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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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主人公という脇役

 

 女性が持ってきたカートの中には、先程ランドが出したような石がこれでもかというくらいに詰め込んである。

 大きさは同じくらいだが、尖っているモノもあれば、丸いものもあったりと形についてはバラバラだ。


「……まさか。これ、全部とか……言わないですよね?」

「ハッハッハ、お望みならまだ持って来させるが?」

「これで! これだけでお願いします!」


 いくらシキが魔力を持っているといっても、さすがにこの量は予想外だったみたいだ。

 いやでも、これ全部ってどれだけかかるんだ?


「一個に魔力を込めるのに、どれだけかかりそうだ?」

「そうですね……このサイズなら、数個まとめて満タンになるのは一時間ほどでしょうか」

「一気にやって、体調は大丈夫なのか?」

「やってみないとわかりませんが……半日程度なら可能だと思いますよ?」

「驚いたな。噂には聞いていたが、鬼の彼女にこれだけの数じゃ物足りなかったかもしれないな」


 シキの反応を見て、さらに増やそうとしているが……カート一杯分でもまだ足りないとか、どんだけ人員不足なんだよ。

 よく見ると、シキの顔も青くなっているようだ。


「ちなみに、何個くらいあるんでしょうか……」

「そうだね。詳しい数はわからないが、ざっと三百個ほどだろう」

「さ、さんびゃ……!」

「シキ、辛いなら断ってもいいんだぞ」

「Eランク君には、鬼を連れ込んだ責任が……」

「シキ、俺には何もできないが頼む!」


 これを出来るのは、例え勇者とかSランク冒険者とかを入れた中でもシキだけな気がする。

 常人が三人いて一日一個。それが三百個あるなら、単純に三人で込め続けると一年近くかかる。

 しかも、その三人は魔力を使い切るときた。

 効率が悪い充電池といった感じだが、それにしては溜め込みすぎだろ。


「フッ……実のところ、依頼を出しても誰もやってくれなくてね。長年と達成されないまま、数だけは増えていってこの数さ」

「依頼? そうだ。さすがにこれ全部ともなると、情報の対価としては釣り合わないだろ!」

「わたしとしては、ようやく事件に手が届きそうなんです。街に滞在を許されただけでも、べつに……」

「いや、ここは別途報酬をもらうべきだ!」

「マスターがやるわけでもないのに、張り切っているね」


 誰のせいだ誰の。

 お金はあって困ることはない。

 旅の安全のためにも、請求できるときは請求しておかないとな。


「そうだな……一個につき銀貨10枚ほど払おう。金貨30枚でどうだ?」


 魔石一個に込めて1万円。全て込めて300万円といったところか。

 レートがわからないから判断ができないな。


「そ、そんなにいいですか! それだけあれば、これからも……」

「何せ、誰もやりたがらない仕事だ。君にしか任せられそうにもないので、引き受けてもらうためにも必要な額さ」

「わかった。じゃあ、それで手を打とう」

「ちなみに、報酬は彼女へ渡す。交渉の真似事をしたかったようだが、私もヒマではないのでね。君はせいぜい、彼女の仕事が終わるまでヒマをしているといいさ」

「なんだと! さっきから次々と……」

「まあまあ。ただ、ボクが魔力譲渡を行なわなくても大丈夫となった点ではメリットだね。魔石に半日ほど魔力を込め続ければ、シキから魔力が溢れるといった周りへの悪影響はないはずだよ」


 そうか。

 俺の知らないうちにランドは、街への滞在と住民への配慮の両方を行なっていたのか。さすがギルド長、ちょっとは見直したぜ。


「聞きそびれていたが、君は鬼だとすると、どうやって魔力を抑えている? もし可能なら、街に紛れ込んでも気づかれないので事件となるが」

「あ、これはそこのメフィストさんによる魔法で」

「俺がいるからできる芸当だ」


 評価が下がりに下がっているので、ここぞのアピールは忘れない。

 しかし、メフィにはそれが不満だったようだ。


「それも、このボクがいないとマスターは何もできないけどね」

「この悪魔が! ちょっとくらい俺をたててくれてもいいだろ!」


 まあ事実なので否定はできない。

 しかし、対価(お金)がなければ何も出来ないのは、メフィも同じではないのか? それとも、対価はただの嫌がらせ……まさかな。


「そうか。なら、この仕事を引き受けてくれるかね?」

「はい。その代わり、資料の閲覧許可と、この街の滞在許可をよろしくお願いします」

「わかった。ようこそ、ローリアの街へ。例え魔族でも、君なら歓迎しよう」

「ありがとうございますっ!」


 今の俺は悪魔と共に買い取り待機勢だ。

 例え歓迎されてなくても、買い取りになれば歓迎される……はず。


「マスターもボクも、ここまで無視されたことがあっただろうか。いや、ない」

「勝手にモノローグを入れるな」


 シキとランドが仲良く握手をするのを見つめていたが、それにしてもヒマだ。

 待っているだけとは、結構つらいものがあるな。






 交渉も一段落したようなので、二人を連れ立って門へと向かう。

 俺の手には今、ランドから借り受けた魔石の入った袋がある。


 仕事は明日からでいいらしいが、シキの魔力が半日で溢れ出るなら、持ち運び出来る分に込めればもう半日大丈夫なんじゃないか? という考えだ。

 せっかく外出許可も出ているんだし、滞在するとなると宿は二人の意見を聞いて決めたいしな。


「ところで、君が倒したというその魔物はどれくらい大きいんだ?」

「どのくらいと言われましても……あの建物に入るくらいでしょうか」


 そういって、シキは少し遠くに見える闘技場のようなものを指差す。

 たしかに、あの場所にギリギリ収まる大きさかもな。


「そんなに……いや……まさか……」

「一応、俺たちの他にも目撃者というか、協力プレイで倒したからな」


 後から獲物を攻撃した感じになったが、向こうは討伐に参加したことを辞退する予定だったんだ。

 ここで協力プレイということを強調しておかないと、彼らの立場が悪くなるかもしれないからな。


「……もしかすると、その魔物はA級に分類される魔物かもしれない」

「え、知っているのか? ちなみに暗殺獣アサシンビーストはどれくらいの魔物なんだ?」

暗殺獣アサシンビーストもA級に分類されるが、本物だったらの話だ。なにせ、目撃例が少なすぎるのでね。解析するまで少し時間を貰う」


 それってすぐにお金は払えないってことだろうか。

 だとすると少し困るが、ここはあのカバみたいなやつの報酬に期待するか。


「ランドさんが言う、A級に分類される魔物というのは、どのような魔物でしょうか?」

「ああ、それはベヒーモスという魔物だが、海を越えた大陸にしか存在しないはずだ。こちら側に出たという話は聞いたことがない」


 だとすると、あの巨体が海を泳いできたってことか?

 ありえなくはないが、想像ができないな。

 ん? 海の向こう?


「シキはあの魔物、何度か倒したことがあるのか?」

「はい。たまに現れるので先生と一緒に退治していました。あれが現れると、森の動物達が一斉に逃げ出したり、土地がしばらく使い物にならなかったりと迷惑でしたね」


 というか、その程度で済むのか。

 海の向こうとは、案外デンジャラスで面白そうだな。

 命の危険があるから行きたくはないが。


「君は海の向こうから来たのか? それに先生というのは……」

「はい。先生というのは森に住む――んぐぐっ」

「はいはい。余計なことはいいから、もしベヒーモスだとしたらいくらくらいで買い取ってもらえるんだ?」


 森について話そうとしたシキの口を手で塞ぎ、これからのことについて話し出す。そうでもしないと、ランドの興味がそっちに向きそうだからな。

 シキが目で訴えてくるが、ここは無視だ。


 もし森のことを出せば、ギルド長なら先生とは魔女のことだとすぐに気づく事だろう。


「ああ。海を渡らないと存在しない魔物ともなると、異常事態ということなのでね。しかもA級ともなると、ここにいる冒険者全員で討伐しに行く必要があったかもしれない」

「ちなみに、後で来るパーティが第一発見者だ。もう分け前についてもお互い了承済みだ」

「そうか。もし本当にベヒーモスだったのなら、報酬は金貨100枚ほど出そう。そいつを倒したということも信じられないが、本当に運んできたのか?」


 容量空間ストレージというのは、使用できる人も少ないが、人によって最大容量が定められている。

 ただ、勇者と呼ばれる人物は、全員制限なしの容量空間ストレージ持ちらしい。


 なので、ベヒーモスを収納できるような容量空間ストレージ持ちは、それこそ勇者以外では存在しないとかなんとか。

 やっぱこいつ、悪魔じゃなくて勇者でいいんじゃない?


「本当かどうか、今見せてやるよ」

「見せるのはボクだけどね。ついでに倒したのもシキだよ」


 ちなみに俺は、交渉しただけです。

 もうこいつら二人だけでいいから、早く元の世界に帰してくれないかな。

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