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昼休み――
「とりゃっ!!」
「あっ陽依!私の弁当!!」
私は昼休みのチャイムとともに、ユカの席に走ると、ユカのカバンを取り上げて弁当を持って走った。
「返しなさい!!」
後ろから追いかけてくるユカ。
そのまま走って校舎裏のベンチへ行った。
「…っはぁ…はぁ…なんなのよ。弁当持って走って…」
「今日は、ここでご飯食べるの!」
「なんでここ?教室でいいでしょ?」
ユカは眉間にしわを寄せて、肩で息をしている。
校舎からここまで全力疾走したからそりゃ疲れる。
私もユカと同じく荒い息を整えながら話した。
「だって、知りたいんだもん!教室では小西君のこと話づらいでしょ?」
「バカっ!誰かに聞かれたらどうすんの!!」
ユカはすぐに顔を真っ赤にして周りをキョロキョロと見渡した。
「大丈夫だよ。ここ人来ないから。たぶん」
だって、知りたかったんだもん。
本当のことユカの口から直接聞きたかったんだもん。
「でもおなかすいたし、先にお弁当食べよ!ほらユカ座って!ここ気持ちいいんだよ」
「もう、わかったわよ」
白いベンチに座り、弁当を膝の上に乗せる。
「いただきまーす」
たまご焼きから一口たべる。
「んーおいしい~」
ユカは黙々とご飯を食べている。
私は口の中のたまご焼きがなくなったので、周りをキョロキョロと見回して、ユカに聞いた。
「ねぇ、ユカって小西くんのこと好きなの?」
その瞬間、ユカは飲んでいたお茶を「ぶはっ」と吹きこぼした。
「んもっ…ハンカチハンカチ…」
カバンからハンカチを出して、口を拭くユカ。
「教えてよー」
それから数分間、ユカの前でだだをこねたら、あまりのしつこさにユカも参ったのか、小さな声で、
「好きよ」
とつぶやいてくれましたー!ありがとう!ユカさま! 「好きよ」いただきましたー!
そっかそっかぁ。ユカが委員長のことを。うふふふ。なんだか顔が自然とニヤけます。
「ねぇ、どうして好きになったの?ねぇユカ教えて教えてよ!」
「もう!そんなに肩揺すらないで、弁当落ちる!」
「あっごめん」
それからユカは、「ご飯食べ終ったら正直に話すわよ」と恥ずかしそうに言って、私たちは終始無言で昼食をとった。
鳥のさえずりや、蝉の声、風の音、無言だけれど、いい気分。
そういえば、来週からだっけ?夏休み。
「ごちそうさまでした」
お弁当をカバンにしまうと、私は改めてユカに向き直し聞いてみた。
「どうして好きになったの?」
ユカはためらいがちに答える。
「一生懸命がんばってるじゃない?毎日」
それからユカは小西くんの好きなところをずっと語ってくれました。
「でね!毎日花壇の花に水あげてるの!あとあと、笑った顔がねとっても可愛くって、でも男の子に可愛いって言うのはなんか違う気がするし、でも恥ずかしくってカッコイイとも言えなくてさぁ。それでねそれでね」
「ちょーっとストーップ!!」
あまりのマシンガントークに、私はたまらずストップをかけました。
最初は、恥ずかしそうだったのに、カミングアウトしてスッキリしたのか、饒舌に小西くんのことを話しているユカ。
こんなに生き生きしているユカ初めて見たかも。
「あ、もうチャイム鳴るね。教室もどろっか?」
「う、うん」
教室に戻る途中、私はもう一つユカに聞いてみた。
「ユカはいつ、小西くんのことが好きだってきづいたの?」
好きって始まるのはいつからなんだろう。なんで好きってわかるんだろう。
好きって分かる理由とかあるのかな。
そういう疑問がずっと私の中でぐるぐる渦を巻いている。
前を歩くユカは、フッと立ち止まり、優しい笑顔で振り返った。
「そんなの分かんないわよ」
えっ?
そう言ってユカは、人差し指を私の額にあてて。つんとはねた。
「気づいたら好きになってるもんなのよ。恋って」
恋って始まりがあやふやなの。
終わりはハッキリ分かるのにね。
不思議でしょ?
ユカは前を向きながらそんなことを言って、教室に入って行った。
“気づいたらもう好き”
“恋”ってそういえば、そういうものなのかもしれない。
私、今まで恋人なんていたことなかったし、恋愛経験もない。
でも初恋なら、ずっと覚えてる。
そう、そうだ。いつのまにか、好きになっていた。
思い出すと、ユカの言葉、その通りだなって思える。




