騎士団の騎士 一 【王の責務、五】(2)
彼は後継者だ。
公爵の正当な息子。
この部屋にいることが当然の人物。
それに対して、私は……
ただ、そこにいるだけだった。
生存者。
ヒルベルトが再び口を開いた。
「もう一つございます。」
公爵はゆっくりと目を閉じた。
「そうか……」
ヒルベルトは二枚目の書類をテーブルの上に置いた。
そこには塔の印章が押されていた。銀色の円を黒い針が貫いている。
「今朝、使者が到着しました。塔より、ブリテン公爵領の代表者を貴族血統年次評価会へ出席させるよう要請が来ております。」
大臣たちの間にざわめきが広がった。
私はわずかに首を傾げた。
「年次評価?」
セバスチャンが私を見ずに答えた。
「貴族の家々が後継者とその才能を塔に披露するための集まりだ。それと同時に、保護契約やアーティファクトの契約、ダンジョンへの立ち入り権などについても交渉する。」
「ああ。」
つまり、虚栄心の祭典というわけか。
ヒルベルトが咳払いをした。
「今年の評価会は、ヴェイルの内都市で行われます。通常であれば、当然ながら若君セバスチャンが当家を代表することになります。」
「通常であれば?」
公爵が尋ねた。
ヒルベルトはほとんど間を置かなかった。
「通常であれば、我々が国境の警備を必要とし、財政が崩壊し、禁忌魔法の噂が領地中に広がっているなどという状況にはなっていないでしょう、公爵閣下。」
私は空気が変わったのを感じた。
ゆっくりと、いくつもの視線が私へ向けられる。
嫌な予感がした。
とても嫌な予感だ。
公爵は顎髭を撫でた。
「ヒルベルト……いったい何が言いたい?」
「若君セバスチャンを領地から離す余裕はありません。彼がここにいることは、士官たちを安心させ、軍事的な権威を維持するために必要です。」
セバスチャンが眉をひそめた。
「カエルを行かせるつもりか?」
その後に続いた沈黙が、どんな答えよりも雄弁だった。
私は瞬きをした。
そして、わざと驚いたような声を出した。
「俺?」
ヒルベルトはようやく、真正面から私を見た。
「あなたは公爵閣下の名を代表する立場にあります。たとえそれが……疑問の残る決定であったとしても。」
公爵が拳を握りしめた。
「ヒルベルト。」
大臣はわずかに頭を下げたが、その口調は変わらなかった。
「申し訳ございません、公爵閣下。私はただ現状を申し上げているだけです。若きカエル様は正式に閣下の庇護下にあります。公爵家の庇護対象として紹介すればよい。それだけで出席義務は果たせます。」
私は短く笑った。
「つまり、俺は飾りとして使われるわけか?」
「役に立つ飾りです。今回に限っては。」
セバスチャンが突然立ち上がった。
「ヒルベルト!」
しかし大臣は眉一つ動かさなかった。
「私は領地の利益を考えて発言しております。」
「まるでカエルを物のように扱っているな。」
ヒルベルトは即座に言い返した。
「あなたはまるで、我々に感情を優先する余裕があるかのように話しておられる。」
緊張がさらに一段階高まった。
他の大臣たちは、まるで椅子の中に消えてしまいたいかのように視線を伏せた。
公爵も立ち上がった。
「いい加減にしろ。」
声は大きくなかった。
それでも、その一言は瞬時に部屋全体を切り裂いた。
公爵は特別背が高いわけでもなく、声がよく通るわけでもない。
それでも、彼には否定しようのない威圧感があった。
私はテーブルから目を離さなかった。
皮膚の下で何かが動いているような感覚がした。
かすかな熱。
不快な。
そして、慣れ親しんだ感覚。
「息をして。」
私は従った。
一度。
二度。
熱が引いていく。
公爵は、私が耐えられないような表情で私を見つめた。
その目には罪悪感が満ちていた。
「カエル……無理強いはしない。」
嘘だ。
彼が嘘をつきたいわけではない。
だが、状況が彼にそうさせている。
領地には資金が必要だから。
塔が貴族たちの首を締め上げているから。
セバスチャンがここに残る必要があるから。
そして、私には失うものが何もないから。
私は椅子の背もたれに体を預けた。
「具体的には、俺は何をすればいい?」
公爵が答えるより先に、ヒルベルトが口を開いた。
「ヴェイルへ向かうこと。塔の査察官たちに敬意を示すこと。問題を起こさないこと。そして可能であれば、我がブリテン公爵領に与えられている商業保護の更新を取り付けることです。」
「つまり、笑って嘘をつけと。」
「あなたに笑うよう求める者はいないでしょう。」
今度ばかりは、セバスチャンも何も言えなかった。
「それで、俺が断ったら?」
ヒルベルトは両手を組んだ。
「その場合、若君セバスチャンを送るしかありません。東部の士官たちは、それを弱さの証と受け取るでしょう。ウルクは間違いなくそれにつけ込みます。商人たちは逃げ続けるでしょう。そして三か月以内に、おそらくそれより早く、我々は借金を返済するために辺境領の一部を売却せざるを得なくなります。」
公爵は目を閉じた。
その表情を見れば、ヒルベルトが嘘をついていないことは分かった。
嫌だった。
この部屋で最も忌々しい男が正しいという状況に、私は閉じ込められていた。
それが何よりも嫌だった。
「カエル、やらなくても――」
「俺が行く。」
レナの声が途切れた。
セバスチャンが私を見つめた。
「お前がやる必要はない。」
「分かってる。」
「じゃあ、どうして?」
私は肩をすくめた。
「兄さんのほうが、ここでは役に立つから。」
彼の表情が険しくなった。
公爵が私のところまで歩いてきて、両手を私の肩に置いた。
「カエル……」
私はわずかに視線を逸らした。
「礼なんて言わないでくれ。これは俺が借りを返しているだけだ。」
彼の指に力が入った。
「お前は借りなんかじゃない。」
私は答えなかった。
もし口を開けば、声が震えてしまうかもしれなかった。
そして私は、ヒルベルトの前で声を震わせるくらいなら、もう一度死んだほうがましだった。
大臣が書類を閉じた。
「それでは、出発は明朝でなければなりません。」
「明日?」
セバスチャンが尋ねた。
「印章によれば、最初の審査は四日後に始まります。ヴェイルまで、急いで移動して三日かかりますので。」
公爵は深く息を吸った。
「護衛を用意しろ。」
「少人数の護衛でお願いします。」
ヒルベルトが付け加えた。
「目立つことは避けるべきです。」
セバスチャンが肘掛けを拳で叩いた。
「街道で魔法による襲撃が起きているという話をしているのに、護衛を減らして彼を送り出すつもりか?」
「大規模な護衛は挑発と受け取られる可能性があります。あるいは、もっと悪く、我々が恐れていると見なされるでしょう。」
セバスチャンの表情が暗くなった。
彼が自分を抑えているのが分かった。
「少人数の護衛なら、棺桶を送り出しているようにしか見えない。」
公爵はヒルベルトへ振り向いた。
「領地を弱体化させずに、何人まで送れる?」
ヒルベルトは手元のメモを確認した。
「騎士四名。御者二名。見栄えのための使用人一名。それ以上は無理です。」
セバスチャンが鼻で笑った。
「素晴らしい。つまりカエルを、不安定な地域へ四人の騎士と一人の使用人だけで送り込むわけか。」
「俺は剣を使える。」
私が言った。
セバスチャンがこちらを向いた。
「魔術師相手でもか?」
私は答えられなかった。
正直に言えば、答えは否だったからだ。
その後もしばらく会議は続いたが、私はほとんど何も聞いていなかった。
大臣たちの声はただの雑音になっていた。
「税」
「国境」
「条約」
「輸送隊」
そんな言葉が空気の中を漂い、私の耳には入ってくるものの、本当の意味で頭には届かなかった。
私の意識は別のところにあった。
あの報告書。
内部から焼けた傷。
悪夢の中の炎。
灰の中で離れていった、レナの手。
ようやく会議が終わると、大臣たちは一人ずつラウンジを出ていった。
最後に出ていったのはヒルベルトだった。
私の横を通り過ぎる際、彼は足を止めた。
「一つ忠告しておきましょう、若君カエル。」
私は彼を見上げた。
彼はほとんど隠そうともせず、嫌悪を込めてその呼び方を強調した。
「ヴェイルでは、公爵閣下ほど寛容な貴族ばかりではありません。あなたの出生が忘れられることはないでしょう。」
私はかすかに笑った。
「それに備えるための道徳的な支援を、あなたに期待していたんだけどな。」
彼の表情がわずかに引きつった。
そして彼は立ち去った。
セバスチャンは扉が閉まるのを待ってから、ため息をついた。
「本当に、お前は事態を悪化させる才能があるな。」
「それは兄さんの得意分野だと思ってたけど。」
彼は数秒間、私を見つめた。
そして、意外にも少しだけ笑った。
「馬鹿。」
公爵は再び椅子に腰を沈めた。
突然、彼がひどく老けて見えた。
目の周りの皺は、いつもより深く見えた。
「すまない、カエル。」
私は首を横に振った。
「謝らなくていい。」
「お前を引き取ったのは、お前を守るためだった。狼の群れの中へ送り込むためじゃない。」
「狼は、叔父さんが俺を引き取る前からそこにいたよ。」
彼は答えなかった。
セバスチャンは窓へ向かって歩いていった。
朝の光が彼の金髪を滑るように照らし、まるで髪そのものが輝いているようだった。
「お前に同行する騎士は俺が選ぶ。」
「ヒルベルトが自分で手配するって言ってなかったか?」
「だからだ。」
私は思わず笑った。
私は立ち上がった。
「少し外の空気を吸ってくる。」
公爵はゆっくりとうなずいた。
「行ってこい。今夜、もう一度出発について話そう。」
私はそれ以上何も言わず、ラウンジを出た。
扉が背後で閉まった瞬間、足が重くなるのを感じた。
私は廊下の壁に寄りかかり、目を閉じた。
「カエル。」
「今はやめてくれ。」
「受け入れるのが早すぎるわ。」
「誰かがやらなきゃいけなかった。」
「それは理由になってない。」
「……」
「怖いの?」
私は歯を食いしばった。
当然、怖かった。
屋敷を離れることが。
人間の体が内側から焼けるような街道を旅することが。
「怖くない。」
「嘘が下手ね。」
「それに、お前は喋りすぎだ。」
私は再び廊下を歩き始めた。
階段のクリスタルが、あらゆる方向へ光を反射している。
その建築美は、ほんのわずかな衝撃で、すべてが簡単に砕け散ってしまうことを思い出させるようだった。
私は中庭へ降りた。
庭師たちはすでに仕事を始めていた。
グリフォンの形に刈り込まれた茂みが道の両側に並び、庭の中央では大理石の噴水が静かに歌っていた。
私は噴水の縁に腰を下ろした。
水面に自分の顔が映っている。
乱れた黒髪。
目の下に深く刻まれた隈。
青白すぎる肌。
まるで別人のもののような目。
「ねえ、明日に備えて少しくらい眠ったら?」
「また同じものを見るために眠れって?」
「今度は違うかもしれないわ。」
「いつも同じだ。」
風が木々の間を通り抜けた。
突然、目の前に光るウィンドウが現れた。
[メインクエストが更新されました。]
私はすぐに姿勢を正した。
[クエスト:ヴェイルへ向かえ。]
[目標:塔の年次評価が終わるまで生き残る。]
[報酬:封印された書庫への限定アクセス権。]
[失敗時のペナルティ:死。]
私は最後の一行を見つめた。
数秒間、身動きが取れなかった。
そしてゆっくりと手を上げ、ウィンドウをクリックした。
金属的なチャイムが響いた。
[クエストを受諾しますか?]
[はい。] [いいえ。]
私は動かなかった。
「死がペナルティなのに、なんで俺の意見を聞くんだ?」
「システムは救いようがないほどユーモアのセンスがないわね。」
「それ、面白くないぞ。」
「面白いとは言ってないわ。そういうセンスがあるって言ったの。」
私は二つの選択肢を見つめた。
指が「はい」の上で止まる。
封印された書庫。
そんな言葉を、私はこれまで一度も聞いたことがなかった。
それなのに、胸の奥に何かが反応した。
奇妙な圧迫感。
まるで、自分には存在しないはずの記憶が、閉ざされた扉を叩いたかのようだった。
「カエル、待って。」
「もう遅い。」
私はクリックした。
[クエストを受諾しました。]
[幸運を。]




