思惑
私ジョージ・ジョアは困惑している。
今回の任務に関してではなく発言者に対してだ。何かと組むことが多かった鈍臭いが気の良い少年司祭ニコラスが大司教だったとは思いもしなかったのだ。
「おいジョージいつまで呆けてるんだ。お前がしっかりしてくれなきゃウチの補助は誰がやるってんだよ!」
分隊長を始め他の面子からの指摘もあって頭を切り替えようとする。
「どうせお前が考えてるのはニコラス…….二ラス大司教猊下のことなんだろ?そりゃ皆驚いたさ。ま、上の人たちは何人か知ってましたって顔してたけどな」
ニコラスでいる時、極力近寄らなかった司教がいるのは知っていた。恐らく正体を知っていたのだろう。
【二ラス=リクセト=アムルセフィトはバケモノだ】
七大聖天教会で皆が一度は聞いたことがある噂話だ
【生まれる前から神に忠誠を誓った聖人】
【見た目は年若い少年だが中身は齢数百の老獪】
【執務室から出ないのは膨大な魔力を抑えているため】
【異端者が出ると我先に尋問をし始める】
【拷問を開始すると三日三晩続けるが死者は出さない】
恐らく聞いたことがないだけで他にも色々な噂話があるはずだ。私も勿論聞いたことがあるが気にもしなかったのだ。何せ相手は大司教、私は司祭で雲の上の人物がどんなものでも私の信仰は揺るがないと考えてるいたのだから。
(そう、考えていたはずなんだ)
二ラス大司教猊下が立ち去る際に見せた表情が今でも瞼に焼き付いているのは何故なんだ?分からない、私は一体どうしたんだ?
「来訪者らしき人物がこちらに向かって来ています!距離は」
頭を切り替えなくてはならない。
あの時見せた顔は一体なんだったのか?
それを聞かなくては私は前に進めない。
まずは来訪者を捕らえてからだ。
この任務が終わったら二ラス大司教……いやニコラスに直接話を聞いてみよう。
「ジョージ!身体強化、物理障壁、精神障壁をかけろ!」
分隊長から命令が飛んで来た。
皆の補助をするのが私の職務だ!
『我らが同志を凡ゆる責め苦から護り給え、我らが同志に絶大なる加護を与え給え!』
魔法は滞りなく発動し分隊全体に降り注いだ。
「来訪者を包囲せよ!側にいる少女は可能な限り無傷で保護しろ!敵対行動を取ったとしたら治癒魔法が出来る範囲内に抑えろ!」
前進、前進、前進。
一歩また一歩と対象に向かって着実に距離を狭めて行く。
これと言って異常はなく、来訪者から何か仕掛けられた節もなければ魔導反応もない。
「告げる!汝は我らが神が招来せずして来た異世界人か!?」
二ラス大司教の正体を知っていたであろう司教が声を荒げ問いかけているが反応は返って来ない。
「告げる!そこにいる少女はアイゼンドラフト王国の王女で間違いないか!?」
少し距離があるため表情までは分からないがしゃがんで少女に耳打ちしているようだ。
「我らは七大聖天教会から派兵された武装司祭兵団である!速やかに投降すれば血を見ずに済む!」
来訪者らしき男が片手で少女を抱きかかえる
「王女の身柄をこちらに渡せ!そうすれば待遇は保証しよう!」
瞬間少女は消えた
そして来訪者の声が遠くにいるはずの私にもハッキリと聞こえた
『初めまして皆さん、カエルはお好きかな?』




