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藤井先輩と私。  作者: 寿音
Ⅸ:妹とパパさん。
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「こら!陽依!いつまで寝てるの!?夏休みだからってだらだらしてると豚になっちゃうわよ」

只今11時。夏休みは朝寝坊バンザイです。

ベットに寝転がって、昔買った漫画を読み返しているところに、うるさい掃除機を抱えたお母さんが部屋に入ってきた。

「いいじゃん!夏休みなんだから」

「夏休みじゃなくても陽依はだらだらしてるんだから、夏休みぐらいしゃきっとしなさい」

そう言いながら、掃除機をかけるお母さん。

「いつまで私が掃除機かけなくちゃいけないのかしら。洗濯物ここに置いとくから、ちゃんと箪笥にいれときなさいね」

お母さんは、一通り掃除をし終えると、部屋から出て行った。

「……そろそろ起きようかな」

夏休み初日。

あ、今日は、毎月購入してる雑誌の発売日だった。

その雑誌には、おいしい洋菓子店がたくさん載っていて、見てるだけでもおなかいっぱいになる。

「買いにいかなくちゃね」

私は、すぐに着替えて準備し、財布を持って玄関に向かった。

どうせ暇だし、駅の中にあるでっかい本屋までいこうかな。

玄関をあけると、青空が広がっていて、雲ひとつなくコンクリートからの照り返しの熱が肌に伝わって、蒸すように暑かった。

「あちゃー日焼け止め塗るの忘れた…ま、いっか」

影の方を歩いてれば大丈夫だよね。とか言って、去年もそれで日焼けして痛い思いしたのを私は覚えてる。でもね、無駄に動きたくはない。少しでも汗をかく量を抑えたかった。

そうして鼻歌を歌いながら歩いていると、いつの間にか駅についていた。

駆け足で中に入り、空調の利いた室内でふぅっと息を吐く。

涼しい、天国。

駅の中のお店の通りを歩いて、本屋を目指す。

途中、ドーナツ屋やパン屋があって匂いに誘われ、思わず入ってしまいそうになったけれど、我慢した。

本屋は駅構内の奥にあり、この街では一番の規模を誇る。

誰が買うのだろうかと思うようなマニアックな本があったり、マンガとかの品ぞろえも豊富だったりする。

やっと本屋の看板が見えた。

ん?なんだろうあの人。

本屋の真ん前でうろちょろ動いている真っ黒のスーツをピシッと着ている、結構男前のダンディなジェントルマンがいた。

挙動不審。

もしかして、ダンディを手法とした新手の変質者?

入り口の所でうろうろしてるから、入りづらい。

本屋の店員さんも、入り口の方を見て険しい顔をしている。

早く注意して下さいよ。店員さん。

早く本買って家でのんびり、これからの休日の計画立てようとしてるのに。

祈るような視線で、そのダンディなジェントルマンを見つめていたら。

バチッっと目があった。うそぉぉぉぉおおん。目がばっちりあってしまった。

一歩、二歩と後ずさりする私。

一歩、二歩とこちらに近づくダンディなジェントルマン。

こっち来ないでぇ。後ろを振り向いて逃げようとした瞬間。

肩を掴まれた。

本当に怖いときって、人って叫び声とか出せないらしい。

喉の奥に声が詰まって、助けを求めることすらできなかった。

「ちょっと、キミ」

なんだかどこかで聞いたことのあるような声。

でも、私こんなジェントルマン知らない。

「怯えさせてしまってすまない。聞きたいことがあるんだが」

ジェントルマン(変質者?)から出たジェントルマンらしい丁寧な言葉に、びっくりしてしまった。



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