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理由

嫁フィリスの購買意欲は驚くほどになかった。

仮にも一国の王女殿下だからこんな一般庶民が来そうな場所では買う気がしないのかなと思い直接聞いてみたところ


「そもそも私は王族と言っても王位継承権から一番遠く尚且つ派閥すらもなかったので日々の暮らしは静かで質素なモノでした。今に思えば教会にいた頃と大した差がないとすら思えます。年に1度の兄弟姉妹総出の食事会くらいでしか豪華な食事は食べれませんでしたし、なので食に関しては食べられれば良いかと。ドレスは持っていましたが度々城外に出ていたので汚れても問題ない服装のほうが多かったんですよね」


聞けば聞くほど王女様と言うよりも普通の女の子の印象が強かった。

そして決め手に「旦那様から頂けるものでしたら私は拒みませんよ?」と言ってくれた。この娘、めっちゃイイ娘じゃん?!


確かにフィリスを助けたのは俺だがここまで好かれるほどの理由が分からない。洗脳とか心を弄ったとか魂を汚したとかそんなことは断じてしていないはずだ。


「ねぇフィリス、なんでそこまで慕ってくれるのかな?確かに全てを捧げるとは聞いたけど、ここまで好かれる理由が本当に分からないんだ」


きょとんとした顔でコチラを見上げるフィリス


「それに言ったでしょ?俺は一応邪神みたいな人間なんだよ?邪悪の権化かもしれない相手を普通好いたりしないでしょ?」


「旦那様、ちゃんと聞いてて下さいね?」


そう言って頬を少し膨らませながらこう言って来た


「私は全身に火傷を負って女としての生涯は完全に終わったのだと思ってました。私を形成する何もかもが焼け爛れ見るも無残で人々からは憐みの目で見られながら死ぬまで過ごすものと覚悟していたのです。そんな私を、生き地獄から救ってくれた旦那様を、どうして嫌いになれましょうか。その時に決めたのです、例えこの方がどんなヒトであろうと私の命ある限り尽くそうと」


恐怖で粗相をしてしまいましたけどね!と言って舌を出しクルっと反転してしまったが耳が真っ赤になっている。


「そっか」


あまりにも酷い返事しか出ない己が恨めしい。彼女は己の内を明かしてくれた、それなのに言葉が出てこない。

そんな俺を見かねてか、こう投げかけて来た。


「旦那様からしたら気紛れで助けた小娘かもしれません。ですが私にとっては奇跡以外の何者でもないのです、せめてそれだけは知っておいて下さいね」


「わかったよ、フィリス」


「分かってくれたのなら旦那様がいた世界の事を聞かせてくださいな!私も私の知る限りのことをお伝えしますので!」


「あぁ、買い物も終わったし歩きながらでも話していこうか」


「はい!」


返事と一緒に腕を組もうとしてきたが身長差で出来ないことを思い出し涙目になるフィリス。

仕方ないので手を差し出し、所謂【恋人繋ぎ】をして城塞都市アベルクラインを後にするのだった。


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