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非リアから追放され、可愛い四姉妹とのドキドキハラハラな共同生活。ハーレムのようで、ざまあしかないんだけど  作者: ぴこたんすたー
第1章 自宅に女四人が揃ってもハーレムじゃない法則

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第5話 僕のドタバタな毎日は始まったばかりだ

 初夏の梅雨空が晴れ、桐生院筑紫ヶきりゅういんつくしがおか学園のチャイムが校内に鳴り響く。


「待ってたぜ。この至福の一時を」


「ただの昼休みのチャイムでしょ。いつもオーバーなんだって」


 教室内でやたらと陽気な賢司(けんじ)が、赤い折り畳み財布の中を確認し、今月は節約しないと……と、呟いている。

 もしかして今朝の朝食にお呼ばれしたのも、その節約術の影響かな?


「ちっちっ。節約で、けちってる場合じゃないぜ。志貴野(しきの)は全くもって理解してないな。この学園の購買パンは、よだれものの食材に溢れている!」


「何か表現が汚いんだけど」


「汚いとは何だ。神聖な食べ物に向かって!」


 それ神聖じゃなく、新鮮の間違えじゃないかな?

 それとも神により、賢司の人間性が試されてる?


「まあ、僕は弁当持参だから関係ないと」


「志貴野、お前ってヤツは‼」


「なっ、いきなり何さ?」


 賢司が目を血走らせ、肉食動物の本能か、こちらに襲ってかかる。

 普段は無害なイケメンも野生化したら、手に負えないよ。


「美少女四人姉妹とハーレム生活を送ってるだけじゃなく、愛妻弁当までも作ってもらってるとか、どんだけ幸運の持ち主なんだよ‼」


「いや、日本では一夫多妻は禁じられてるし、結婚もしてないから」


『それにこの弁当は、自分で作ったもの』と伝えても、賢司は頭を大きく抱えて『おお、聖なるマリアのお導きがー!』と、これまた意味不明な発言をする。


 ちなみに、後日知るのだけど、マリアとは賢司の母親のことらしい。

 名前もそっくりそのまま、麻里亜(まりあ)だとか。


「どうせ、あの姉妹たちといちゃつきながら作ったんだろ? ダーリン、ひじにご飯粒が付いてるわ。ピロリ菌とか」


「ピロリ菌だったら、お腹を壊すよ」


 ペロリじゃなかった件について、多少なりとも残念そうな顔をしている賢司。

 そんなに、おこぼれを食べて貰いたいのか? 

 ゲームでもないのに、たった一粒のために……。 


「まあ、ピロリは良いとして、志貴野に真面目な話があるんだが?」


「珍しいね。いつも冗談多めなのに」


 水分ではなく、体の90%はジョークの塊で出来ている、賢司からのまともな話。


「あのさ、お前の家に呼んでくれた春子(はるこ)って子さ、俺のバイト先で出会ったような気がするんだが、俺の勘違いか?」


「あっ、それね」


 ヤベエ、恐れていたことが、ついに現実になったよ。

 この場合、怒らせずに納得させる選択肢とは……頭の中の緊急対策マニュアルを呼び起こそうと、必死に情報を探る。


「そうそう。名前もほぼ同じなハルだったし」


「あー、他人の空似じゃないかな?」


 賢司がレジを担当してた時、春子は帽子を深く被っていたし、男の子という嘘で塗り固めたんだ。

 春子は中学生だし、この野郎の毒牙にかけたくない気持ちもあり、今さら、実は同一人物でしたー! という変更の余地もない。


「だったらいいけど、もう四人の誰かとデートはしたのか?」


「……いや、ないよ。僕が女性恐怖症のことは話したよね?」


「すまんな。おじいちゃんになってから、記憶が薄れてしまってな」


「まだ十代で、それはないって」


 高校生でボケだしたら、それも芸術だと目を光らせる者もいるけど、蓋を開ければ普通の高校生の会話だよね。


「とにかくだ。同じ屋根の下で暮らしてるんなら、彼女らを満足させるようなフラグも組まないと駄目だぜ。待たせるだけならガキでも出来る」


「だから恋人でもないって」


「……それには同感よね」


 つかつかと歩み寄る度に、銀色のサイドテールが涼しげな風鈴のように揺れる。

 今日もツンツンしてるし、明らかに不機嫌モード全開だ。


「どうして美冬(みふゆ)が、この教室に?」


「あのねえ、教室も何も、アンタが忘れ物したんで届けに来たんじゃない!」


「ごめん。ありがとう」


「じゃあ、アタシは友達と食事にするから。男二人で永遠に仲良くね」


「永遠にねえ……」


 何か危ない趣向へと勘違いされた美冬が手渡してきたタッパーの中には、10匹くらいのウサ耳リンゴが、綺麗に敷き詰められてた。

 なーる、忘れ物はウサギの墓標じゃなく、姉妹が作ってくれた食後のデザートか。

 アイツら、良いところもあるじゃん。


「今のは次女の美冬ちゃんか。一見ツンツンしてるけど、叩けばデレるタイプと見たぜ」


「叩けばホコリの誤りじゃ?」


 何それ、日頃ツンツン、好きな人の前では照れくさいというツンデレ、まさにギャルゲーの法則?

 これまた、ヤベエヤツ認定じゃん。


「美冬は、そんなツンツンした子じゃないよ。少し志貴野くんに対してのコミュ力に問題があるだけだよ」


「今度は秋星(あきほ)か。校内でも姉妹は大忙しだね」


「私はそうでもないよ。美冬、友達多いから、色々と相談に乗ってあげてるんだと思う」


 ああ見えて繊細な性格で、友達思いなんだね。

 僕に対しての口の聞き方は粗野だけど。


「じゃあさ、夏希(なつき)のお願いも聞いてよ」


「あっ、夏希も来たんだ。君たちは本当に仲が良いよね」


「まあね。階段を駆け上って、屋上に行きかけたけど」


 陸上部の体力トレーニングでもないのに、どんだけ筋肉バカなんだろう。

 疲れた素振りもなく、息も切らしてないし、このサイボーグみたいな青髪のお嬢さんは……。


(ところ)でさ、食後の運動にちょっと協力してよ。人手が足りなくて困っててさあ」


「ああ、僕で良かったら」


 決してお人好しな性格でもないが、目の前で困ってる妹を放っておくほど、僕は冷めた人間じゃない。


「じゃあさ、そこのレジャーシート敷いてる床に仰向けに寝てよ」


「了解。寝るだけなら」


 教室の隅に青のシートがあるのも謎だが、そこで寝てとか……。

 ヤベエ、これが女子にしてもらう、安眠耳かきごっこなのかー!! 


「あんがと」


「じゃあいくよ」


「いつでもカモン♪」


 ドキドキしながら、愛の侵入者を待ち続ける。

 もうちょっと耳を見せた方がいいか?

 書店で立ち読みした、何かの漫画雑誌には、チラ見せがいいとか載ってたよね。


「チェイスとおおおおー‼」


「おわがあああー!?」


 僕は夏希の鋭利ある攻撃、通称かかと落としを横に転がって避ける。


「ちょっと、避けたら練習台の意味ないじゃん」


「避けないとマジでヤベエだろー‼」


 どうして他の知り合いが、夏希の用事に付き合わなかったのか、こうやって体験して、初めて理解したような気がする。


「志貴野、お前姉妹にモテモテだな。これからもハーレム生活、満喫(まんきつ)しろよ」


「これのどこがハーレムなんだよ。ざまあしかないだろー‼」


 三重咲(みえさき)姉妹と同居して、一週間。

 僕のドタバタな毎日は始まったばかりだ……ヤベエ、もう色々あって、倒れそうだよ⋯⋯。

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