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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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再度収納大作戦

 

 持ち上がっていた巨体をゆっくりと下ろしてもらい、その場で少し考える。

 シキに頼めば移動させることもできるだろうが、引きずるとアレが潰れる可能性がある。

 かといってもう一度収納して取り出すとなると、地震の心配やまたシキに活躍してもらうことになる。


 じゃあ、あの暗殺獣アサシンビーストのみ回収するにはどうしたら良いか?


「なあ、メフィの容量空間ストレージってあの下にいる暗殺獣アサシンビーストも回収できるのか?」

「出来ないことはないけど、ボクが目視できる範囲にないと無理さ」

「ならもう一度シキに持ち上げてもらう必要があるか」


 そう思って横を見ると、仕方ないといった感じのシキの姿が見えた。

 いくら鬼だからといっても、この巨体を持ち上げるのはしんどいのだろう。


「持ち上げるのは良いですけど……お金はあるんでしょうか?」

「……あっ」


 さっき使った対価は、前金としてもらった銀貨10枚だ。

 それをもう一度収納して取り出すとなると、銀貨20枚……いや、すぐに入れて取り出すだけなら、銀貨5枚のほうで十分なはずだ。


 この際匂いとか腐るとか言ってられるか。

 多少のことなら、我慢すればなんとかなるはず。


「ランド……いや、ギルド長さま。もう一度前金を頂きたいのですが」

「面白い冗談を言うんだな君は! 無理に決まっているだろ」

「ですよねー」


 しかし、金がなければ鑑定も換金もできない。

 てことは、合流する冒険者がくるまで報酬なしの無一文ってことか?


「ちなみにあれがホンモノなら、いくらになるんだ?」

「そうだな……最低で金貨10枚は約束しよう」


 いつかの治療費と同じ値段なので、出費に比べるとマイナスらしい。

 あの時は俺が払ったわけでもないので、前提条件が少し違うが。

 しかし、回収できないとなると困るな……もし近くにいけても、俺が押してびくとも動かなかったんだ。どう回収するか。


「あ、あの! ランドさんにお話が!」

「ん? どうしたんだい。君の頼みなら聞こうじゃないか」


 さっきからギルド長によるシキの優遇具合が半端ない。

 活躍した点や功績を考えれば当たり前だろうが、俺としてはこうも露骨に態度を変えられるのは癪に障る。


「さきほど受け取った魔石です。一個だけですが、これって注入完了しています……よね?」

「おお! もう終わったのか! さすがに早いな。出来ればすぐにでも渡してもらいたい」

「いつのまに。さすがシキだな」


 いつの間にか仕事をこなすシキに、思わず頭を撫でてしまう。

 ちょうど良い位置に頭があるので仕方ない。


 ……後ろで悪魔がジッとこちらを見ている気がするが、気の所為だろう。


「えへへ。それで、この魔石ですけど……この一個だけ先に買い取ってもらうことはできますかね? それで銀貨10枚をいただきたいのですが」


 そう言い、シキはチラチラとこちらに視線を向けてくる。

 そうか、俺のためにここまでやってくれたのか!


「君は……いや、早く受け取れるなら、こちらとしても嬉しい限りだ。よろしい、それと引き換えに報酬の銀貨10枚を払おうではないか」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「ありがとな……シキ。じゃあメフィ、銀貨5枚で回収を頼む」


 ランドの懐から銀貨10枚がシキへ。シキの手から銀貨10枚が俺へ。

 そして俺の手のひらから銀貨5枚が消える。


 こんな段階を踏まなくても、最初からメフィが消してくれたら良いんじゃない?

 そんな文句を言おうとしたら、ベヒーモスの巨体の中にメフィが消えていった。

 おそらくすり抜けて暗殺獣アサシンビーストの元まで移動したのだろう。

 まったく、悪魔なのか幽霊なのかよくわからない奴だ。


「ふぅ……回収終わったよ。時間経過するほうで良かったかな」

「ああ。早速だがここに取り出して貰えるか」


 そしてシキに貰った残りの銀貨5枚も消え失せる。

 代わりに現れたのは、先程クレーターで見た通りの虎だった。


「君が消えたことにもだが……その容量空間ストレージには毎回驚かされるな」

「ははっ、どうだすごいだろう」

「Eランク君は何もしていないがね」

「なんだとっ!」

「まあまあ、それは事実なんだ。マスターも落ち着いて」

「あの……二人ともそこまでに」


 ギルド長といい悪魔といい、人の心を抉るのが上手いらしい。

 唯一の癒やしはシキだな。

 シキがいなかったら俺の心は折れていたかもしれない。


「……で、こいつの鑑定結果はどうなんだ?」

「ああ、おそらくこれは本物だね。噂には聞いていたが……まさかこんな姿だったとは」

「じゃあ、こいつの買い取りはすぐにでも頼む」

「わかった。ここはガルに任せて、私たちはギルドのほうへ戻ろうじゃないか。そこで代金も渡そう」


 よかった。

 これで無一文という事態は避けられたようだ。

 せっかく街に入ったのに、宿もなければ金もないというのは悲しすぎる。

 頼みはシキの稼ぎのみだったが、これでヒモ生活は回避できた。


 門番のガルにさっきだしたベヒーモスのことを伝え、俺達はギルドのほうへ戻る。魔物は放置して大丈夫かと聞くと、しばらくはあのまま見世物にするということだ。

 なんでもあれだけの魔物を倒した冒険者がこの街にいたというアピールのためだとかなんとか。

 街が襲われないためにも、そういうアピールは大切らしい。現に、あれだけの大物が外に入れば、賢い魔物は近寄ってこないだろうということだ。


「そういや今から暗殺獣アサシンビーストの報酬は貰えるんだよな?」

「そのつもりだが、どうかしたのかね?」

「いや、最低金貨10枚ということだったが、査定は終わったのかと」

「前金のことを含めたということもあるが、もちろん最低の金貨10枚だ」

「保障額じゃねぇかよ! 状態も……いや、確かに状態はあまり良くないかもしれないが」


 アイツを倒した時は、人間状態のときにヴェノムダガーにて戦闘をしたんだ。

 刺し傷が至る所にあっても、毒が回っていたせいで肉がダメになっていたとしてもおかしくはない。

 とすると、最低金額というのは妥当なのかもしれないな。


「あの魔物は討伐されたという情報がないものでね。素材も何に適しているか不明だ。もしあの個体で素材の有用性が証明されたなら、討伐金額も跳ね上がることだろう」

「なんか久々にまともな理由がきたな」


 てっきり俺がEランクだからとか言い出すかと思ったが、こいつの話を聞くとたしかに納得のいく話だ。

 それなら所々素材にならない箇所もあるだろうし、最低金額というのも納得できるような気がする。


「でも、ランクDくらいには上がるんだよな?」

「フッ……君も大方その仲間二人に手伝ってもらったのだろう? 君があんな大物を倒せるとは思えない。これはランクアップはお預けだろう」

「あれは俺が一人で倒した魔物だ! 確かに擬態はしていたが……手伝ってもらってはいない!」


 くっ、仲間が強力なせいで俺の仕業だとは思われないか。

 しかしこちらも事実を述べているだけだ。むしろ今ランクアップできなかったら、ずっとEランクのままじゃないか?


「良いではないか。初のEランクだ、もっと誇りに思うが良い」

「一番下というのが気に入らないんだよ! 正当な評価を要求する」

「……ランクアップには規定がある。EからDの規定は前例がないものでね。いますぐ定めることができるんだ。例えば、金貨10枚とかね」

「Eランクのままでお願いします」


 なんとなく予想はできたが、こいつはよっぽどランクを上げさせたくないらしい。まあギルド登録さえすれば買い取りは通常価格になるんだ。

 ランクを上げる必要もないので、ここはこいつの希望通りEランクのままでいてやろう。


「ところで、シキ君といったか? 君には守護者と言われるランクAを保証しようと思うが、ギルドに加入する気はないかい?」

「えっと……あの、わたしは鬼なので……」

「勧誘するなよ」


 本人が入りたいというなら止めはしないが、複雑な気分にはなる。

 しかしいきなりAランクか……勇者の一歩手前じゃないか。


「すみませんが、お断りいたします」

「そうか……残念だ」

「ったく、俺はEだというのに……」

「それに、Aランクというなら、二つ名がつくのも時間の問題ですしね」

「二つ名? Aランクには二つ名がつくのか」


 なにそれ格好良いな。

 もしAランク冒険者とかがいれば、その通り名とかでみんなから呼ばれるのだろうか。


「ちょっとそれは……恥ずかしすぎて、遠慮したいです」

「格好良いもんじゃないのか」

「君も二つ名が欲しいのかね? そうだな……Eランクには『最弱の他人任せ』とかの名が良いのでは?」

「やめろ。マジでそれになりそうだからやめてください」


 確かに人によっては恥ずかしいものなのかもな。

 ちょっと待て。


「なあ、勇者とかその仲間にも二つ名ってついているのか?」

「ん? その通りだが。勇者ともなると、名前より二つ名のほうが有名なくらいだがね」

「じゃあ、リョウタにはどんな二つ名がついているんだ?」

「リョウタ……もしや君は、あの『ハリネズミ』のリョウタと知り合いなのか?」

「ブッ!!」


 よりによってハリネズミか。一気に可愛くなったな。

 ギルド長でこれなら、冒険者にはハリネズミが浸透しているに違いない。

 俺が腹を抱えて笑いすぎて動けなくなっていると、追撃するように補足が放たれる。


「ハリネズミは凶暴な魔物でな……近づく敵全てにダメージを与えることからそのような異名で呼ばれている。あの今代最強と言われる勇者様にはピッタリの二つ名だろう」

「はっはっはっ、あいつがっ、ハリネズミ! くっくっく」


 どうしてもあのちっこいイメージが拭いきれないので、強そうに思えないのが欠点だ。

 あいつもそう呼ばれた時、どんな反応をしたのだろうか。

 今度会うことがあればからかってやろう。


 そんなことを話しているうちにもギルドへと戻ってきた。

 さて、これで報酬をもらってあとはシキの仕事が終わるのを待つだけだ。


「約束だからね。ボクへのプレゼント、楽しみにしているよ」


 まずは……この課題から早く終わらせて自由になるか。

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