インキュバス 一 【観察者を追え、???】(10)
闇の熱が俺の感覚を一つずつ目覚めさせていった。
彼を感じることができた。
彼の気配が。
それは俺の周りを動いていた。
右へ、そして左へ、彼は俺の周りを回っていた。
おそらく俺の方向感覚を狂わせようとしているのだろう。
彼はまだ自分の囮が成功していると思っているに違いない。
相手に対する情報の優位を活かさなければならなかった。
今しかなかった。不意打ちは二度は通用しない。
突然、右耳に疼きを感じ、即座に腕を動かして彼の攻撃を防いだ。
剣の柄を握る手が強くなった。
刃の振動が伝わり、彼の攻撃をうまく止められたことが分かった。
金属のぶつかる音は聞こえなかった。
本当に丸腰なのか?
いや。
結論を急ぐな。
音を消す能力を持っている可能性も十分にある。
彼の口から漏れる驚きがほとんど聞こえるようだったが、俺は集中しすぎていた。
ゾーンに入っていた。
冷たい塊が背後で動くのを感じ、本能的に彼が武装していることを悟った。
地面に身を伏せ、砂埃を吸い込んだ。
彼の刃は空気を切り、俺のすぐ上を通り過ぎた。
肺に入った砂埃で咳き込みながら、横に転がって立ち上がった。
「どうやって——」
彼が動揺しているのを感じ取り、頭から彼の脚に突っ込み、手を使って軸を作り、彼を砂埃の地面に倒してから喉元に刃を突きつけた。
まるで第六感を持っているかのようだった。
彼の攻撃の一つ一つが来るのが見えた。
それらは水晶のように澄んで頭に届いた。
熱狂する群衆の叫びが耳に響いた。
彼らには、俺が空気と戦っているように見えていたに違いない。
俺は完全な暗闇の中で、あらゆる判断から自由になって戦っていた。
盲目の目の下で、世界は消え去っていた。
ゆっくりと目を開けると、審判が勝者を告げた。
群衆が俺の名前を唱えた。
おそらく今日初めて知ったであろう名前を。
観客席に戻ると、ドランが俺を捕まえて小脇に抱え、頭を激しく撫で回した。
「おいおい! こんな才能を隠してたのか、天才坊ちゃん」彼は俺を離した。「あの技、今度俺にも教えてくれよ……」
彼は目を閉じ、両腕を前に伸ばして、不器用に俺の真似をしながら歩き始めた。
彼は兵士の一人につまずき、皆を笑わせた。
俺も一緒に笑った。
「正直……自分でもどうやっているのか分からないんだ……」
ドランは痛む額をさすりながら体勢を直した。
「なおさらいい! 分からないものを教えてもらえるなんてな! ははははは!」
「それは難しいかも」
「はははははは!」
ドランの陽気な笑い声が俺を慰めた。
それだけで十分に力を取り戻せた。
他の兵士たちがまだ笑っている中、俺の視線は闘技場へと向かった。
次の試合がもう始まるようだった。
第二準決勝。
競技場の上に浮かぶ光る窓を見た。
***
準決勝
アイザック[ウルク]
対
エレナ[ヴァレリア]
***
アイザック。
ウルクの皇太子。
彼と最後に会ったときの感覚がまだ心に刻まれていた。
彼は若いにもかかわらず、冷たく計算高いように見えた。
兄弟姉妹の中で後継者になるために、多くの苦しみを味わってきたに違いない。
今日、誰も彼を限界まで追い込めていなかった。
若い男が闘技場に入るのを見た。
彼は以前会ったときと同じ、落ち着いた傲慢な表情を浮かべていた。
その向かいには、同じく準決勝まで勝ち上がった若い女が進み出た。
エレナ。
名前以外、彼女についてはほとんど何も知らなかった。
彼女はアイザックより背が低く、隣に並ぶと華奢にさえ見えた。
それでも、彼女が闘技場の中央で立ち止まったとき、その目つきの何かが、彼女が偶然ここまで来たわけではないことを悟らせた。
審判が手を上げた。
「始め!」
アイザックが消えた。
彼の体は、目で追うのがやっとの速さで前へと飛び出した。
エレナは横に踏み出した。
刃が彼女の顔の数センチを通過した。
彼女は即座に反撃した。
エーテルの細い刃が一瞬で彼女の手に形成された。
彼女はそれを攻撃者の方向へ投げた。
アイザックはそれをかわして斬りかかった。
エレナはもう一つの刃を召喚して受け止めた。
衝撃が彼女の全身を揺さぶったようだった。
彼女は後退した。
一歩。
二歩。
そして三歩。
アイザックは彼女に息をつく暇を与えなかった。
彼の攻撃は単純で直接的だった。
驚くほどに、恐ろしいほどに効果的だった。
まるで彼女は負ける運命にあるかのようだった。
すべての動きが事前に計算されているかのようだった。
エレナはついに空いている手を上げた。
無数の小さな光る円が彼女の周りに現れた。
アイザックは止まった。
トーナメントが始まって以来初めて、彼の表情がわずかに変わった。
エレナは微笑んだ。
「隠し玉を持っているのはあなただけじゃないわ」
円が光り、何十もの飛び道具が一斉に放たれた。
競技場は悲鳴に包まれた。
アイザックは最初の飛び道具をかわした。
そして二つ目。
そして三つ目。
しかし飛び道具は彼を追いかけていなかった。
それらは彼の周りの地面に次々と突き刺さっていた。
何度も何度も何度も。
俺は突然理解した。
「彼の動きを制限しているんだ……」
ドランが俺の方へ顔を向けた。
「何?」
俺は闘技場を指さした。
「彼女は彼に当てようとしているんじゃない。彼の移動手段を奪っているんだ」
ドランは数秒見てから目を輝かせた。
「おお……」
アイザックは確かに、ますます狭い空間に閉じ込められていた。
エレナは両手を上げ、残りの円すべてが彼に向かって収束した。
ドン!
巨大な爆発が闘技場に響き渡った。
煙が天井に向かって立ち上った。
観客が叫ぶ中、俺は息を止めた。
煙の中から人影が現れた。
アイザック。
制服は破れ、額からわずかに血が流れていたが、彼はまだ立っていた。
エレナは青ざめた。
アイザックは彼女に向かって傲慢な目を上げた。
「よく考えられていた」
それから彼は消えた。
一秒後、エレナは膝をついた。
審判はすでに彼女のそばにいた。
「勝利はウルクのアイザック!」
競技場は沸き上がった。
俺は沈黙したままだった。
アイザックは勝ったが、今度は彼も傷を負っていた。
より多くの力を使わざるを得なかった。
それは一つのことを意味していた。
俺にも彼を倒すことが可能だということだ。
数分後、光る窓が再び現れた。
***
決勝
カエル[ブリテン]
対
アイザック[ウルク]
***
俺はアイザックが闘技場を去るのを見ていた。
彼は俺の方向を見た。
目が合った。
彼は微笑んだ。
本物の笑みだった。
それが俺を安心させるためのものか、心配させるためのものかは分からなかった。
しかし心の奥底で……
俺は嬉しかった。
彼と戦いたかった。
叔父のためでもなく。
ブリテンのためでもなく。
何かを証明するためでもなく。
自分のために。
***
闘技場は静まり返っていた。
何万人もの人々が俺たちを見ていた。
俺は一方に立っていた。
アイザックはもう一方に。
審判が俺たちの間に立った。
「準備はいいか?」
剣の柄を握る指を強くした。
「はい」
アイザックは頷いた。
審判が手を上げた。
「始め!」
アイザックが突進し、俺も同じようにした。
刃と刃が金属音を立ててぶつかった。
ガキン!
衝撃が競技場全体に響いた。
俺はその衝突の勢いですぐに後方へ押し込まれた。
足が闘技場の石の上を滑った。
アイザックは息をつく暇を与えず、再び突進してきた。
一撃。
そして二撃。
そして三撃。
俺は受け流した。
何度も何度も。
彼のリズムについていくのに必死で、打ち合うたびに少しずつ後退していった。
彼はより速かった。
より正確だった。
より経験豊富だった。
俺に欠けている長年の訓練を、彼はおそらく兄弟たちとの競争に駆り立てられて、絶え間なく積んできたのだろう。
あるいは、これまでに何度も命を懸けた戦いを経験してきたのかもしれない。
肩に鋭い痛みが走るのを感じた。
彼の刃がかすめたのだった。
直接触れてはいなかったが、そこから放たれるエーテルは鋭く、致命的だった。
血が腕を伝い始めた。
群衆が叫んだ。
「アイザック! アイザック! アイザック!」
もう負けそうだ。応援しなくていい……
歯を食いしばった。
[スキル『君主の炎』(Lv.5)が発動されました。]




