二人と二人6
先輩の教室がある階まで全力疾走。
途中先生に何度か「走るなー」って怒られたけど、わたしは振り返らずに走った。
廊下を歩く上級生の視線が痛い。
でも、でも、先輩に会わなくちゃ!
会って話さないと!!
私はその気持ちだけを胸に、先輩を探した。
「す、すいません…」
でもやっぱり、先輩の教室に行くのはちょっと怖くて。
恐る恐る教室をのぞくけど、見渡す限り先輩はいなかった。
「どうしたの?」
教室から一人の黒髪の綺麗な女の人が私の前に現れた。
「えっと……藤井先輩…いますか?」
「あぁ、あなた藤井と付き合ってるんだっけ?」
「えっあっえっと…」
なんで知ってるんだろう。
「そんな不思議そうな顔しないでよ。私元藤井ファンクラブの書記やってた園井夏子よ」
あっ…だから知ってるの…?
「まぁ藤井ファンクラブ関係者じゃなくてもあなたたちが付き合ってることみんな知ってると思うわよ」
「え?」
「藤井毎日あなたとのノロケ話をみんなに聞かせてるの。うざいったらありゃしないけど」
えぇえええ!!先輩が!!?
「でも、今日はあなたの名前、一言も出なかったわね…その様子だと、喧嘩でもしたのかしら?」
「いえ、私が悪くって…先輩は悪くなくって」
「ふふふっ……あなたとっても面白い子ね。…この子なら綾女も……」
「はい?」
夏子先輩は遠くを見つめながらなぜか懐かしそうな顔をしていた。
「藤井探してるんだっけ?」
「はい!」
「藤井なら、きっとあの場所にいると思うわ」
「あの場所?」
「あなたたち二人の思い出の場所よ」
そう言って先輩はニコっと笑った。
思い出の…場所?
思い出…
先輩と二人の……。
あっ…白いベンチ!!
「わかりました!!ありがとうございます!」
あれ?でも夏子先輩何で知ってるんだろう。
あそこは私とユカと先輩ぐらいしか知らない場所なのに。
「あ、安心して、私は藤井のファンじゃなくてお金のファンなの。ファンクラブ解散寸前まで、藤井で荒稼ぎさせてもらったわ。ありがとね陽依ちゃん」
夏子先輩は、もう一度笑って、教室に入って行った。
どういうことだろう。
まぁいっか。
わぁあ。
もうあと10分しか昼休み残ってないよ。
……急がなきゃ。
走って階段を駆け降りて、校舎裏に向かう。
こんなに走ったの告白の時以来かも。
白いベンチ。
ぜぇぜぇと乱れる息を深呼吸で必死に止めて、ベンチに近づく私。
先輩はそこにいた。
とても気持ちがよさそうに眠ってる。
日向ぼっこしててそのまま寝ちゃったみたい。
一人でベンチを占領している先輩のそばに一歩ずつ近づいた。
「……先輩?」
小さな声で声をかけてみるけど、反応なし。
起しちゃうのかわいそう……。
私は先輩の近くに座ると、まじまじと先輩の顔を見つめた。
久しぶりかも。
先輩の顔、こんな真正面から見たの。
最近は、ドキドキしすぎて先輩の顔直視できなかったから。
「……まつ毛ながい」
そっと、ほっぺたに触れてみる。
起きるかなぁと思ったけど、まったく起きる気配がない。
午後の授業サボっちゃうつもりかな。先輩。
あっ、そうだ。先輩が起きる前に、予行練習しよう!
我ながらいい考え!!
先輩の寝顔相手ならきっと、うまくしゃべれるかもしれない。
はぁ~っと息を吐くと、私は気持ちを話し始めた。
「この前、私、なんで帰っちゃったか。先輩わかりますか?……やきもちです。すっごくくだらないことかもしれないですけど、私先輩があのお姉さんズに笑顔向けてたり、お話ししてたりするのすごく嫌だったんです。先輩は私にだけ優しくって、私にだけ笑顔を向けてさえすればいいって、とっても嫌な感情が私の中でぐるぐるしちゃって……爆発しちゃいました。私、怒ったりするの苦手で…だからうまく…えっと…えっと…私、先輩のことが大好きなんです。…やきもち焼いちゃうくらい。先輩と一緒にいるのがとても…幸せで、えっと…えっと…先輩のことが好きで…あれ?私先輩が好きしか言ってないような…伝えるって難しいなぁ…うーん。これからも先輩とずっと一緒にいたいです、だから私のこと嫌いにならな…」
「嫌いになるわけない!!」
えっ……。
先輩…!?
先輩は上半身を起こすや否や、私の手をグイっとつかんで強く引っ張った。
体は自然と先輩の胸に着地して、抱きしめられる体勢になる。
頬がぐっと熱くなる。
「先輩…い…いつから起きて…」
「ごめん…最初から起きてた」
「…そんな!!は…恥ずかしいぃ」
予行練習だったのに…聞かれてたなんて。
穴があったら入りたい。
というか、今も相当恥ずかしい体勢だけど。
心臓の音、絶対先輩に聞こえてるよぉ。
「ごめんな。陽依、俺…陽依にいっぱい不安な気持ちにさせてしもうてた。ほんまごめん」
先輩。
「俺、陽依のこと大好きや、ほかの女なんか全く眼中にないし、みんなかぼちゃに見えるし!これホンマやから…。俺が一番好きなんは陽依やから」
「せっ…先輩…それ以上言われると…溶けちゃいそうです」
「さっき、陽依が俺に話しかけてたとき、俺が溶けるかと思たわ」
お互いさまのようです。
「あの…先輩そろそろ昼休み終わっちゃいます…あのっ…おろしてください」
「嫌や」
「えぇっ」
先輩は私を抱きしめる腕に力を込めた。
「全然陽依不足。もっと陽依と居たい」
「……私も………先輩と一緒に居たいです」
女の子は素直が一番。
だよね?お母さん、ユカ。
「……………陽依」
「はっはい」
「キスしてええか?」
「…は……い」
好きです。
先輩。
大好きです。
きっとこの気持ちはずっと変わらない。
だって、藤井先輩があってこその私だもん。
藤井先輩の私なんだもん。
二人と二人編完結です(*´ω`)長く更新できず申し訳ありませんでした。




