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部屋に戻ると、カバンを膝の上に置いてベットに腰かけた。
「携帯携帯っと…」
ごそごそとカバンをあさり、教科書たちに埋もれた携帯を救出する。
「ふぅ…」
取り出した携帯を見つめて無意識にため息がもれた。
「しっかりしなくちゃ」
明日、私は藤井先輩に気持ちを伝えるんだから。
お母さんたちの話をきいて、やっと決心がついた。
フラれるって分かってるけど、でも伝えたい。
好きだって…先輩に。
アドレス帳から先輩の名前をさがす。
≪藤井 悠太≫
あった。
メール送るだけなのに、もう心臓がうるさくなってる。
こんなんで明日告白できるかな。
ううん。だいじょうぶ。ちゃんと言える。頑張るもん。
『陽依です。お話したいことがあるので明日の放課後、校舎裏の白いベンチ
のところで待ってます。』
…こんな感じでいいかな。
私は携帯を拝みながら、送信ボタンを押した。
先輩きてくれるかな。
来てくれるって信じよう。
それにユカ言ってたもん。フラれたら、また頑張ればいいって。
一回フラれたぐらいで、諦めるぐらいの気持ちじゃないし。
≪送信しました≫
でも不安だよ。
前向きに前向きにって考えるようにしてるけど…でもでも緊張するし…。
ユカ、ジュディ、梶瀬くん、楠木さん、杏奈ちゃん、パパさん…私に勇気をください!
よし、今日は早めに寝よう。
キーンコーンカーンコー…
「陽依、放課後よ!がんばれ!」
えっ!?もう放課後!??
ぼーっとしてたからかな、一日が過ぎるのが早かった。
自分の席から立ち上がって、周りを見渡すと私とユカ以外誰もいなかった。
相変わらずみんな帰るの早いってば。
「ユカついてきてくれないの?」
「告白くらい一人でいけるでしょ?私はこれから貴光とデートなの」
ユカも相変わらず薄情者!
ユカの時はちゃんとついててあげたのにぃ。
「早くいかなきゃ、先輩待ちくたびれちゃうわよ」
時計を見ると、4時半を過ぎている。
急がなくちゃ、先輩、帰っちゃう!
「ユカ、行ってくるね!」
「うん、がんばりな」
私は勢いよく教室を飛び出した。
「あわてるとコケるわよ!」
後ろからユカの声が聞こえる。
この歳でコケるわけないじゃん。
ユカったら、私を一体いくつだと思ってんのよ。
ふにゅっ…え?何か踏んだ?
そう思いながら私の体はどんどん傾いていく。
え?
うそ…。
ツルッ…ステーーーンッ!
古典的にコケました。
誰よ!こんなとこにあからさまにバナナの皮捨てたの!
ていうか学校にバナナ持ってきちゃだめでしょ!
購買でも売ってないのに。
立ちあがろうと、壁に手を置くと
べちょ。
「ええぇ~!!」
手にべっとりと青いペンキが。
なんでぇ!?
私の手が触れた壁だけ青くペンキで塗られてる。
そのわきには【塗りたて注意】。
なんでここだけ壁を青くするのよ!
手についたペンキを拭こうと、布でぬぐう。
よし、綺麗に落ちた。
走りだそうと立ち上がる。
ん?私拭くものなんて持ってたっけ。
足元を見ると、スカートがまだらに青くなっている。
もしかして…私…自分のスカートで手を…!???
ありえない!!ありえない!!
廊下の時計を見ると、時計の針はどんどん進んで私を追い詰める。
スカートの汚れ落としてたら、先輩待ちくたびれて帰っちゃうよね。
もういいや!
このくらいの汚れ気にならないもん!
私はそのまま急いで白いベンチのところまで向かった。
やっと校舎を抜けて、白いベンチがある校舎裏にきた。
先輩はまだ来てない。
よかった。
私が先だったみたい。
ゆっくりと、白いベンチに近づいていく。
「ふぅー」
私は大きく深呼吸をした。
座って待っていよう。
腰かけると、やっぱり座り心地が最高で、顔が自然と笑顔になる。
ミシミシ。
「なんか変な音する…」
ミシミシ。
気のせいじゃない。
バキバキバキーーーッ!
私の視界がぐるんと回った。
え?なに?顔の両サイドに雑草が見える。
パニックになりながらも、一生懸命立ちあがると、もっとパニックなるような現実に直面した。
ベンチ真っ二つになってるー!
私の座っていた場所からちょうど半分に割れてる。
それも綺麗に。
白いベンチが…白いベ…ベン…
うそうそうそうそ!嘘でしょ。
これは…本当に、冗談じゃないよ。
私そんなに体重重くないよ。
最近ちょっとお菓子食べすぎてるけど…そんなベンチが真っ二つに割れるほど!
直すにも、道具とかないし…技術がない私が直しても余計変になるだけだよ。
先輩が作ったベンチ…こ…こわしちゃった!
「陽依?」
「ふ…藤井先輩」
本当に泣きたいときって、涙は出てこないみたい。
「………先輩えっと…これはですね…」
先輩の顔が怒りの色に染まっていく。
こんな先輩の顔見たことない…。
「俺様をこんなごっつ寒いところに呼び出しといて…なんやその態度は」
せ、先輩?
「服は汚れとるし…俺様が作ったベンチは半分に割れとるし…なんやねん!何がしたいねん」
「先輩…」
「お前なんか大嫌いだ!今後一切俺様に近づくな!分かったか!」
「はぃ…」
完璧に嫌われた。
告白する前に、玉砕。
もう、頑張る気力さえ奪われた気がする。
先輩の背中はどんどん遠くなってくし…。
私は、地面に座り込んだ。
今日の私ついてなさすぎだよ。
バナナ踏んでコケるわ、スカート汚すわ、ベンチ破壊するわ…。
もうさんざん。
「もう…やだ」
「やだじゃないの!早く起きなさい!遅刻するわよ!陽依」
あれれ、おかしいな、お母さんの声がする。
とりあえず瞼を開けてみると、そこは学校じゃなくて…。
「早く起きなさい!今何時だと思ってるの!」
「ここ…家?」
「寝ぼけてないで早く準備なさい!」
ってことは…さっきのあれは…夢!?
よかった…夢で。




