インキュバス 一 【観察者を追え、???】(9)
スコアボードはすぐに再び変わり、俺の名前が三十代の男の隣に大きな文字で再表示された。
観客が俺たちの名前を叫ぶ中、俺は闘技場へ向かった。
アドレナリンが恐怖を上回り始めるのを感じた。
対戦相手の前に立つと、アドレナリンが高ぶる中でも一つの考えが頭をよぎった。
ここまでトーナメントを勝ち上がってきた以上、自分の戦闘の才能が他の参加者より劣っているとはもう言えなかった。
それは彼らに対して失礼だった。俺は自分に勝機があると信じなければならなかった。
そうでなければ自分自身を裏切ることになる。
「始め!」
審判の轟く声が耳に響いた。
アドレナリンの勢いに任せて、俺は即座に対戦相手に突進した。
剣が彼の胸に触れようとした瞬間、目の前の男は笑った。
作り笑いだった。
その視線に奇妙な疼きを感じ、俺の自信は一瞬で粉々になった。
剣は男の腹に触れたが、彼はまったく堪えていないようだった。
同時に、俺の腹に巨大な衝撃が叩き込まれ、一瞬で息が止まった。
俺はその衝撃の勢いで後方へ吹き飛ばされた。
腹を抱えて丸くなり、砂塵の雲を残しながら数メートル転がった。
腹がひどく痛んだ。その一撃はあまりにも強力で、もう一発でも受けたら痛みで意識を失うかもしれなかった。
剣を支えにしてゆっくりと立ち上がった。
一方、対戦相手は闘技場の中央に微動だにせず立っていた。
しかし、彼はもうさっきのようには笑っていなかった。
今度は、他人が苦しむのを見て快楽を得る歪んだ男の表情を浮かべていた。
立ち上がると、俺は再び彼に向かって突進した。
彼はそれでも反応しなかった。
彼がどんな技を使っているのか見極めなければならなかった。
攻撃を開始すると、最後の瞬間に方向を変え、全エーテルを脚に移し、彼の視界から消えた。
背後に現れ、全力で彼の背中を斬りつけた。
刃が当たったかに思えた瞬間、腰に激しい一撃を受け、横に吹き飛ばされた。
群衆が沸いた。
血を吐きながら立ち上がった。
どうやって彼はあんなに速く……
思考の流れは何か奇妙なものに遮られた。
何かがおかしかった。
男はまだ闘技場の中央に立っており、一歩も動いていなかった。
たとえ彼が信じられない速さで動いたとしても、土の上には足跡が残っているはずだった。それなのに、戦いの始めから彼はまったく同じ場所にいた。
素早く闘技場を見回した。
ワイヤーもなし。
罠もなし。
隠し武器もなし。
何もなかった。
そして……
瞳孔が収縮した。
あの攻撃。
彼に当たったと思ったたびに……
ゆっくりと自分の剣に目を落とした。
刃に血の跡は一片もなかった。
俺は一度も彼に触れていなかった。
かすりすらしていなかった。
心臓の鼓動がどんどん速くなった。
「ようやく考え始めたか」
彼の声は落ち着いていた。
「気絶するまで突進し続けるんじゃないかと心配したよ」
さらに残忍な笑みが彼の顔に浮かんだ。
「それが最初からの俺の計画だったんだがな」
俺は歯を食いしばった。
なぜ自分の戦略を明かすのか?
もし彼が俺に先に攻撃させなければ反撃できないなら、俺は彼が先に動くのを待てばいいだけだった。
いや。
闘技場の上の時計に視線を移した。
残り五十五分。
どの試合もそんなに長く続くはずはなかったが、それでも時間制限はあるようだった。もしそれまでにどちらも勝てなければ、両方負けになる。
ならばなぜ彼はそれを明かすのか?
考えられる説明は三つしかなかった。
一、彼は自分の戦略に絶対の自信があり、明かしてもまったく問題ない。
二、彼の戦略は、俺がそれを理解することで初めて機能する。
三、彼はサイコパスだ。
だが、それが分かっても、なぜ彼が俺に触れさせずに攻撃できるのかは理解できなかった。
視覚的な幻覚なら、彼の気配の不在を感じ取れたはずだった。それなのに、彼のエーテルの塊は闘技場の中央にはっきりと存在していた。
では、なぜ最初に彼を斬ったと確信したのか?
一瞬目を閉じた。
エーテルを地脈に流し、視覚を意図的に無視して他の感覚に集中した。
数秒後、目の前のエーテルの塊は奇妙に感じられた。
そっと波打つ自分の気配とは違い、彼のそれは完全に静止していた。
空間に凍りついたかのように。
生きていないかのように。
突然目を開けた。
男はまだ目の前に微動だにせず立っており、同じ病的な笑みを口元に浮かべていた。
「何か探しているのか?」
何かがおかしかった。
まるで……
突然、頭の中で何かが解き放たれたように、ある細部が目に留まった。
彼の影。
風でコートがわずかにはためいているのに、影は完全に静止していた。
彼の影は地面に直接描かれた黒い形のように見えた。
まるで……
その瞬間、閃きが頭を走った。
それ以上考えずに、全エーテルを脚に注ぎ込み、男に向かってではなく横に跳んだ。
まさにその瞬間、一瞬前に俺が立っていた場所を拳が空気を切り裂いた。
衝撃波が顔をかすめた。
即座に振り返り、襲撃者と向き合った。
背後には二人目の男が立っていた。
本物の男が。
彼の拳はまだ宙に突き出されたままだった。
彼はゆっくりと拳を握り、失敗した一撃の苦さを味わうようにした。
彼はまったく同じ顔をしていた。
同じ服。
細かいしわまで同じ。
ただ目だけが違った。
その目には、クローンの芝居がかった狂気はもうなかった。
彼の視線は冷たかった。
計算高かった。
息を整える暇も与えず、彼は消えた。
肋骨に鋭い痛みが爆発した。
次は肩。
三発目は膝の裏。
彼の動きは一瞬も見えなかった。
それぞれの衝撃が違う方向から来た。
歯を食いしばり、よろめくほどの一撃に耐えた。
考えろ!
最初の男が囮なら、なぜそれを使って一緒に戦わない?
戦闘中に、見分けられるほど長く彼らの目に集中することはできない。
いや。
ただの囮じゃない。
彼は俺にそれを見てほしかった。
俺の注意をすべてそれに集中させたかった。
その間に、本物の戦士がどんな角度からでも攻撃できる。
俺はゆっくりと剣を上げた。
それから、まったく理屈に反して、偽の男に完全に背を向けた。
観客席からすぐにささやきが広がった。
「気が狂ったのか……?」
「諦めるのか?」
俺の目は地面の砂塵だけを走査した。
本物の相手は気配を隠せる。
俺より速く動ける。
だが、足跡も……
……気配も消すことはできない。
俺は目を閉じ、闇に身を沈めた。




