4~side ユカ~
「やーっと行ったか」
これで一つ肩の荷が下りるわ。
お互いの気持ちを知ってて黙ってる私の身にもなりなさいよね。
「橋宮さんちゃんと言えるかな」
貴光は心配そうに窓の外を眺めている。
「ここからじゃ、見えないでしょ」
「うん。あ、松田さんはどこいったんだい?」
「トイレ」
貴光は顔を赤くして「そ、そう」となぜか照れていた。
たかがトイレで顔を赤くして…純粋すぎるわよ。
まぁそこが可愛いんだけど!!!
でもま、これで一安心。
この教室に藤井と陽依が照れ笑い浮かべて入ってくるのを待つのみ。
まさか、陽依一人で泣きながら帰ってくるなんて考えてない。
二人は両想いなんだから。
そんなのありえないもの。
夕陽が教室を照らして眩しい。
陽依のこだから、告白に時間がかかるにきまってるし、長期戦か。
宿題でもやっておこうかしら。
自分の席に着こうと、窓際から教室の中央へと移動する。
と、そのとき。
「たたたたた…たたたた!!」
血相を変えたジュディ嬢が教室に飛び込んできた。
「そんなにあわててどうしたのよ」
「たたたた!!」
「『たたたた?』ってなに?」
「とりあえず落ち着いて松田さん」
貴光が深呼吸だよ、とジュディの背中をさすった。
私はジュディが落ち着くまで待つ。
「っはぁ…はぁ……ふぅ…」
やっとジュディが落ち着いたところで、
「でどしたの?」
「ユウタがいたノヨ!蛇みたいに歩いてトイレのまえで携帯持って悩んでたノデス!」
ったく…あいつは。
本当に世話が焼ける。
「この階のトイレ、掃除中で使えなかったノヨ。だから二階のトイレ使おうとしたらユウタがいたのネ!」
「藤井先輩一体なにしてるんだろ…ってユカ?」
私の体は怒りで震えていた。
「本当にあのバカはなにしてるのかしらね!」
だいたいは想像がつく。
あんのヘタレが…。
いっぺん締めなきゃダメみたいね。
「ジュディ、藤井アホ太は二階にいたのね」
「あ…アホ太?」
私はジュディの返事も聞かずに二階のトイレへと走った。
二階へ上がると、先輩たちはすでに帰宅したようで人気がなかった。
うん。人いたら暴れられないからね。好都合だわ。
廊下をすすむと……いた。
携帯を持って眉間にしわを寄せてトイレの前を行ったり来たりしながら歩いてるアホ太を発見。
私が近づいても気づかないなんて…どんだけなのよ。
「おい、コラ藤井」
もう、私にこんな乱暴な言葉つかわせるなんて。
キャラじゃないんだからね!
元々はおしとやかなお姉さんキャラなのに。
ん?今「あれ?そうだったっけ?」って思った奴正直に出ておいで、怒んないから。
「あっ!ユカ…」
「呼び捨てにするな」
「ユカさん」
「よろしい」
私は腰に手をあてて藤井をギッと睨み上げた。
先輩を呼び捨てにして、自分にさん付けさせる。
本当は逆なんだろうけど、この人に対しては全く尊敬の念を抱いてはないからそれでいい。
「藤井、あんた何してんの?ここで」
「えっと…その…あの…」
「しゃきっとしろ!」
「はいぃ!」
勢いよくきをつけをするから、思わず吹き出しそうになった。
「校舎裏いかないの?」
藤井はなんでそれを知ってるのかって顔してる。
「陽依待ってるわよ。行きなさいよ」
「俺…ついにフラれるのかって思って…逃げようか逃げまいか悩んでる」
意気消沈して、しゃがみこむ藤井。
はぁ…。
陽依も藤井も二人そろって激鈍なんだから。
「告白もしてないのに、フラれるの?」
「あれだけアピールしたんや、いくら陽依でも気づくやろ。それにこの前名前呼ぶな言われたし…」
うじうじぐじぐじ悩んで、ほんとにこいつにはアレがついてんのか疑問に思う。
「陽依はあんたが思ってるよりも鈍感よ。あんたは言葉でちゃんとスキって伝えたの?はっきり、しっかり、陽依が分かるように言ったことあるの!?」
たしか最初の告白も「俺、君のこと嫌いちゃうから」って…遠まわしすぎるのよね。
「態度でも仕草でも伝わらないなら、あんたは言葉で伝えたのか!」
藤井は何か気付いたようにハッとなって、すくっと立ち上がる。
「男だろうが!さっさと行って来い!」
私はそう言って、藤井の背中をドーンと叩いてやった。
藤井はやっと分かったみたいで背中をさすりながらも
「ありがとうユカ、俺行ってくる!」
校舎裏に走っていった。
藤井悠太、しっかりな。
陽依の隣はあんたが似合うよ。




