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藤井先輩と私。  作者: 寿音
番外編:二人と二人
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二人と二人4~sideユカ~

あんなに泣いたのって、昨日がはじめてだったかもしれない。

誰かを思って泣いたのって、好きで好きでたまらなくって泣いたのってはじめてだったかもしれない。

どうしても、許せなかった。

私のこと見てくれている瞳で、他の子見ちゃいやだって。

そんな気持ち嫉妬だって分かってる。

子供みたいにだだこねているんだって分かってる。

でもね、気づいてほしかったの。

私のこと。私の考えていること。私が思ってること。

気づいてほしかったの。

いつもいつも、私、貴光を怒ってばっかりで、素直にならなきゃって思っててもうまくできなくて。

でもそれを温かく受け入れてくれる大きな貴光。

私があなたをすごくすごく好きなこと、どうやったら伝わる?

どう言えば、貴光に届く?

貴光は優しいから、きっと私が別れたいって言ったら分かれてくれるよね。

きっと、すぐこの手を離してくれる。

ケーキ屋さんであんな風に突然、走って逃げちゃったら、貴光…もう私のこと見てくれないかもしれない。

貴光は優しいから、別れたくても別れたいなんて言えない。

……貴光は…きっと。

じわりと熱いものが目に込み上げてきた。

視界が涙でゆがむ前に、目をこすってふき取ると、私は教室の扉に手をかける。

扉を開けると、

「あれ?」

貴光がいると思っていた教室には誰もいなくって、拍子抜け。

「たか…みつ」

いなかったことに、内心ホッとして、名前を呟いた。


ふわっ


ぎゅっ


え?

「僕……別れたくないです」

背後からというか、耳元から貴光の声。

っていうか!!私、後ろから抱きしめられてる?!

ちょっと…えっと…あの…。

「僕、柚果のこと離したくない」

「柚果が僕のこと嫌いになっても、僕はずっと好きだから…」

「好きだから、別れるとか…むり」

私の言いたかったこと、すべて吹っ飛んだ。

なによもう。

私は貴光の抱きしめている手をそっと触る。

あっ……震えてる。

「貴光?」

私は振り向こうと体を後ろに向けようとする。

「だっ…だめ」

強い力で前を向かされてしまった。

「なんで?」

「だめ…だから」

理由になってない。

こうなったら、意地でも振り向いてやる。

ぐぬっと勢いよく振り向こうとするけれど、やっぱり貴光は押しとどめた。

…往生際が悪いわね。

そうだ!右手を後ろに回して、貴光の脇腹をこちょこちょっとくすぐる。

「うわぁあっ」

今だ!ばっと振り向くと、貴光はすぐに顔を隠した。

「なんで隠すの?」

「恥ずかしいから」

「……うん。わかった。じゃあこのまま聞いて?」

顔を手で覆ったまま貴光はうなずく。

…なんだろう、可愛いんだけど。


ふぅっと私は深呼吸をして、話し始めた。

「ケーキ屋さんで、突然走って帰っちゃったのってなんでか分かる?」

「……あのお姉さんたちが原因?」

「…分かってんじゃん」

貴光のことだから、私が焼きもち妬いてること気づいてないと思ってた。

「貴光…笑ってるから、楽しそうに話してるから…嫉妬しちゃった。ごめんなさい」

「え…?そん…だけ?」

「そんだけって何よ。……大人げないとは分かってるけど」

「心配しなくても、僕は柚果が一番好きだよ!」

あーっもう!!なんでそうスラスラと言えるかなぁ…。

私が言ってほしいこと全部、言ってくれた。

絶対、貴光は言ってくれないって思ってたけど、ちゃんと分かっててくれた。

疑ってごめんね?


って、貴光…顔…。

さっきの言葉言うとき、とっさに顔から手離したんだ。

……貴光の目……腫れてる。

「もしかして、その目隠すために?」

「……男が目腫らしてんのかっこわるい…し」

「ふふふっ」

「何笑って…」

私は両手で貴光のほっぺたを包んだ。

「貴光、私の目、見て?」

「ユカ…目…どうしたの?」

「貴光のせいだよ。…一緒だよ。私も」

貴光は私の目元を撫でると、優しく微笑んだ。

「貴光の本音聞けてよかった。…………大好き」

大好きだよ。貴光。

別れてなんてあげないもんね。


私は目を閉じて、貴光の優しいキスを受け止めた。


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