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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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責任のなすりつけ

 

 連れ立って門の前まで来ると、待ちくたびれたようなガルの姿が見えた。

 そういや先にいってもらっていたな。今まで存在を忘れていたよ。


「お前ら……いや、ギルド長。遅いですよ」

「仕事の依頼でね。いやあ、厄介な仕事がようやく片付きそうで良かった」

「え? それはもしかしてこいつに……」

「いや、用があるのはツレの方だ。彼は関係ない」

「そりゃそうですよね」


 なんか二人のやり取りで散々言われていたが、俺としては金が貰えればギルドの依頼に用はないんだ。

 そもそも、存在しなかったEランクが受けられる依頼って何かあるのかよ。


「ようやく街の外か。じゃあ、ここで取り出しても良いのか?」

「ああ……もし本当なら運搬の手間もあるので、入り口の傍が好ましい。そうだな、あの開けた場所にお願いできるか?」


 そういって、門から少しだけ離れた場所を指定される。

 街へ続く道や門からもある程度は離れており、通行の邪魔や日光の妨げにはならないだろう。

 たしかにあのでかい魔物を置くには適しているな。


 門を出る際に通行料について気になったが、ギルドの依頼で少し外に出るだけなら問題ないらしい。

 これで通行料を払えとか言われたら、街中で取り出すところだったしな。

 街に配慮しているので、それくらいは見逃してもらわなければ。


「さて、ここら辺か。じゃあメフィ、頼んだ」

「その前に確認だけど、取り出したあとは回収しなくても良いのかな?」

「ああ、ここに置いておけば、自ずと街へ訪れる人への宣伝にもなる。ここは海を渡って来る人も多いからな。良い客寄せになるだろう」


 さすがギルド長、興味を惹かれた人による経済効果も考えてか。

 邪魔にならないなら無問題だ。ギルド長の許可も出たことだしさっさと終わらせるか。


「あ、あと暗殺獣アサシンビーストもついでに頼む」

「了解したよ。ボクも髪飾りのような報酬を期待しておくさ」


 その言葉にシキが自分の頭を触るが、メフィも別にシキから奪うわけじゃないから安心して欲しい。いや、さすがに奪わないよな?

 これはメフィの分も気を入れて選ばないとな。


 そう考えているうちにも、先の空に大地を覆うような黒い空間が広がっていく。

 あのカバを吸収した空間を考えると、この周辺を覆う程度には広がるだろう。


「な、なんだ! 空が闇に包まれていくぞ!」

「あれは容量空間ストレージを開いているだけだぞ」

「おいそこのEランク。まさか、空から落とす気じゃあるまいな?」

「ん? そうするんじゃないかな」


 あれを収納した時だって、落とし穴に落とすように収納したんだ。

 なら、取り出すときも重力を利用することはおかしくない。

 もう近いうちに、あのカバが空から降ってくることだろう。


 ん? 空から降って……?


「おいメフィ! ちょっと待って!」

「ん? もう取り出せるところだが、どうしたんだい?」

「もっと低いところから、な!」


 ギルド長に言われなければ気づかなかった。

 あの何百トンもありそうな巨体が降ってくる。それで、どれだけの衝撃が地面に伝わってくるのだろうか。

 あいつが倒れたときですら地震が起こったんだ。

 それが上空からともなると、壁や建物が崩壊してもおかしくはない。


「悪いねマスター……既に手遅れだよ」

「オゥ……」


 空を見ると、黒い空間の広がりは既に止まっているが、中からあの魔物が落ちかけているところだった。

 あの様子だと、重力によってすぐにでも落ちてくることだろう。

 これは……被害が拡大しそうですね。


「ちなみに、修繕にかかった費用は君の報酬から差し引かせてもらう」

「シキ、頼むっ!」


 そういって横を見ると、既にシキの姿はなかった。

 カバが空から落ちてくるのも止まらないが、その下に向けてシキが走るのも止まらない。

 いつの間にか着物の丈も短くなっていたようだが、もしかしてこうなることに気づいていたのか? もうシキには頭が上がらないな。


 そして、カバが地面に落ちる寸前、シキが軽く跳躍する。

 離れて見ている俺からすると、まるでカバが地面に落ちる手間で時間停止されたみたいだ。

 少し浮いたところで落下が止まったカバだが、すぐに重力によって地面に衝突する。

 その衝撃により、辺り一面に地響きが鳴り響く。


「うわあああああ!」

「くっ、多少の衝撃はあったが、彼女のおかげで被害は最小限みたいだな」

「……マスターは、地面に寝転がって日向ぼっこかい?」


 浮いているメフィは元より、すぐ横で見ていたランドも衝撃には耐えたらしい。

 俺はと言うと、襲ってきた衝撃に立っていられず地面に手をついてしまう。

 それを日向ぼっことかいうのはやめてくれ。


 潰されたように見えたシキも、何事もなかったかのように先で立っているのが見える。

 どちらにしろ近くに寄らないと詳しいことはわからないんだ。シキにお礼を言うためにも、出てきたカバの元へ近づいていく。


「シキ、大丈夫だったか? ケガはないか?」

「はい。問題ありません。腐っているかと思いましたが、メフィストさんは凄いですね。あの時の状態のままです」

「とはいっても、そこまでの期間は経っていないけどね。いやしかし、褒められるのは嬉しいよ」


 そういって、チラチラとこちらを見てくる悪魔。

 なんだ、褒めてほしいのか。


「よくやった。運搬ありがとうなメフィ」

「フフッ、このボクにかかれば造作もないよ。あとは……ほら」


 メフィが顔を向けた先には、同じようにチラチラとこちらを見ては、悪魔を羨ましそうに見ている鬼がいた。

 君もですか。

 いや、最大の功労者なのに、褒められないほうがおかしいだろう。


「シキもありがとう。こいつを倒せたのもシキのおかげだし、街への被害を最小限に抑えられたのもシキのおかげだ。シキがいなかったら俺は借金地獄に陥っていたかもしれない。本当にありがとう」

「えへへ……当然のことをしたまでですよ」

「何故か、ボクと感謝の総量が違うような気もするけど気のせいかな?」


 人を借金地獄に陥れるような悪魔には、あれくらいでちょうど良い。

 シキには今回の件も踏まえて、また何かお礼をするとしよう。


 俺達がシキを褒め称え、またメフィを落ち着かせているうちにも、ギルド長は目の前の魔物に興味津々だったらしい。

 何かウンウンと頷いては、カバの皮膚をルーペみたいなもので鑑定している姿が見える。


「これは驚いた……間違いない。ベヒーモスだ」

「その道具でステータスとかが見えるのか?」

「ああ。これは『鑑定の水晶』といってな。魔物の特徴と脅威度がぼんやりと判明するユニークアイテムだ」

「ぼんやりってなんだよ」


 勇者にお馴染みの、ステータスオープンまでの効果はないみたいだ。

 それでも、ぼんやりとわかるというだけで、どれほど有用なアイテムかわからないわけでもない。


「今回は事前情報があったから助かったが、私も初めて見る魔物だと断定はできないのだよ。この『鑑定の水晶』で覗くと、目の前のベヒーモスには巨大、超重量、A級などといった情報が表示される」

「名前はでてこないのか?」

「残念ながらな」


 武器で言えばSレアかSSレアに該当するらしいユニークアイテムも、この『鑑定の水晶』の場合はSレア止まりらしいな。


 しかし、もしユニークアイテムで全身を固めることができたら、例え魔法が使えなくたってなんとかなりそうじゃないか?

 現に勇者特有のスキルも、劣化ではあるが再現できている。

 これは……攻略本を使ってユニークアイテム集めといっちゃうか?


 ちなみに最近出番がない攻略本だが、きちんとシートの重しや飛んでいる夕食の確保といった仕事には貢献している。


「疑ってすまなかった。さっき言った金貨100枚買い取りは約束しよう。渡すのは、協力した冒険者と同時で良いか?」

「ああ。場所は伝えてあるから、あいつらもすぐに来るだろう」


 名前すら知らないパーティだが、あの獣人は鼻が効くらしい。

 向こうがわかるというから任せたんだ。もし見つからなければ金貨が全て俺のものになるだけだし、デメリットと言えば時間がかかることくらいだ。


 まあ、シキの仕事が終わるまでは待つつもりなので、その間ゆっくりと過ごしますかね。


「ところで、もう一体の魔物は良いのかい?」

「あ、そういや何処らへんに出したんだ?」

「それって……もしかして、虎のような魔物ですか?」

「ああ、そうだが…………まさか!」

「はい……多分」


 シキが知っている。つまり、シキの傍にあった。

 シキが見たのは、多分カバの真下にいたときだろう。その時見たってことは……今頃はペシャンコか?


「悪いシキ! もう一度これを持ち上げてくれ!」

「はい! 覗くのは良いですけど、危ないので中には入らないでくださいね!」


 そう注意して、シキは両手で何百トンもあろう巨体の下に潜り、それを少しだけ持ち上げる。

 潰されずに潜れる方もおかしいのだが、今更だが持ち上げられるほうがもっとおかしいだろ。


 シキが作ってくれた隙間から見えた地面には、何者かが叩きつけられた後のようなクレーターが出来ていた。

 普段なら疑問に思うところだが、大方シキがジャンプする際にへこんだだけであろう。俺も随分と慣れてきたものだ。


 メフィに出してもらったあいつは……よかった、無事だ。

 ここから見る限りでは、クレーターのど真ん中に横たわっているようだ。

 しかし、死んでいるからかやけにクレーターが似合うな。


「おうギルド長さんよ、あれが俺の倒した魔物だぜ」

「あれが暗殺獣アサシンビーストか? いや、ここからでは鑑定もできないので調べようもないが……もしや、本当に?」


 疑り深い兄さんだな。

 そうでもないとギルド長という大任は務まらないだろうが、俺としてはさっさと終わらせてもらいたい。


「じゃあ、買い取ってもらえるか?」

「ああ……だが、どうやって回収する?」


 いま暗殺獣アサシンビーストがいるのは、ベヒーモスの真下だ。

 潰されていないのが不思議なくらいだが、いくらクレーターにハマっているとはいえいつまで無事かはわからない。

 ベヒーモスが腐って落下したり、肉が垂れる可能性だってあるんだ。

 できれば早めに回収したい。


「あの……そろそろ降ろしたいのですが」

「ああっ、すまんもう大丈夫だ」


 さて、どうしますかね。

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