推理
「見回りの兵が明日来るんですか、少し困りましたね」
先程宿屋夫婦から聞いたことをフィリスに伝えると腕を組んでうんうんと一人考え始めてしまった。
超常の存在が実在し魔物と言った脅威が傍にいるようなこの世界の人々だが、俺が創り出した似非神話生物に手も足も出せないことが証明されたので正直なところ何の心配もしていない。それに俺自身が規格外過ぎるということが更に拍車をかけている。
「旦那様、念のため今からでも町を出ますか?」
「もう夜も遅いし今日はこのまま寝ようよ。それにフィリスを野宿させたくないしね」
「野宿程度でしたら問題ないですよ!」
「じゃあ俺がゆっくり寝たいからってことでイイかな」
「兵士たちはどうするんですか?」
「コッチから手を出さなければ問題ないでしょ。と言うか派遣されてくる兵士たちが帰るまで宿に引き籠ってるのもイイかもしれないね」
「分かりました、そうしましょう。ところで旦那様教えて欲しいことがあるんですけども」
ニコリとほほ笑むその顔は絶対に嘘を許してくれない迫力があったのだが、俺の心は「どんな顔をしてもウチの嫁は可愛い」で埋め尽くされていた。何をされても賞賛の想いしか浮かばないのは何故なんだろうか?
「宿の旦那さんが遭遇した見たことがない魔物ですが旦那様が何かしたんでしょ?」
「・・・なんでそう思うの」
「魔物は動物が魔力を帯びて変化するのが一般的です」
「それなら人間が変化することだってありえるんじゃないの、人間だって動物には変わらないんだからさ?」
「七大神の加護により人間は護られている、と私は教えられています。王国の研究者たちも罪人を使って様々な実験を繰り返しおこなったらしいのですが結果は無残なモノだったと聞いています」
「加護を受けてなかった人たちだったのかもよ?教会とかで祝福されなかったとかさ。だから魔物化したのかも」
「残念ながらどんな出生のヒトでもこの世に産まれ落ちた瞬間、魔法陣が突如発生して加護が付与されるのです」
邪神に転生と転移の違いを聞いた時に言っていた「女神の加護」という言葉を今更思い出し納得する。そのような魔法を構築して人々を護っているのだろうか?
「そして今回この町付近に現れたムカデを模したヒト型の魔物ですが」
「うん、俺が創ったよ。材料は昨日罠を張って待ち伏せしてた傭兵崩れたちを使ってみました!」
「折角推理してるのにバラされてしまいました・・・ううぅぅ・・・続けますよ!こないだ創ったという蛙の魔物!なのでそんな不気味な魔物を創れるのは旦那様しかいないんですよ!」
半ばやけくそ気味に叫んで一応満足したらしいフィリスだがこちらを見て心配するように言って来た。
「規格外な力を持つものは世間から羨望の眼差しで見られることもありますが、疎まれ畏れられ貶められることが多くあるそうです。旦那様、例えそうなったとしても私は最後までお傍に」
フィリスの気持ちは正直言って嬉しい限りだ。だがここまで慕ってくれる理由が本当に分からない。確かに大火傷を治したの事実だし半ば無理矢理復讐に手を貸すと言ったのも俺のほうからだ。
(どうしてフィリスはここまで?)
嫁への尽きない疑問で頭が埋め尽くされそうになる。が恐らくそんなことを考えても仕様がないので一旦棚上げして嬉しいことを言ってくれたフィリスを精一杯抱きしめ温もりを味わいながら眠りにつこうと思う。




