第32話
よろしくお願いします。
みんなで夕飯を食べている。ミレーユとルーナが作ってくれたみたいだ。リオンとキールが勢いよく食べている。今日はよく頑張っていたから、腹が減ったんだろう。他の子供たちも真似して食べている。ミレーユはそんな子供たちを見て、笑っている。借金が無くなって、ケルヴィン辺境伯から補助金が出て、孤児院では子供たちを腹いっぱい食べることができる。子供たちも体が大きくなっている。いいことだ。
「リオン、今日はどうする。」
「お願いします、キッドさん。」
俺とリオンは庭に出て、双剣を抜いた。いつも寝る前に組手をしている。リオンに少しでも実戦を経験させてやる。そうすればリオンはもっと強くなるだろう。
「行きます。キッドさん」
リオンから双剣を抜き、斬りかかってきた。右の剣を振るってきた、今日、ウルフを倒した時より鋭くなっている。ダイクの店で調整してもらった効果が出ているようだ。俺は体を後ろに逸らし、刃を躱した。リオンはもう一歩踏み込み、左を振るってきた、俺はそれを右手の剣で防ぐ。リオンは俺からの攻撃を警戒し、後ろに下がった。
いつもやっている組手はリオンが攻めて、俺が受ける、というふうにやっている。たまに俺も攻め、それがリオンに当たったとき、組手の終了となる。
特に何時まで、という時間制限はない。リオンの体力次第というところだろう。
「はぁ!」
リオンが気合を入れて、攻撃をしてきた。右は鋭く、左は重く、双剣でも左右に攻撃の質が違う。双剣に関しては俺よりも上手い。強くなっている日に日にそう思う。もっと体が大きくなると、きっとリオンはテオに匹敵するほどになる。親ばかではないが、そう思う。
side リオン
キッドさんは強い。今日はウルフを倒して強くなったと思っている。でもキッドさんはまだ、そこが見えない。双剣同士で戦うとよくわかる。まだ、相当、手を抜かれている。ダイクさんに調整してもらったおかげで、右の振りが鋭くなっている。キッドさんにも、そう認めてもらえるといいな。でもやっぱり当たらない。いつも考えている。右の剣撃を囮に左でとどめ、これは失敗した。次は左、右・・・、色々試したけどまただめだ。じゃあ次、
「終わりだ。」
キッドさんに言われて、俺の腹にキッドさんの双剣が当たっている。攻撃に意識がいき過ぎて守りが疎かになっていた。ああ、今日の組手は終わりか。
「ありがとうございました。」
「リオン、今日の攻撃は良かった。ただ、攻撃に意識がいき過ぎて守りが疎かになったな。」
俺の考えと全く同じことを言われた。
「はい。明日は気を付けます。」
「ああ。ではな、お休み。」
「はい。おやすみなさい。」
今日の反省をして明日につなげよう。明日こそキッドさんから一本取るぞ。
side out
リオンと組手を終えると、子供の面倒を見ているミレーユがいる。面倒を見られているのはカイルとリアだ。この孤児院で最年少の子供、3歳だ。お金がない中、懸命に生きてきた命だ。最近は少しずつ食べる量が増えてきて、体の成長が著しい。俺に気づいたのかカイルが俺を呼んだ。
「きっどー」
「どうした、カイル。」
「きっどー、きっどー、えへへ。」
何が面白いのだろうか、何故か笑っている。まあ、笑っているのはいいことなので、放っておいた。
「キッドさん。今日もお疲れさまでした。」
「ミレーユ、今日はリオンとキールが頑張ってくれた。俺はそれほど疲れていない。」
「でも、二人を見ていてくれていますから、私は安心しています。」
「二人はもう一人前だ。あまり、子ども扱いしないでやってくれ。」
「私にとっては何時までも子供ですよ。あの子たちがここに来てから、ずっと見てきたんです。だから、冒険者になる、と言ったとき、不安でした。」
「ミレーユ。」
「リオンは年長として、年下の子の面倒を見てくれていました。キールは頭のいい子で、お金の計算をしてくれていました。だから、二人がこのまま遠くに行ってしまう気がして、なんだか寂しくって・・・」
「二人はここに帰ってくる。俺が連れて帰る。だから安心しろ。」
「キッドさん・・・」
「カイル、リア行くよ。あ、こら邪魔しないの」
突然声がして、見るとそこにはカイルとリアを抱えている、ルーナがいた。ルーナはこちらを見て、口を動かした。ご・ゆ・っ・く・り、そう見えた。ミレーユはそれを見て、顔を赤くしている。
俺は部屋で寝る準備をしている。ここ最近、平和を感じている。先週はブラッディーベアやスタンピード、そして、ブランド―商会、色々あったが、今週はなにもない。キアラからも何もない。この都市にいると思っている。でも、何も接触がない。キアラがミレーユを敵視したことがある以上、俺はここを離れるわけにはいかない。リオンやキールにはもっと世界を見せてやりたい。まだ二人だけで旅立たせるわけには行かない。ロイ達に頼んでみるか。
side ???
「お久しぶりです。キアラ姉さん」
「あんた、どうしてここに。」
「お帰りが遅かったので、こちらから参りました。」
「でも一体、どうやってここに・・・」
「愛の力です。」
「愛って・・・あんた、どうしたんだい。前までそんなこと言わなかっただろう。」
「キッド様がいなくなって、思いました。本当に大切な存在がいなくなると人は狂う、ということを、だから取り戻しに来ました。」
「あんた、そんなにあいつのことを・・・よし、いこう!あんたなら、あいつの目を覚ませるかもしれない。」
「はい。待っていてください。キッド様。フフフフフ・・・」
side out
ありがとうございました。




