあげてね。」
「ミラ、です。初めまして。」
ミラが自己紹介をすると、カイルとリアが飛びついた。
「みら、みら、みら、えへへ。」
「みら、みら、みら、えへへ。」
「え、えっと、えっと・・・キッド様~」
末っ子コンビはミラが気に入ったようで、抱き着いて笑っている。ミラはどうしていいのか分からず、俺に助けを求めてきている。
「カイル、リア、放してやれ。」
「や!、みら、ぶっう!」
「や、みら、う~」
カイルとリアは何故かミラを異様な程、気に入り、引き離そうとする俺を威嚇してくる。
「カイル、リア・・・ミラです。よろしく、ね。」
「かいる。あい。」
「りあ。うん。」
ミラはカイルとリアの抱っこしている。二人は離れない。その内二人は寝てしまった。
「カイルとリアにとって、新しい人が来るのはキッドさん以外はあなたが初めてだから、はしゃいじゃったのね。」
ルーナがミラに近づき、ミラをカイルとリアから放した。
「私はルーナ、9歳。よろしくね。」
「ミラ、14歳。よろしく。」
「え!14歳、年上・・・でしたか。」
「いい、歳の通りに見られない。キッド様も同じだし・・・」
「え!キッドさんって、いくつなの?」
ルーナの声が聞こえたのか、みんなが聞き入っている。人の歳とか気にするのか?
「キッド様、15歳。ミラの一つ、お兄さん。」
15歳と聞いたとき、孤児院は騒然とした。
「ミレーユには前に言ったと思ったが?」
「聞いてませんよ!」
「あれ、俺の昔の話をしたときに言ったと思ったが・・・」
「あれ、ちょっと待ってください・・・最初が10歳で5年経って、15歳。で、すぐに実家を飛び出して、あれから二週間。ああ、15歳・・・ですね。」
俺が15だということを思い出し、ミレーユが顔を赤くした。
俺とミラとミレーユの三人で、買い物に出かけることにした。
ミラが暮らす用意を整えることにしたため、ブランド―商会に行くことにした。借金を返してからは、下っ端に絡まれることが無くなり、俺を見ると、
「あっ、キッドさん。チッス!」
「あっ、キッドさん。チッス!」
何故か、気合の入った挨拶をされるようになった。
ブランドー商会はこの都市で最も品揃えがいいので、大抵の物ならここで揃う。
俺達は近くの店員に声を掛けた。
「おい、ちょっといいか。」
「はい、キッドさん。」
「孤児院で新しく暮らす奴が増えた。女だ。必要なものを見繕いたい。だれか頼めるか。」
「はい。リサさん、お願いします。」
中から、気品のある女性が出てきた。
リサ、彼女はブランド―が借金の方に奪った、と言われている女性だ。
彼女は旦那の借金を返すため、ブランド―商会に来て、自分を売り込み、ブランド―が気に入り、社員になった。彼女は商才があり、任された店を瞬く間に売り上げトップに押し上げた。現在は借金は返し終えていたが、彼女はこの仕事を気に入り、今も働いている。彼女はブランド―商会の商売部部長の肩書を持っているが、現場第一主義のため、定期的に色々な販売店を視察及び労働をしている。
「いらっしゃいませ。キッド様、ミレーユ様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
柔らかな物腰に優しい笑顔。人に好かれる雰囲気だ。ミレーユに似ていると思った。
「今日から孤児院で暮らすことになった、ミラだ。彼女の生活に必要なものを揃えてほしい。」
「かしこまりました。ミラ様、初めまして、リサです。よろしくね。」
「はい、ミラです。よろしくお願いします。」
ミラはリサに色々な服を選んでもらっている。俺とミレーユは並んでミラを見ている。ミレーユはなぜ、ミラを孤児院に入れたのか、気になっていた。ちょうどいいので聞いてみることにした。
「ミレーユ、何故、ミラを受け入れた?」
「あの子には帰る場所が必要だと思ったんです。」
「帰る場所?」
「ミラはどういう暮らしをしていましたか。」
「ミラは俺と同じで一族の中で、恐れられていた。」
ミラの暮らし、俺が子供の時から、ミラは一緒にいた。
俺の一族は力が全て、と言われていたが、男と女を明確に分けていた。
男が外に戦いにでる。女が残り、生活を整える。そのように分けられていた。だが女でも強いやつはいた。俺の姉、キアラと・・・ミラだ。
ミラは外見は小さい、ミレーユよりも小さい。
ミラはどう強かったのか。それは俺では説明しにくい、何故なら俺とミラとは戦いにならない。
俺の攻撃はミラに当たらない。何度やっても決して当たらない。
以前戦った、ブランド―商会の若頭と同じような戦い方だった。でもミラの方が動きが速い、そして、先が読まれる。ミラはいつも周りを見ていた。どんな些細なことも見逃さない。だから、俺はミラと戦って、勝ったことがない。
一族で最も恐れられた俺が、決して勝てない相手。だからミラが婚約者に選ばれた。俺が暴れても、倒せる存在として・・・
「ミラには誰も近づかなかった。女と軽んじて、気に障って、殺されると思っていたんだろう。」
思い出すと、ミラと一緒にいたのは、俺とキアラだけだった。
「ミラは俺がいると俺に、いないとキアラと一緒にいた。そこしか居場所がなかった。」
でも、俺が壊した。
ミラにとって世界が壊れたんだろう。そしてキアラが俺を探しに、ミラを置いて行った。
俺はようやくわかった。キアラがあんなに泣いて、必死で、俺を呼んだ意味が。
「キッドさん。・・・人は一人では生きていけないんです。」
そうだな、俺は、忘れたんだろう。一人でいることを・・・いや、今まで一人ではなかった。ミラがいた。そして、今はミレーユが、孤児院の子供たちがいる。
「ミラが言いました。一人はいやだ、って、だから、いえ、最初に見たときに思いました。この子は壊れる寸前だと、私、そういう子、過去に何人も見たことがあるんです。親を亡くした子供はみんな、あんな目をするんです。今まで、何人も戻ってこれない子がいました。でも、ミラはまだ、戻れます。だからあの子の帰る場所を作ってあげたい、そう思いました。」
「すまない。」
俺にはそんな言葉、言えた義理ではないかもしれない。でも、俺は自分の身勝手でミラを壊したことはどう詫びればいいか、わからない。
「あなたもミラも私が支えます。これからは家族、なんですから。」
「そうか。・・・ありがとう。」
「はい。」
ああ、俺はミレーユにはかなわない、な。
ありがとうございました。




