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「こら!陽依!いつまで寝てるの!?夏休みだからってだらだらしてると豚になっちゃうわよ」
只今11時。夏休みは朝寝坊バンザイです。
ベットに寝転がって、昔買った漫画を読み返しているところに、うるさい掃除機を抱えたお母さんが部屋に入ってきた。
「いいじゃん!夏休みなんだから」
「夏休みじゃなくても陽依はだらだらしてるんだから、夏休みぐらいしゃきっとしなさい」
そう言いながら、掃除機をかけるお母さん。
「いつまで私が掃除機かけなくちゃいけないのかしら。洗濯物ここに置いとくから、ちゃんと箪笥にいれときなさいね」
お母さんは、一通り掃除をし終えると、部屋から出て行った。
「……そろそろ起きようかな」
夏休み初日。
あ、今日は、毎月購入してる雑誌の発売日だった。
その雑誌には、おいしい洋菓子店がたくさん載っていて、見てるだけでもおなかいっぱいになる。
「買いにいかなくちゃね」
私は、すぐに着替えて準備し、財布を持って玄関に向かった。
どうせ暇だし、駅の中にあるでっかい本屋までいこうかな。
玄関をあけると、青空が広がっていて、雲ひとつなくコンクリートからの照り返しの熱が肌に伝わって、蒸すように暑かった。
「あちゃー日焼け止め塗るの忘れた…ま、いっか」
影の方を歩いてれば大丈夫だよね。とか言って、去年もそれで日焼けして痛い思いしたのを私は覚えてる。でもね、無駄に動きたくはない。少しでも汗をかく量を抑えたかった。
そうして鼻歌を歌いながら歩いていると、いつの間にか駅についていた。
駆け足で中に入り、空調の利いた室内でふぅっと息を吐く。
涼しい、天国。
駅の中のお店の通りを歩いて、本屋を目指す。
途中、ドーナツ屋やパン屋があって匂いに誘われ、思わず入ってしまいそうになったけれど、我慢した。
本屋は駅構内の奥にあり、この街では一番の規模を誇る。
誰が買うのだろうかと思うようなマニアックな本があったり、マンガとかの品ぞろえも豊富だったりする。
やっと本屋の看板が見えた。
ん?なんだろうあの人。
本屋の真ん前でうろちょろ動いている真っ黒のスーツをピシッと着ている、結構男前のダンディなジェントルマンがいた。
挙動不審。
もしかして、ダンディを手法とした新手の変質者?
入り口の所でうろうろしてるから、入りづらい。
本屋の店員さんも、入り口の方を見て険しい顔をしている。
早く注意して下さいよ。店員さん。
早く本買って家でのんびり、これからの休日の計画立てようとしてるのに。
祈るような視線で、そのダンディなジェントルマンを見つめていたら。
バチッっと目があった。うそぉぉぉぉおおん。目がばっちりあってしまった。
一歩、二歩と後ずさりする私。
一歩、二歩とこちらに近づくダンディなジェントルマン。
こっち来ないでぇ。後ろを振り向いて逃げようとした瞬間。
肩を掴まれた。
本当に怖いときって、人って叫び声とか出せないらしい。
喉の奥に声が詰まって、助けを求めることすらできなかった。
「ちょっと、キミ」
なんだかどこかで聞いたことのあるような声。
でも、私こんなジェントルマン知らない。
「怯えさせてしまってすまない。聞きたいことがあるんだが」
ジェントルマン(変質者?)から出たジェントルマンらしい丁寧な言葉に、びっくりしてしまった。




