会議
七大聖天教会の総本山を知るものは極一部の司教と大司教と法皇だけである。まことしやかに流れる噂話では7000m級の山々の何処か、地中奥深くにあるやら、または雲の上に存在するなどと言われている。
総本山の大司教以上が入れる会議室に二ラスは足を運んでいた。時折会う者たちからは尊敬と畏怖の視線を感じ取れるが気にしもしない。
会議室に着き勢いよく扉を開ける。
「おや?もう集まってたんですか?」
「アムルセフィト遅かったじゃないか、ついにその身体の限界が来たかな?」
初老の男が豊かに蓄えた白い髭に手を伸ばしながらギラギラとした視線と言葉を二ラスへと送るが当の本人は歯牙にも掛けていない様子。
「二ラスゥ!!アナタが召集をかけたのだから誰よりも早く此処にいるべきだぞぉ!!」
金切り声をあげながら指を差してくるのは眼鏡をかけた痩せ細った若い男。左手の人差し指は忙しなく太ももをトントンと独特なリズムを弾いていた。
「おい爺さんさっさと要件だけ話せ、オレぁは忙しいんだ」
煙管で煙を蒸す厳つい中年男は機嫌が悪いようで元より深かった眉間の皺が更に深くなっていた。
「遅れて申し訳ありません。来ていない3人はどうしたんですか?」
二ラスはそんな視線を物ともせず心にもない謝罪を述べてから見当たらない者の所在を問いつつ、目の前にあった書類に目を通していた。
「デブは慰問、クソガキは昼寝、ビチグソは託宣待ちだ」
煙管男は罵るように各自の所在を伝えてた。だが二ラスの表情は憐れんだ視線を孕んでいた。
「シアン、いい加減言葉遣いを直したらどうですか?主神ファンマはいつでも我らを見ているのですよ」
「俺が仕えてるのはグリゴラス神だ、履き違えんな若作りの糞爺が!」
「どこで育て方を間違えたんでしょうね。小さい頃はシキョサマシキョサマと駆け寄って来てくれたのに」
「記憶の捏造は止めろ!ツァンク黙って座れ口とケツを縫い合わすぞ」
金切り声の男ことツァンクは渋々着席したが視線は二ラスと煙管男ことシアンを行ったり来たりしていた。
「ツァンクといいゼッシュといい頭がイかれてるぜ、野郎の何が良いんだか」
「失敬な私はツァンクと違って二ラスの身体に興味があるだけですよ。決して男色家ではないので誤解無きように」
初老の男ゼッシュは朗らかに訂正するもシアンは再度煙管を蒸して聞く素振りすら見せないでいる。
「おい糞爺、託宣にない来訪者のことだが紙切れに書いてあった内容以外に何かねーのか」
「そうですね、背格好と言いますか雰囲気がまず違いますね」
「あ?人型だったんだろ?まさか蛙顔の怪物のが正体って言いてぇのか?」
「そうであったとしたら私の直属を回して3日とせずに排除させてみせますよ。今までの来訪者は美男美女が大半でした。稀に標準以下の容姿を持つ者もいましたけどね」
思わず苦笑を漏らす二ラス。
来訪者は美しいか醜いか両極端だった。大抵は美男美女が現れるのだが極々稀にどうして生まれて来たんだ?と問いたくなるモノが来ることもあった。そういったモノの方が逞しく図太く狡猾にこちらの世界に順応して行くので何とも言えなかったのだが。
「んで何が言いてぇんだ?」
「ヒトの皮を被ってるように見えました」
「オメェと同類じゃねぇか糞爺」
「私は主神ファンマの加護を受け未来永劫尽くすことを誓いこの身に祝福を頂いたまでですよ」
「オレから見りゃ十分化物だよ」
「話を戻しますが、正直先程言ったことも司教たちの目を通して受けた印象です。私が直接見れば分かるやも知れませんけどね」
「一つ、よろしいかな二ラス?」
「なんですかゼッシュ」
「来訪者はフィリス王女を連れていたと言うのは間違いないかな?」
「フィリス王女だと言ったのはレント城塞伯です。それに私はフィリス王女の姿は火傷を負った痛々しい姿しか見たことがないのです。アナタに請われ王女に治療魔法をかけに行ったのが初見でしたし健康体の姿顔立ちを私には知るすべはありませんので」
「そうか、分かった」
ゼッシュは見るからに気落ちした様相だったが誰も声をかけることはしない。重度の少女性愛者である男にかける言葉など何もないと言わんばかりに。
「私からも聞きたいことがあります!」
「なんですかツァンク?」
「来訪者の容姿風貌を細かく教えて頂戴!」
「・・・今から私が見たモノを観せてあげますから、大人しくマスでもかいてなさい」
「なんで?!」
「それでは先の戦闘………いや屠殺場と化したモノをお見せしますね」
そう言うと二ラスは懐から小さな立方体を取り出し魔力を流し込む。すると立方体から魔力が拡散し二ラスが司教たちの目を通して見たモノが映し出されたいた。
「コレが今回の来訪者ですね、横にいるのがフィリス王女だと思われます。ゼッシュ、ツァンク、鼻息荒くしないで下さい。シアンは魔力を抑えなさい」
とてもではないが部下たちに見せられる状態ではないなと思う二ラスであった。




