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秘石

『司祭様方の趣味に合えば良いのですが、ごゆるりと堪能して下さい』


そう言うと男は瞬時に消えてしまった。


(逃げたか、ん、なんだこの臭いは!?」


悪臭が何処からともなく沸き立ち思わず吐き気すら催してくるほどに酷い。鼻だけに止まらず目も痛くなって来た。なかには吐いてしまった者もいるようだが警戒を怠ることは出来ない。


そう思った瞬間地面が揺れ始め地割れが起きてあっという間に陥没穴が出来てしてしまった。そこからより一層臭気が立ち込めて何人かは気を失ってしまったらしくガシャンと鎧がぶつかる音が聞こえた。


「ジョージ!精神向上魔法を!更に保護魔法を重ねがけだ!」


部隊長からの指示は的確だった。頭が命令を受諾し勝手に呪文を詠唱し始める。こればっかりは日頃の訓練に感謝したい。


「分隊長!来訪者の姿は確認出来ますか!」


「出来ない!私には瞬時に消えたとしか思えなかった!消えた直後から酷い臭いが立ち込め始めた、ミール!探知魔法はどうした!!」


分隊長の怒号が響くと他の隊も多少持ち直したらしく周囲の警戒を強めた。


「分隊長、大穴に何か蠢くものが!」


探知魔法を担当しているミールが声を荒げた。彼は支部の中でも1・2を争うほどの物知りで本部への推薦もあるほどの腕利きだ。なのにミールは【何か】と言った。物知りなミールが知らない【何か】、少なくとも今まで見たことないモノが大穴にいるのは確かなようだ。


「各分隊長へ伝達!大穴へ魔法で集中攻撃を開始する!各自聖天武石、装填を開始せよ!」


聖天武石


武装司祭兵団が所持することを許された神敵を討ち滅ぼす事が出来ると言われる秘石。

分隊長以上が所持を許され怨敵が現れた際に使用が認められる。

使用者の魔力の殆どを吸い出し必殺必中の聖撃を神敵に与える。


「各自衝撃に備えろ!!!」


分隊長の叫びと同時に短刀に埋め込まれた秘石に魔力が充填されて行く。そして頭上には光の槍が生成され眩い光を放っていた。光が強くなるにつれて分隊長の顔色は見る見る内に土気色になっていき立ってるのもギリギリに見える。


「聖檄放てぇえええぇえぇ!!!」


司教の号令と共に光の槍が大穴へと吸い込まれて行った。そして先程とは比べようにもない揺れと衝撃が襲ってくる。


はずだったんだ。

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