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藤井先輩と私。  作者: 寿音
XV:夕陽の私と夕陽の先輩。
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部屋に戻ると、カバンを膝の上に置いてベットに腰かけた。

「携帯携帯っと…」

ごそごそとカバンをあさり、教科書たちに埋もれた携帯を救出する。

「ふぅ…」

取り出した携帯を見つめて無意識にため息がもれた。

「しっかりしなくちゃ」

明日、私は藤井先輩に気持ちを伝えるんだから。

お母さんたちの話をきいて、やっと決心がついた。

フラれるって分かってるけど、でも伝えたい。

好きだって…先輩に。

アドレス帳から先輩の名前をさがす。

≪藤井 悠太≫

あった。

メール送るだけなのに、もう心臓がうるさくなってる。

こんなんで明日告白できるかな。

ううん。だいじょうぶ。ちゃんと言える。頑張るもん。

『陽依です。お話したいことがあるので明日の放課後、校舎裏の白いベンチ

のところで待ってます。』

…こんな感じでいいかな。

私は携帯を拝みながら、送信ボタンを押した。

先輩きてくれるかな。

来てくれるって信じよう。

それにユカ言ってたもん。フラれたら、また頑張ればいいって。

一回フラれたぐらいで、諦めるぐらいの気持ちじゃないし。

≪送信しました≫

でも不安だよ。

前向きに前向きにって考えるようにしてるけど…でもでも緊張するし…。

ユカ、ジュディ、梶瀬くん、楠木さん、杏奈ちゃん、パパさん…私に勇気をください!

よし、今日は早めに寝よう。


キーンコーンカーンコー…

「陽依、放課後よ!がんばれ!」

えっ!?もう放課後!??

ぼーっとしてたからかな、一日が過ぎるのが早かった。

自分の席から立ち上がって、周りを見渡すと私とユカ以外誰もいなかった。

相変わらずみんな帰るの早いってば。

「ユカついてきてくれないの?」

「告白くらい一人でいけるでしょ?私はこれから貴光とデートなの」

ユカも相変わらず薄情者!

ユカの時はちゃんとついててあげたのにぃ。

「早くいかなきゃ、先輩待ちくたびれちゃうわよ」

時計を見ると、4時半を過ぎている。

急がなくちゃ、先輩、帰っちゃう!

「ユカ、行ってくるね!」

「うん、がんばりな」

私は勢いよく教室を飛び出した。

「あわてるとコケるわよ!」

後ろからユカの声が聞こえる。

この歳でコケるわけないじゃん。

ユカったら、私を一体いくつだと思ってんのよ。

ふにゅっ…え?何か踏んだ?

そう思いながら私の体はどんどん傾いていく。

え?

うそ…。

ツルッ…ステーーーンッ!

古典的にコケました。

誰よ!こんなとこにあからさまにバナナの皮捨てたの!

ていうか学校にバナナ持ってきちゃだめでしょ!

購買でも売ってないのに。

立ちあがろうと、壁に手を置くと

べちょ。

「ええぇ~!!」

手にべっとりと青いペンキが。

なんでぇ!?

私の手が触れた壁だけ青くペンキで塗られてる。

そのわきには【塗りたて注意】。

なんでここだけ壁を青くするのよ!

手についたペンキを拭こうと、布でぬぐう。

よし、綺麗に落ちた。

走りだそうと立ち上がる。

ん?私拭くものなんて持ってたっけ。

足元を見ると、スカートがまだらに青くなっている。

もしかして…私…自分のスカートで手を…!???

ありえない!!ありえない!!

廊下の時計を見ると、時計の針はどんどん進んで私を追い詰める。

スカートの汚れ落としてたら、先輩待ちくたびれて帰っちゃうよね。

もういいや!

このくらいの汚れ気にならないもん!

私はそのまま急いで白いベンチのところまで向かった。

やっと校舎を抜けて、白いベンチがある校舎裏にきた。

先輩はまだ来てない。

よかった。

私が先だったみたい。

ゆっくりと、白いベンチに近づいていく。

「ふぅー」

私は大きく深呼吸をした。

座って待っていよう。

腰かけると、やっぱり座り心地が最高で、顔が自然と笑顔になる。

ミシミシ。

「なんか変な音する…」

ミシミシ。

気のせいじゃない。

バキバキバキーーーッ!

私の視界がぐるんと回った。

え?なに?顔の両サイドに雑草が見える。

パニックになりながらも、一生懸命立ちあがると、もっとパニックなるような現実に直面した。

ベンチ真っ二つになってるー!

私の座っていた場所からちょうど半分に割れてる。

それも綺麗に。

白いベンチが…白いベ…ベン…

うそうそうそうそ!嘘でしょ。

これは…本当に、冗談じゃないよ。

私そんなに体重重くないよ。

最近ちょっとお菓子食べすぎてるけど…そんなベンチが真っ二つに割れるほど!

直すにも、道具とかないし…技術がない私が直しても余計変になるだけだよ。

先輩が作ったベンチ…こ…こわしちゃった!

「陽依?」

「ふ…藤井先輩」

本当に泣きたいときって、涙は出てこないみたい。

「………先輩えっと…これはですね…」

先輩の顔が怒りの色に染まっていく。

こんな先輩の顔見たことない…。

「俺様をこんなごっつ寒いところに呼び出しといて…なんやその態度は」


せ、先輩?

「服は汚れとるし…俺様が作ったベンチは半分に割れとるし…なんやねん!何がしたいねん」

「先輩…」

「お前なんか大嫌いだ!今後一切俺様に近づくな!分かったか!」

「はぃ…」

完璧に嫌われた。

告白する前に、玉砕。

もう、頑張る気力さえ奪われた気がする。

先輩の背中はどんどん遠くなってくし…。

私は、地面に座り込んだ。

今日の私ついてなさすぎだよ。

バナナ踏んでコケるわ、スカート汚すわ、ベンチ破壊するわ…。

もうさんざん。

「もう…やだ」


「やだじゃないの!早く起きなさい!遅刻するわよ!陽依」

あれれ、おかしいな、お母さんの声がする。

とりあえず瞼を開けてみると、そこは学校じゃなくて…。

「早く起きなさい!今何時だと思ってるの!」

「ここ…家?」

「寝ぼけてないで早く準備なさい!」

ってことは…さっきのあれは…夢!?

よかった…夢で。


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