兄妹の二人 2
翌日。
あれからあたしは、坂上渉に「帰る!」と叫び来た道を急いで戻った。
「明日学校でな」
後ろから、そんな声が聞こえてきたけれど、無視。
学校でも会うたら無視、無視や、絶対無視!
早足で帰ると、キャリーの荷物はそのままに、すぐにベッドに寝転がってそのまま眠りについた。
「はぁ…学校行かな…」
リビングからおいしそうなにおいがする。
「杏奈、ご飯できてるぞ」
オトン帰ってきてたんや。
今日は仕事ないんかな。
「おはよう。オトン」
「おはよう。杏奈」
テーブルを見ると、焦げ気味の目玉焼きとベーコン、トーストが並んでいる。
「オトン。また焦がしたん?」
慣れんことするから。
「焦げ気味の方がおいしいんだよ」
まぁ、生よりはいいけどね。それから他愛もない会話をしながら、朝食を済ませた。
「ほな、行ってくるわ」
「忘れ物ないかい?」
「ないってば」
玄関で靴をはいて、玄関にある姿見で制服をチェック。
「あぁ、そうだ。今週末は俺も休みだから、久しぶりに悠太のところに遊びに行くか」
「えっ?」
「なんだ?行きたくないのか?」
行きたくないって言うか、願ってもない提案やし。
「行く!!行く行く絶対行く」
それから、私は鼻歌を歌いながらスキップで学校へと出発した。
学校。
自分のクラスの前で止まる。
…変に緊張するのはなぜだろう。
廊下の窓から教室の中を確認してみると、まだヤツは来ていなかった。
「…よかった」
「何が良かったんですか?藤井さん」
ひっ。耳元にフッと息を吹きかけられて、あたしは思わず尻もちをつく。
「大丈夫ですか?はい、掴まって」
そう言って、そいつはあたしに手を差し伸べた。
昨日、坂上渉の本性を知ってしまったせいで、こいつの笑顔が本当に似非もんに見える。
「ほら、立たないと汚れちゃいますよ」
ぐぬっ。
あたしは、差し伸べられた手を握って立ちあがった。
「改めまして、おはようございます。藤井さん」
不敵な笑みを浮かべる男、坂上渉。
いったいどういうつもりやねん。
「おっおはよ…」
あたしがあいさつすると、坂上はスタスタと自分の席へ歩いて行った。
…ふぅ。ていうか、なんであたしがこんなにビクビクせなあかんねん。
堂々としとけばええねん。
あたしも席つこー。
カバンをどさっと机に置いて座る。HR始まるまでひと眠りしよう。
「杏奈杏奈杏奈杏奈!!」
机に伏せた瞬間、甲高い声があたしの耳をつんざいた。
「なんなん?そんな慌てて」
「聞きたいのはこっち!杏奈どないしたんよ!普通に坂上君と話してたやん!!」
この“!”マークを語尾に全部付けて、朝からテンションMAXな子は、あたしの友達リサ。
ショートボブの髪の毛をふさふさ揺らしながら、机をどんどんと叩きあたしに質問攻めを繰り返す。
「坂上君女嫌いやってんで、それが杏奈と話よるんやもん!ウチびっくりして死ぬかと思ったわ!」
それだけで死んだら大変や。
あかん、気力なくてまともにツッコむ気にもなれん。
「ほんで、坂上君ウチらが挨拶しても全くノーコメントのクールボーイやん。それなのに坂上君自ら杏奈に挨拶してたやろ~!!なんでなんでなんでー!」
マシンガン質問。
リサに言われて思い出したけど、猫かぶりの坂上は、モテモテ男子やったっけ。
まぁうちのお兄ちゃんの足元にも及ばないけどね。
「ねぇ答えてよ!!ウチ気になって今日の夜眠れんかもしらん!」
「昨日、夜会ったんよ」
「えっ!?夜!!!まさか…二人って」
「変な誤解せんで。ただばったり会っただけ」
「何話したら、そんなに仲良くなったん!??」
リサはどこぞの芸能リポーターか。
「何話したらって…」
あたしは、ふと坂上の方へ目を向ける。
するとバチっと坂上と目が合ってしまった。
ん?よく見ると、口をパクパク動かしている。
なになに?
お・れ・の・こ・と…ば・ら・し・た・ら
そう言って坂上は前を向いた。
え?どいういうこと?
俺のことバラしたら……って何!?
怖い!バラしたらあたしどうなんの。
「ちゃんと答えて!杏奈」
ちゃんと最後まで言って坂上!!
俺のことバラしたら…その先をなんでアイツ言わへんねん。
怖いわ。怖すぎる。
「……会って挨拶したぐらいやって」
「ほんまに?」
「うん!」
「そっかぁ、ええなぁ杏奈は」
「そうかな?坂上ってそんなにかっこいい?」
あたしにはただのもやしっ子にしか見えへんけど。
「何言ってんねん!この学校で杏奈だけやで、坂上君んのことそんな風に思うんは。ジャ○ーズ顔やん!それにそれに」
それから、朝のHRが始まるまで知りたくもない“坂上かっこいい話”に付き合わされた。
…坂上ってあたしが思ってる以上にモテてるっぽいな。
それから何事もなく一日は過ぎて、放課後になった。
あたしは特に部活にも入ってないので、帰る準備をする。
クラスの子はほとんど部活に入っていて、すぐに部室や体育館へ走っていく。
「杏奈、ウチ部活行ってくるわ!また明日な!」
リサはあたしにてを振って、体育館へ走って行った。
リサたしかバレー部やなー、青春してんなー。
あかんあかん、なんかババくさい。
あたしも何か部活はいればよかった。
「よし、帰ろ」
あたしはカバンに教科書を詰め終えると、教室を出た。
今日はオトン仕事夜からってメール来てたから、晩ご飯コンビニで買って帰ろう。
自分で作ることもあるけど、今日はなんとなく作るのが面倒くさかった。




